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5話

「イディオは、やはりここに来たんだよな…。」


 僕は近くの森、通称魔の森の前にやって来ていた。

 魔の森についての本を前に読んだ事がある。確か、ここは低級クラスのモンスターが生息し、更にその奥には、崖がある。崖の高さは300メトル、崖の底の森は半径5キロメトル。崖で周囲を覆われており、外界から遮断された魔の森の最奥、通称:深淵アビス。この深淵アビスには、最上級クラスのモンスターが跋扈し、更にその中央には、最上級クラスのダンジョンがあるとも言われている。なぜ、言われていると曖昧なのは、深淵アビスから、帰って来た人がいないからだ。

 ここに来る前に、イディオらしき人物が森の方向へむかった事は、確認済みだ。


「それにしても、来たのはいいが、情報収集といってもすることないよな…」


 そう思っていると、森から3人組の冒険者らしき集団が出てきた。

 することの無かった僕は、彼らに話を聞く事にした。


「すみません、ちょっと良いですか?」


「ん、どうしたの坊や? ここは危ないのよ。」


 後ろにいた、女性が返答してくれる。


「少し、お聞きしたい事があるのですが、お時間大丈夫ですか?」


「聞きたい事? 私たちも今帰る所だから大丈夫よ。それで、どうしたの?」


 僕は、この森で子供を見ていないか聞いてみる。


「うーん、私は見てないかな? あんたたちはどう?」


「俺も見てないな。」 「あ、僕見たよ。」


「本当ですか!!」


「あぁ。確か僕たちがゴブリンの討伐中に、子供らしき男の子が奥に入って行くのを見たよ。声をかけようかと思ったけど、すぐ見えなくなったから、声をかけそびれたんだよ。」


「そうですか… 情報ありがとうございます。」


「いいよ、気にしないで。」 「それじゃあ、坊やも気を付けるのよ。」 「俺たちも帰るぞ。それじゃあな、坊主。」


「はい。気を付けます。」


 冒険者たちは、街へと帰っていった。

 イディオが、森の奥へ入ったのか…

 調査隊は、まだ来ないな…

 心配になった僕は、1人で先に森に入ることに来た。



 ◇



 彼が屋敷を出発したのを確認して、私は自分の部屋に戻り、通信を行う。


「イディオちゃん、今彼がそっちにむかったわ。」


「了解、母さん。それにしても、あいつは1人で森に入ってくるかな?」


「彼は、お人好しだから大丈夫よ。それに、冒険者に扮した使いにイディオちゃんが森の奥へ進んだことも伝えさせているから、なおさらね。」


「了解。それじゃあ気長に待ってるよ。」


「それよりも、イディオちゃん、モンスターに襲われていない?」


「あぁ、一応、魔除けの香を焚いてあるから、大丈夫だよ。」


「そう、それじゃあ気を付けてね。成功を祈ってるわ。」


「良い報告を持って帰れるようにするよ。」


 そう言って、俺は通信を切る。

 今俺は、木の上に登ってあいつが来るのを待っている。

 ふと、昔の事を思い出す。

 あれは、3年前、突然の発熱の後、俺は地球で生活していた頃の記憶を取り戻した。取り戻したと言っても、前世での名前や普段の高校での思い出ぐらいだ。


「それにしても、何だよこれ。せっかく異世界に転生したってのに、チートもなけりゃあ、ステータスも平凡。強いて言うなら、ショボい風魔法が使えるくらいだ。この歳で魔法が使えること事態凄いみてぇだが、あいつがいるせいで、霞んでしまいやがる。」


 怒りを募らせた俺は、その怒りをぶつけるように、木を殴りつける。

 殴って、少しは気分がはれたのか、あいつがいなくなった後の事を考える。


「まぁ、いい。あいつは今日でいなくなる。シャルルの奴もいつか俺のものにしてやる!!」


 そんな欲望を口にしながら、あいつが来るのを、待った。

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