eggバージョンβ
誤字、脱字だらけで申し訳ありません
「ここは!」
涼太郎は意識を取り戻し立ち上がると
周りを見渡す。
そこは何もない白い空間だった。
先程まで謎の触手に抗っていたはずなのに
ここはいったい……
状況が飲み込めないでいる涼太郎に不意に
後ろから声がかかる。
「こんにちは」
誰もいなかったはずの後ろから声をかけられた涼太郎はすぐさま振り返ると驚いて
固まった。
そこには見たことのない美女がニコニコ
しながら立っていた。
「こんにちは」美女が頭を下げる。
「こ、こんにちは」
無視するのはヤバイと判断し涼太郎も返事を返す。
涼太郎は内心焦っていた。
知らない空間で、透き通るような水色の髪を
した見ず知らずの女が話しかけてきた、
それだけでも充分に警戒に値する。
さらに涼太郎も何度か修羅場を潜り抜けてきた身だ、だからわかる。あの笑顔は嘘だ。
だから自然と距離をとろうと彼女とは逆方向に歩き出すが彼女は涼太郎の後を付いてきた。
「どうしました?」
彼女が聞いてくるので涼太郎は答える。
「いや、知らない空間なので少し見て回ろうと思いましてね」
すると彼女は、「この空間はですね……」と
何やら説明を始めようとしたので、涼太郎は
待ったをかけた。
「大丈夫です。私は何事も自分の目で
確かめないと気が済まないタイプなので、
それでは私はこれで失礼させていただきます。」
彼女との会話を急いで切り上げ離れようと
再度歩き始める、だが彼女も後を付いてくる。
スタスタ、スタスタ
お互いの歩く音が聞こえるのみで他には
なにも音がしない空間。
堪えきれず涼太郎は彼女に質問した。
「なぜついてくるんですか?」
「貴方にこの空間について説明するためです。」
「だからそれは大丈夫です。自分の目で
確かめますので」
涼太郎は軽く頭を下げてまた歩き始めるが
彼女も後をついてくる。
スタスタ、スタスタ、スタスタ
こ、このままじゃダメだ。
涼太郎は止まって息を整えると全力で
走り始めた。
一瞬驚いたようだが彼女も走って後を付いてきた。
「止まりなさい。止まりなさいって言ってるのがわからないんですか?止まらないと
実力行使にでますよ」
「遂に本性を現しやがったな!やっぱり
ヤバイ女じゃねぇか」
「誰がヤバイ女ですって〜」
彼女は顔を真っ赤にしながら追いかけてくる。
だが少し時間が経つと後ろを走る彼女の
スピードがみるみる遅くなっていく。
それを見て、涼太郎は笑みを浮かべた。
逃げ切れるな。
だが涼太郎が笑みを浮かべるのを見た彼女は追うのを辞めると、涼太郎を睨みつけた。
「はぁ、はぁ、はぁ、こうなったら実力行使だわ。え〜〜い」
彼女が涼太郎に指先を合わせて叫んだ瞬間
「ぎゃあああああああああ」
涼太郎が悲鳴をあげ、頭を抱えて転げまわった。
涼太郎が頭を抱えて悶絶しているうちに彼女は歩いてこちらに近づいてくる。
「お、俺になにしやがった」
涼太郎は彼女を睨みつける。だか彼女は
すっきりとした顔をして今起こった事を
説明し始めた。
「貴方の頭に少し電流を流しました。
貴方の体は、私eggバージョンβの中に
あります。ここは私の中の仮想空間です。
おわかりになりましたか?」
eggの中!?ここはさっき見た機械の中か?
