元凶
……なんだよこいつら
こんな奴ら市役所で働き始めてから一度も
見たことねぇ―よ。
だってみんな猛禽類の目してるじゃん。
いる場所間違えてんだろ。
なるべく目を合わせないように
渡された 書類を見てる風で、その場を
やり過ごしていると彩香が喋りだした。
「皆さんいよいよ今日から
未成年特別自殺対法が施行されました。
これから皆さんには、特別自殺対策課の一員として働いてもらいますので
そのつもりでよろしくお願いします。
まず今日は、皆さんの実力を計りたいと
思いますので、渡された書類に書かれた各々の部屋に向かいそこにあるeggに
乗り込んで下さい。そこからの話はまた向こうでお会いした際に説明します。
では解散。」
それを聞いた涼太郎以外は、荷物を素早く、まとめ部屋を出て行き始める。
それからしばらくして、部屋の中には涼太郎と彩香以外誰も居なくなってしまった。
固まる涼太郎を置いて彩香も出て行こうと
するが、涼太郎が呼び止める。
「ま、待ってくれ。いや下さい。」
明らかに歳下なのだが、それでも上司
敬語を使わなくてはならない。
それはわかっているのだが、パニックで頭が
回らない。
「eggってなんですか?向こうってどこだ?
俺はいったいこれから何をさせられるんだ
答えてくれ。いや下さい。」
涼太郎の必死の叫びに彩香はこちらを向くも詳細は資料に書いてあります、詳しい話は
向こうでと事務的な言葉のみを言って、
再び部屋を出て行こうとする。だが涼太郎も必死なのだ。
彼女を再び呼び止める。
「いやそもそも俺はこの移動に異議を
申し立てに来ただけで、まだ了承もなにも」
「拒否権はありません。」
彩香の有無を言わさぬ圧力に涼太郎は
押し黙る。
そのまま部屋を出て行こうとした彩香が
不意に何か思いだしたように立ち止まり
涼太郎の方へと振り返った。
「私がこの浅谷市役所、未成年自殺対策課の課長に任命された際に、一つ条件を付けられました。
それは一般の市役所職員を入れる事
浅谷市役所全職員のプロフィールと経歴を
見ていると、1人の男性が気になりました。
そして実際にその人を直接見てこの人しかいないと私は思いました……
……だってその人は過去に数々の辛い経験をしているのにもかかわらず、負けていなかったから、だからその人に決めました。
……まぁその人、見た目に反して仕事が
出来る人だった見たいなんですけど、色んな伝手を使って無理に引き抜かせて貰いました。では私はこれで」
今度こそ誰もいなくなった部屋で涼太郎は
先程の彩香の言葉を頭で反復させていた。
…一般職員、…………男性、…………過去に辛い経験…色んな伝手を使って無理やり‥………………………………
「全部お前のせいか――――――――」
全てを理解した涼太郎は、大声で叫ぶと
小野 彩香を追うために部屋を飛び出した。
「どこ行きやがった!!あの女!!」
キョロキョロと血走った目で見回しながら
廊下を走る。
最初いた応接室の様な部屋からは、人の気配を感じなかった。マジでどこ行きやがった。
女だろうと関係ねぇ!
とりあえず1発、2発いや3、4発いやいや60発ぐらい殴らないと気が済まない。
俺の大事な平穏な日常を脅かしたのだ
ジンルイミナビョウドウだ。
だがいくら探しても彼女は見当たらない。
次第に焦り始める涼太郎。
落ちつけ、落ち着くんだ涼太郎
奴は、必ず手がかりを残しているはずだ。
そう言えば先程会話でeggに乗りこんで
そこから先は向こうで話すとか何とか言ってたな何かの移動する乗り物なのだろうか?
なら早く行かないと逃げられる可能性があるな急いで向かわないと
涼太郎は書類に書かれた部屋に急いだ。
「301号室はここか!」
涼太郎は301と書かれた部屋の扉を勢いよく開ける。
部屋の中には簡単な机と椅子、ベッドと
そして見慣れない卵の形をした機械があった。
「これがeggってやつか?」
涼太郎は慎重にその機械に近づくと色んな
場所をペタペタと触って安全を確かめる。
とりあえず安全そうな事を確かめ終わると
ベッド縁に座って持っていた書類の中から
お目当ての書類を探す。
「あったあった。eggの取り扱いかた
なになに、まずeggの前に立ちポーズをきめて、それからへーんしんって馬鹿にしてんのかこれ?今はこんな事してる場合じゃないってなんじゃこりゃ〜」
いつのまにかeggに少し隙間が開いており
そこから出た触手のようなものが涼太郎の
足に巻きついていた。
「ちょっと待って。意味わからん
男の触手とかなにこれ誰得ねぇ、誰得?!」
そんな事を言っているうちに、
どんどんと触手の引っ張る力は強くなり
涼太郎は引きずられて行く。
「この状態だれか教えろ〜 」
eggに取り込まれるようにして、涼太郎は
気を失った