涼太郎の日常
初めて小説を書かせていただきます
読みにくい文章だとは思いますが
よろしくお願いします。
「本日から…未成年特別自殺対策法案が施行
されます。
この法案で政府は年々増え続けている若者の自殺率を減少させたい考えであり……
ですがこの法案の方法には…まだ確固たる安全性が確立しておらず……」
「よし、行くか」
そう言って俺は一つ気合いを入れると、何となく付けていたテレビを消してから、玄関に向かった。
「行ってきます」
誰もいない1Kの部屋に別れを告げると、俺は徒歩5分の最寄り駅に向かって歩き始めた。
最寄り駅に着いて改札を通りホームに行くとちょうど良く電車がホームに入ってくる。
俺はその電車に乗りこんで素早く所定の位置に陣取ると、一息着いた。
よし、いつも通りだな。
2駅先の浅谷駅で降りた俺は、改札を通り
職場までの道を黙々と歩く。
職場までは徒歩で約10分、そんなに遠い距離ではない。
健康的でちょうど良いくらいだ。
途中の信号で捕まり、青になるのを待って
いると、不意に後ろから走って来る音と俺を呼ぶ声が聞こえてきた。
だが俺は振り返らない。
この辺りで彼女に追いつかれるのが、いつもの流れからわかっているからだ。
「飯塚 !!飯塚 涼太郎!!あんた毎回歩くのが早すぎ!!同じ電車に乗ってたはずなのに、どんどん置いてかれていつも私は追いつく為に、走る事になってるんだから。
早く私の風避けになってよ。
あんたのせいで耳が冷たくなって取れそうになってるんだからね。―」
耳を抑えながら俺に謎の文句を言ってきている、背が低くショートカットの彼女は、俺と同い年の野原 桃だ。
「往来で俺のフルーネームを叫ぶな。
恥ずかしいだろ。」
信号が青に変わったので、俺は歩きながら
彼女に何度めになるかわからない注意を
言う。
いつも通りの流れで。
だが、彼女は自分の耳を抑えながら
返答も返さずに俺を風除けにする為、背後に
隠れた。
そして、彼女は俺の後ろで文句を言い続ける。
「まったく、この風には毎年うんざり、冷たいし強いしで、もう最悪。
それに涼太郎あんたもよ。
毎回、毎回、駅で私を待ってなさいって言ってるのに、どんどん歩いて行っちゃうし、私が強風で転けて怪我しても良いって言うの?
ちょっと涼太郎?話聞いてる?」
朝からよく喋る女だ、まぁいつもの事だがな。
涼太郎はそんな事を考えながら、後ろで騒ぐ野原を無視して歩く。
まぁ愚痴が出るのも仕方ないか。
確かにここ浅谷市ではこの季節、遠くに見える山々からとてつもなく冷たく強い風が吹き降りてくる。
更に今歩いている道は、両サイドを建物で
挟まれた一本道だ。
だから風が吹き抜け余計に強く感じる。
男の俺でも辛い時がある、女性の野原は
もっと辛いのだろう。
いつも通りに、後ろで騒ぐ野原の風除けになって歩いていると、俺たちの目指す建物の
浅谷市役所が見えてきた。
何を隠そうこの俺、飯塚 涼太郎は浅谷市役所で働く平凡な日常を好む公務員なのである。