涼太郎は再度周りを見渡す。
確かに涼太郎の意識を失う前の記憶はeggと言う名の、謎の機械から出た触手に抵抗しているところで終わっている。
だが信じられない。あんな機械の中に、
これほどの空間が存在しているなんて………
彼女は話を続ける。
「まったく貴方と言う人は、人の話を聞かない、乗り込む際には抵抗する、本当に疲れる人ですね。」
女は呆れた顔を浮かべて涼太郎を見る。
「ん?ちょっと待て、乗り込む際って
あの触手ことか??」
「はいそうですよ。私、触手乗り込み型を
採用してますので」
ちょっと自慢げに彼女が答える。
「お前馬鹿だろ。だいたいこんなおっさんを触手まみれにして誰が得するんあばばばば」
「乗り込む際のストレスを少しでも和らげてあげようとする開発者の気持ちがわからないんですか!」
「わかるわけないだろ!しかもお前また俺に電流流しやがったな。」
「貴方が悪いんじゃないですか」
「俺は悪くねぇーだろ!このポンコツ女!」
その言葉を言ってから涼太郎はしまったと
口をふさいだ。なぜなら目の前の彼女の目が
から光が消えたからだ。
「ほ〜ポンコツ言ってくれますね。
これはちょっと調教が必要かな」
彼女の光が消えた目が涼太郎を捉える。
「な、何をする気だ。」後ずさる涼太郎
彼女はにっこりと微笑みながら言う。
「大丈夫です。人間そんなすぐには、
あんぽんたんにはならないでしょう。
悪くて三食担々麺を毎日食べなければいけない体になるぐらいですよ。大丈夫です。
「何が大丈夫なんだ馬鹿女。
俺はそもそも担々麺なんて好きではないし
毎日担々麺食べるような変な体にはなりたくはなあばばばばばばばば」
「涼太郎さんの頭はどのくらい電流に耐えられるんでしょうね〜」
痺れる涼太郎を見ながらeggバージョンβは
微笑み続けた。
「タンタンメンタベル、イッパイタベル
マイニチスバラシイ」
「これはやり過ぎてしまいましたね。」
頭から煙を出しながら、謎の言葉を発する
涼太郎をみて、eggバージョンβは頭を抱えていた。
ちょっとしたお仕置きのつもりでやったのだが、途中から人間の可能性を見たくなって
ついやり過ぎてしまった。
「元に戻さないとダメですね」
反省しながら担々麺大好き踊りなるものを
踊り始めた涼太郎の近くに歩いて行き
思い切りビンタをする。
「は、ここは!」意識を取り戻す涼太郎
「大丈夫ですか?」eggバージョンβが
話しかける。
「いや全然大丈夫じゃなかったと思うんだが全く記憶がない。何があったんだ俺に、
確かお前に無理矢理電流を流されてそのあと……タンタンメン?」
またあっち側に行かれたら困ると
eggバージョンβは話を逸らす。
「と、とにかく、この空間はeggバージョン
βである私の中です。そしてここは、
なんて言ったらいいんでしょうか………
とりあえず仕事の準備する空間だと思って
おいてください。
そして私が貴方のサポート役である、
eggバージョンβです。
よろしくお願いします。」
eggバージョンβは涼太郎に手を差し出した。
記憶は曖昧な上に、いきなり色々訳のわからない説明をされたがまた電流を流されては
叶わない。
涼太郎は怯えながらeggバージョンβと
握手を交わす。
「それでですね。とりあえず最初に私に
名前をつけて欲しいんですよ。
ほらいちいちバージョンβって言うの長いのでいい名前お願いします。」
eggバージョンβは照れくさそうに言う。
「ふーんそうなのか。
じゃあ、ベー子でってあばばばば」
再び電流を流されて痺れる涼太郎
「いきなり何すんだ!」
怒りを露わにする涼太郎だがeggバージョンβの目を見て萎縮する。
「ベー子ってなんなんですか?
こんな可愛らしい女の子にベー子って
ありえませんね。絶対に!
βだからベー子って考え方安直すぎるでしょ
脳みそ付いてます?使ってます?
あ、わかりました。
そんな何も考えない脳みそなんて
壊しちゃっても良いって事ですよね?
大丈夫です、貴方の頭が壊れても何も
なかったように社会は周り続けますんで。
それでは涼太郎さんの新たな旅立ちの時です。三、ニ、一、」
「待て待て待て、わかった。
ちゃんとしっかり考えるから、ちゃんといい名前考えるから、だから待て。」
慌てて止める涼太郎
「本当ですか?では早く考えてください。
時間は有限ですから」
くそが!あとでどうにかして壊してやる。
内心で悪態をつきながら涼太郎は考え始める
何がいいんだ?さっぱりわからん。
だいたいベー子で充分だろ何期待してんだ
この女はまっ!?
ビリ、突然頭に少し痛みを感じ振り返る。
「浮かびましたか?」
目の奥が笑っていない笑顔でこちらを
見てくるeggバージョンβ
「ま、まだ考え中だ」
涼太郎の精神はもう壊れそうだ。
くそ〜どうして俺がこんな目に、俺は日常を
ただただ幸せに過ごしていただけなのに
くそが!なんでだ!どうして!
……………………………………………………………あの女のせいだ。
色々あって飛んでいた怒りが蘇ってくる。
あの女、小野 彩香が俺の日常を奪ったんだ
あの女に復讐しなければ、人の大切な
幸せを、日常を奪ったあの女に思い知らせなければならない。
そうと決まればこんなわけのわからない
ところで頭を破壊にはいかない。
涼太郎は頭をフル回転させる。
そう言えばさっき自分でこんな可愛いって
言ってたよな。確かに見た目だけなら綺麗だ。ビックリする程に。
綺麗って事は美しい、美しいは美。
確かギリシア神話だったかに美の女神がいたはずだ。
そこから付けさせてもらおう。
よしあの女の名前は今日からアフロだ。
‥…………………………じょ、冗談だ。
アフロはやめとこう。じゃあディーテで行くか?。
「決まりましたか?」
目の奥が笑っていない笑顔で再び話かけて
くるベー子(仮)
「あぁ、決まったぞ。ギリシア神話にいた
美の女神から取ってな、今日からお前の名前はディーテだ。これで良いか?」
そう言うと彼女、ディーテは満更でもない
顔する。
「それで問題ないです。まぁ私は名前など
あまり気にしないのでなんでもよかったのですが」と上機嫌に言った。
じゃあベー子でいいだろうが!!
