7話
「くくく、あーはっはっはっは。」
俺はやった、ついにやってやったぞ。あの野郎を殺ってやった。
通信の道具を起動し、母さんに連絡する。
「母さん、手はず通り、あいつは崖下に落ちていったよ。」
「良くやったわ、イディオちゃん。もうそろそろ、調査隊が到着する筈だから、一緒に帰ってきなさい。」
「了解。」
通信を切り、俺はあいつが落ちていった崖を見て、調査隊と合流するため、森へ入っていく。
◇
目を開けると、木を見上げていた。
僕は、助かったのか…
「!!」
生を意識した瞬間、激痛が体を襲う。体を動かそうにも全然言うことを効かない。
すると、突然頭が割れそうな程の痛みを覚える。
なんだ、頭が割れそうだ。
すると、左側の茂みから、音が聞こえた。
朦朧とする意識の中で、左目のみ動かし見てみる。
すると、茂みから、体の大きなモンスターが現れた。
手には、僕よりも大きな木を握っている。
頭の痛みがひいていき、僕の意識はそこで途絶えた。
◇
「シャルル様、調査隊の皆様が帰ってきました。」
客間で待っていた私の元に、私の側仕えのメイド…メイがその知らせ持ってきてくれた。
「本当ですか!!」
私は、すぐに立ち上がり、玄関へむかった。
そこには、ボロボロの装備を纏っていたイディオ様とディーオ様の後を追っていった調査隊の皆様がいた。
「い…イディオ様、無事だったのですね…良かったです。それで、で…ディーオ様は…」
なぜか嫌な予感がして、私の声は震えていた。
「心配かけて、すみませんシャルルさん。兄さんは…」
「お…お怪我をされたのですか!!」
「いや、怪我ではなく…」
「な…なら何が…」
「兄さんは、僕をモンスターから庇って、崖下に落ちたんだ…」
「!!」
私は、その言葉の意味が一瞬分からなかった…
「で…ディーオ様が、落ちた… が…崖の下に…」
「はい…」
私は、瞳に涙をためながら、外にむかって走り出そうとすると、後ろから手を捕まれる。振りむくとそこには、メイがいた。
「手を離し下さい、メイ!!」
「なりません、シャルル様。」
「で…ディーオ様が… ディーオ様が待ってるんです!! 話して下さい!!」
「なりません、シャルル様。辛いようですが、シャルル様がむかっても何も変わりません。」
その言葉で私は、膝の力がぬけ声を殺し泣いた。
気づいたら、私は客間にいた。どうやら、メイに連れてこられたみたいだ。
「落ち着きましたか、シャルル様。」
「め…メイ… 先程はごめんなさい…」
「いえ、私の方も口が過ぎました。お許しください。」
「大丈夫です。メイは私の事を思って言ってくれたのですから… メイ… 私、今後どうしたらいいかな…」
「1度、お屋敷に戻るべきです。」
「!? ディーオ様を見捨てると言うことですか!!」
私は、立ち上がり声を荒げていた。
「違いますシャルル様。公爵様に報告してみてはと、言うことです。」
「お父様に…」
「はい。公爵様のお力をお借りするべきです。」
「お父様の知り合いの冒険者様に頼んでみると言うことですか?」
「はい。魔の森の最奥、深淵は、並の冒険者では、帰ってくることも出来ません。ですが、公爵様のお知り合いのS級の冒険者なら、探索も可能かと。」
「…分かりました。すぐに家に戻ります。メイ準備をお願いします。」
「分かりました。」
メイは準備をするため、客間を後にする。
待ってて下さい、ディーオ様。必ずあなたを探してみせます。