8話
「こ…ここは…」
そこは見知らぬ、天井だった。
「あら、起きたのね。体は大丈夫?」
すると、突然声をかけられる。
俺は、体を起こしながら、声のした方向をむいてみると、体が固まった。
「あら、本当に大丈夫?」
「は…はい。大丈夫です。」
「そう良かったわ。」
ぐ~~
すると、俺のお腹がなった。
「ふふ、ちょっと待ってて、ご飯持ってくるから。」
「す…すみません…」
彼女…エルフの女性は、部屋を出ていく。
俺は、周りを見渡す。
やっぱり、むこうでもこっちでもない知らない部屋だ。
とりあえず、俺は現状を確認するため、今までの事を振り替える。
俺の名は、司 晴明いや、今は子爵家のディーオか。あの時の、頭痛のせいか、前世の記憶が甦っていた。
そして、俺は弟に裏切られて、崖下に落ちたのだ。弟とは上手くやっていけてると思ったんだがな… それは、俺だけだったようだ…
それにしても、体の痛みが無くなっている。体を見てみるも、傷すらない。これが異世界の力か…
俺はとじている右目を開けてみる。
やっぱり、見えないか…
崖から落ちたときに、失明したのだろう。
「ご飯持ってきたわよ。」
エルフの女性が湯気のたっている食べ物を持ってきてくれる。
「熱いから、気を付けてね。」
「あ…ありがとうございます。」
手渡された皿の中身は、ある食材を全て鍋に入れて、煮込んだようなそんな皿だった。
一応、出してくれたので木のスプーンですくい、食べてみる。
「あれ、以外に美味しい…」
「そう、お口にあって良かったわ。」
お腹が空いていたので、あっという間に食べ終わった。
「本当に美味しかったです。えっと…」
「あぁ、私の名前は、リンダよ。」
「リンダさんですね。俺は、ディーオです。」
リンダさんに、今の名前を名乗っておく。
「ディーオ君ね。それで、貴方みたいな子供が血まみれで、あんなところに、倒れていた理由を聞いても良いかしら?」
俺は、今まであったことを伝える。
「そ…そう。大変だったわね。これから、どうするディーオ君。私はここにいてくれても、構わないけど…」
「ありがとうございます。出来れば、お願いしたいです。」
「分かったわ。それじゃあこれから宜しくね。先に言っておくけど、私はたまにいなくなるけど、気にしないでね過ごしてね。」
たまにいなくなる? まぁ、それはいいとして、
「はい、お願いします。そういえば、どうして、リンダさんはこんなところに住んでいるのですか? ここは深淵の中ですよね?」
「そ…それは…」
「それは?」
「お酒が好きだから…」
「? すみません、良く聞こえないのですが。」
「だーかーら、お酒が好きだからよ!!」
「!! お酒ですか…」
「そ…そうよ、悪い。」
少し顔が赤くなっている。
「いや、そう言うわけでは… それにしても、お酒ってこんなところにあるんですか?」
「えぇ、だからここ深淵にいるんです!! ここのダンジョンの中にはお酒の入った宝箱があるのよ。そのお酒が本当に美味しいの!!」
「そ…そうなんですか。」
「そうよ。 あ!! ちょっと待ってて。」
リンダさんは、慌てて部屋を出て言った。まさか、お酒でも取りに行ったのだろうか?
リンダさんはすぐ戻ってきた。日本で見たことのある酒瓶のようなものを持ってきて。あれが、たぶん宝箱から出るお酒なのだろう。
「これよこれ。これが本当に最高なの!!」
酒瓶を受けとる。受け取ったのはいいが、さすがに今はまだ、8歳なので、味を確かめる訳にもいかず、少し見た後、お返しする。
リンダさんは、受け取った酒瓶を隣に置き、ポケットから何かを取り出す。
「それで、お酒はついで、これを取りに行ってたの?」
リンダさんの手の上には、目玉が乗っていた。
「そ…それは?」
「これも、ダンジョンの宝箱に入っていたアイテムの鑑定眼よ。」
「鑑定眼? 何ですかそれ?」
名前の響き的に、鑑定が使える眼ってことかな?
「なんと、鑑定のスキルを使えるようになるアイテムです。」
「そ…そうですか。それで、それをどうするんですか?」
「とりあえず、これを右目に当ててみて。」
「? 右目ですか?」
俺は、鑑定眼を受け取り、言われた通り右目に当てる。
すると、失明した右目が熱を帯びてくる。
少しして、鑑定眼が俺の手から消えてしまっていた。
「目を開けてみて、ディーオ君。」
リンダさんの言うとおりに、俺は目を開けてみた。