6話
僕は、イディオの事が心配で、調査隊を待たずに、魔の森へ入った。
「やっぱり、広いな…」
かなり奥まで入って来た。途中スライムや単体のゴブリンと戦闘し、それらを倒しながら、奥へと進んできた。複数体のゴブリンやオークとの遭遇時は、戦闘をせず即逃げ出したので、今のところ怪我もなくここまで進んでこれた。
イディオの事を声に出して呼びながら、進めばもう少し探しやすいのだが、ここで大声をあげるなら、モンスターを呼び出すだけなので、する訳にはいかない。
「イディオの奴、どれだけ奥に進んだのやら…」
僕は、更に警戒心を強めながら、もっと奥へ進んでいく。
少しして、森を抜けた。どうやら、深淵へと続く周りの崖の上は、木ははえていないようだ。その崖の上で、ボロボロの装備を纏って倒れている人物を発見する。
僕は、急いでその人のもとに駆け寄る。近づくと、顔がハッキリとハッキリと見えてきた。
「大丈夫か、イディオ!!」
「に…兄さん…」
意識はあるようだ。
「良かった… 帰ったら説教だからなイディオ…」
「ごめんね、兄さん…」
「立てるか、イディオ。」
「あぁ、大丈夫だよ。」
イディオは、スッと立ち上がる。
「そ…そうか? なら、帰ろうか。」
「それよりも兄さん、あそこの崖の少し下の所に珍しい花が生えているけど、俺じゃあ、手が届かないんだ。」
あれ? 今俺っていったのか? それにしても、
「珍しい花? それがどうかしたのかイディオ?」
「あぁ、シャルルに持って帰ってやろうかと思って…」
「はぁ、分かった。今とってやるから場所を教えてくれ。」
イディオは、顔を伏せたまま、崖を指差す。
少し不思議に思いながら、僕は崖の方へ歩いていく。
「ここか?」
イディオに確認しようと、振り替える。
すると、イディオは、静かに笑っていた。僕は、その顔はとても醜く歪んで見えた。
「ど…どうしたイディオ?」
「お前、本当に馬鹿だよな!!」
「!?」
突然のイディオの豹変に僕は声をつまらせる。
イディオは、僕に話しかけてくる。
「俺は、お前が嫌いだ。」
「そうか…」
「俺よりも優秀な能力、頭脳、容姿… 俺は全てにおいて、お前より劣っている。だから、俺はお前が嫌いだ。」
「そっか… 今まで悪かったなイディオ…」
「別に謝らなくても良いぜ。何て言ったって、今日は俺にとって最高の日になるからな!!」
「?」
最高の日? なんの事だ。イディオは、今までより更に醜悪に笑う。
「風よ 集まりて 敵を吹き飛ばせ "ウィンドボール"」
あれは、風魔法!!
そう思った瞬間、圧縮された風が僕に襲いかかる。
躱そうとするも、魔法の方が早く、僕のお腹にヒットする。
そのまま、僕は宙を舞い、崖下へと落ちていく。