2話
メイドが慌ててやってきた。
「し…シャルル様がおいでになられました。」
「分かりました。客間の方へ案内しなさい。」
僕たちが客間へ行こうとする前に、少し慌ただしい足音が聞こえてきた。たぶん、シャルルがやって来たのだろう。
僕はシャルルが来る前にイディオの後ろに立つ。そうしないと、ユーベル様があまり良い顔をしないからだ。
少しして、シャルルが食堂へやって来た。
シャルルは食堂に来た瞬間、イディオの後ろにいた僕の方へむかって走ってくる。
「誕生日おめでとう、ディーオ様。」
とびきりの笑顔で、僕を祝ってくれる。
「ありがとう、シャルル。」
返事を返しながら、僕は、喜んでくれているシャルルを目で促す。
「!? イディオ様も、おめでとう。」
察してくれたようで、すぐに振り返りイディオにも、お祝いの言葉を言う。
「ありがとう、シャルルさん。」
すると、ユーベル様も話に加わってくる。
「いらっしゃいませ、シャルル様。ここでは何ですので、別室にご案内します。すみませんが、領主のフレーズは今、外出しておりますので、代わりにイディオに、ご案内させます。イディオ、ご案内しなさい。」
「分かりました、母上。」
僕は、チラッとシャルルをみると、皆に気づかせないように少し頬を膨らませていた。
「それじゃあ、兄さん、シャルルさん行こうか。」
「あぁ。」 「はい。」
イディオに連れられ、僕たちは食堂を後にする。どうやら、ユーベル様は用があるとの事で、着いてこないようだ。だから、僕とイディオ、シャルル、シャルルの専属メイドのメイさんの4人でむかう。
食堂を出たイディオは、客間とは反対の方向へむかって歩きだした。
あれ? こっちの方向は…
気になった僕は、イディオに尋ねる。
「なぁ、イディオ、こっちは客間じゃないぞ。」
「知ってるよ、兄さん。今は、兄さんの部屋にむかってるんだよ。」
「僕の部屋?」
「えっ!! で…ディーオ様のお部屋…いってみたい…」
ん、シャルルが何か言っているようだが、声が小さくて、良く聞き取れない。
「なんで、僕の部屋なんだ? それにイディオは、どうするんだ?」
「いつも、同じところなら、シャルルさんも退屈でしょ。僕は貰った魔法書を読もうかと思ってね。だから、シャルルさんの相手をお願いしても良いかな?」
「それは、別に良いけど… 本当にいいのか?」
僕は、知っている。イディオがシャルルの事を気になっている事を。
「あぁ、大丈夫だよ兄さん。それに、そっちの方が良いと思ってね。」
「どういう事だ? シャルルも僕の部屋でいいか?」
「ぜひ、ディーオ様のお部屋でお願いします!!」
「えっ!! なら、僕の部屋に行こうか。」
すぐに、僕の部屋にたどり着いた。
一応、僕の部屋の前まで、イディオが案内した。