涼太郎は心の中でディーテに罵詈雑言を
吐くが口には出さない話が進まなくなるし
電流はもう勘弁だからだ。
ターゲットを間違ってはいけない。この女はまだターゲットではない、そう今はまだな。
「それでは、私の名前も決まった事ですし
準備をして小野さんのいる空間に行きましょうか。そちらで小野さんから色々と説明が
あるそうなので。」
小野………………ウホ
ディーテの発言の中にターゲットの名前が、出た事で涼太郎は興奮を隠せない。
上手く加減して殴れるかな、どんな風に
謝らせようかな?そんな事で頭がいっぱいだ。
ディーテは話を続ける。
「では準備します。下がってください
出しますよ。」
ディーテがそう言うといきなり色々な服と
武器が涼太郎の目の前に現れた。
驚いている涼太郎をよそに、ディーテは
話を続ける。
「ここで武器や防具などを準備したのち
模擬戦闘空間にて、説明を受け彩香さんと
模擬戦闘が今日の日程です。
わかりましたか?
ひとまず準備しちゃいましょう。ここには、世界中のありとあらえる武器と防具が
あるんですよ。きっと涼太郎さんに
会う物が見つかるはずです。
涼太郎さんは戦闘の素人ですが、
大丈夫です。
私がしっかりサポートしますよ。
これなんか良いんじゃないでしょうか?」
そう言って近くにあった拳銃を手に取って、ディーテは説明してくるが涼太郎の耳には
入ってこない。
彼は今から行われる模擬戦闘なるもので
頭がいっぱいなのだ。
模擬戦闘?なんで俺がそんな事しなきゃならないんだと言いたいが、今は好都合だ。
模擬戦闘だもんな。戦闘の訓練だもんな。
練習中に不良の事故が起こるのは仕方ないよな。
可愛そうだけど仕方ないよな。
模擬戦闘だもんな。訓練だもんな。
俺はやりたくないけどやらなきゃ
俺がやられちゃうから仕方ないよね。
仕方ない、仕方ない。
どこまでやって良いんだろうか?
向こうが泣き叫んでも止まらない自信が俺にはあるんだが。
そんな事を考えていると体を揺らされ現実に引き戻される。
「涼太郎さん、涼太郎さん聴いてますか?
大丈夫ですか?確かに模擬戦闘です。
訓練と言っても戦闘をするわけですから
素人の涼太郎さんが怖がるのも無理はありません。ですが私もサポートしますから」
やる気満々のディーテに涼太郎は考えていた事を聞いてみた。
「なぁちょといいか?質問があるんだ」
「いきなりですね、まぁ大丈夫です。
どんな質問でしょうか?」
「模擬戦闘空間ってどんな所なんだ?
いや一応戦闘するわけだから不良の事故があっても怖いしな」
自分の考えを悟られないように質問する
涼太郎
「なるほど、心配はごもっともです。
ですが安心してください。戦闘空間内で
受けた怪我は例え死ぬような怪我であっても生身には影響ありません。
ただ緊張感を持たせる為、その痛みが少し生身にフィードバックされてしまうので気をつけて戦闘訓練して下さいね」
それを聞いた涼太郎は狂喜乱舞である。
生身には影響しないだってそれならボコボコにし放題じゃあないか流石に生身の女を殴るのはほんの少しだけ躊躇していたが
戦闘訓練、そして生身には影響しない空間、
舞台は整っているじゃないか
そうと決まればすぐに行かなければな。
「おい、バットを貸してくれ」
「はぃ?バットですか?」
「そうだバットだ。ちゃんと金属のだぞ」
「ある事にはありますが、こんなもの持ってどうするんですか?」
涼太郎きバットを渡すディーテ
「女1人なんか、これで充分なんだよ」
感触を確かめ、軽くスイングしながら答える涼太郎
「よし。いい感じだ。じゃあその模擬戦闘空間って所に連れて行ってくれ。」
涼太郎はディーテに指示出した。
「あーの防具はいらないんですか?」
呆れた顔して聞くディーテ
「防具なんてきてたら殴りにくくなるだろ
いいから早く送れって。」
涼太郎ディーテに催促する。
ディーテは一つため息を吐くと了承した。
「まぁ最初ですからね。
一回痛い目見ないとわからない人ですし
しょうがないですよね。
わかりました。模擬戦闘空間に送ります。
まぁ頑張って下さい。」
可愛そうな物を見る目で涼太郎を送り出した。
涼太郎を、模擬戦闘空間に送った後
ディーテは涼太郎がトラウマにならないように祈りながら、返ってきた時にかける言葉を考え始めた。