表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/4

崩壊の足音

書きたいんだが、文章が気になり先に進めない。困った

「あぁ寒かった。涼太郎あんがとね。

でも、追いつくの大変なんだから明日の朝は必ず駅で待ってて、よろしく〜」


そう言うと野原は、手を振りながら自分の

部署がある方へと歩いて行った。

いつも通りに彼女を見送った俺も自分の

仕事場に向かう。


浅谷市 会計課、そこが俺が今いる部署だ。


「おはようございます。」


ちらほら来ている同僚達に挨拶をしながら自分のデスクに向かって歩いて行き、デスク上に置かれたパソコンの電源を入れて、流れるようにコートを脱いで椅子に掛けた。


いつも通りの流れって、最高だな。


パソコンの起動を待っている間に、いつも通りコーヒーでも買ってこようと席を立った時だ。

不意に誰かに呼ばれる声が聞こえた。


声のした方を見ると、田崎課長が自分の名前を呼びながら手招きをしているのが見えるたので、俺は急いで課長の元に向かった。


「おはようございます田崎課長。

何か私に用事でもありましたでしょうか?」


俺が尋ねると、田崎課長はなにかに怯えるような顔をして告げた。


「飯、飯塚君、君は今日付けで部署が移動にな、なったから、い、今すぐにこの書類を持って、ろ、6階に行きなさい。」


俺のいつも通りの日常が狂い始めた。


「ちょっ、ちょっと待って下さいよ課長。

いきなり部署移動なんてそんなの変ですよ。

急に言われたって仕事の引き継ぎなんかできやしない、今俺がやっている仕事はどうするんですか。!!」


俺は周りの人の目も気にせず課長に食って

かかった。


普段は声を荒げない俺が大声をあげたのが珍しかったのか、皆が驚きながら俺の方を見ているが、そんなことを気にしている余裕は俺にはない。


俺はパターン化されたいつも通り進んで行く

日常が大好きだ。

だが、それが今いきなり壊されようとしているのだ、こんな横暴を断固認める訳にはいかない。


俺は、怒気を纏いながら課長に詰め寄った。


「わ、私に言われても、こ、困るよ。

わ、私だって朝来て、い、言われたんだ。」


課長はおどおどした表情をするばかりだ。


………なにかある。だが課長のせいではない

少し冷静になった俺は、課長に謝ると書類を受け取って自分の席に戻った。


とりあえず6階に行って、そこで待つ者に、

話を聴くとしよう。

まぁなにを言われても、罵詈雑言を並べたててやるがな。

いきなりの移動なんて認められるか!!。


俺はコートとバックを素早く手に取ってから、渡された資料を持って6階に向かう為に

エレベーターに向かった。


上ボタンを押して、エレベーターが来るのを待っていると後ろから声がかかる。


「なんで朝から死んだ魚の目をしてるの?

あ、元からか、ごめんね。」


振り向くとそこにはニヤニヤしながら、野原が立っていた。


この女で余計な体力を使う訳にはいかない。

俺はこれからまだ見ぬ敵との戦いがあるの

だからな。



だがイラつきを抑えながら彼女に先程知ったばかりの、自分の現状を伝える。


「俺も事態がよくわからないんだが、俺は

本日付の部署移動で、今から6階に行かなくちゃならんらしい」


「………何、訳わかんない事言ってんの?

ふらふらしてないで早く仕事しなさいよ。」


俺にそう言って彼女は通路を歩いて行った。


‥……………とりあえず明日の朝は、駅から

ここまで早歩きでこよう。

途中でどこかの女が追いついて来れない

ように。

そう俺は心に誓うと、エレベーターに

乗り込んで6階に向かった。


この浅谷市市役所の建物は、12階あるのだが

市民の方々が、利用するのはせいぜい1〜2階

勤めている俺でさえ、会議や資料を取りに

行く為にせいぜい5階まで、行った事があるくらいだ。

それ以上の階となると実際には行った事が

ない。


だから今エレベーターの数字が上がってく

たびに、内心は緊張している。


エレベーターが6階で止まる。


緊張しながらエレベーターを降りると

そこにはガラス張りの自動扉

隣には人の良さそうなガードマンらしき

おじさんが立っていた。


「お前さんこの階になんか用事かい?」


そう尋ねられたので俺は、今日の朝に

いきなり書類を渡されて、ここに来るように

言われたことを説明する。


するとおじさんは笑いだした。


「そうか、そうか、お前さんがそうなのか。

話は聞いてるよ、右の通路を行って

突き当たりの部屋だ。

君で最後だから早く行った方がいい。」


俺の他にも移動を言い渡された人がいるの

だろうか?

そんなことを考えながら教えてくれた

おじさんに、感謝の言葉を言ってから教えて

もらった部屋に向かう。


後ろからおじさんに、これからよろしくね

っと声をかけられたが、俺はこの移動には

絶対反対なのでこれからはない。


悪いな親切なおじさん、と心の中で思い軽く頭を下げるぐらいで留めておいた。


廊下を歩いて行き、目的の部屋の前に着いた

俺は、少し身嗜みを確認してからドアを

ノックした。


少し間が空いたのち、中から「どうぞ」

と女性の声がする。


「失礼します」俺は部屋に入った。


その部屋は、少し高価そうな家具が並んだ

応接室のような作りになっていた。


そして部屋の真ん中あたりに置かれた

机では、紺色のスーツとメガネ、髪型は

ポニーテールのいかにも仕事が出来そうな

女性が、椅子に座り机の上に置かれた

何らかの書類にペンを走らせていた。


彼女はこちらを少し見てから、走らせていた

ペンを机に置く。


「貴方でしたか待っていましたよ。

では隣の部屋に行きましょうか、そこに

皆さん集まっていますから」


「いや、俺は移動の異議を申し立てに

ここまで来て」


涼太郎の話を聞かず彼女は、涼太郎の隣を

通り、隣の部屋の扉に入って行ってしまった。


仕方なく涼太郎も後を追う。


彼女の後をついて行くかたちで、隣の部屋に

入った涼太郎は、すぐその部屋の異様さに

気がついた。


その部屋にいた全員が、敬礼したままで

微動だにしないのだ。


その異様な部屋の真ん中に出来た道を彼女は

歩いて行き、正面にあるホワイトボードの前でくるりと回転してこちらを向く。


「私はこの未成年特別自殺対策課、課長の

この小野 彩香です。

これからよろしくお願いしますね。

飯塚 涼太郎さん」


涼太郎のいつも通りの日常はこの瞬間

完全に狂い始めたのである。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