2.夢の女の子は俺に何かしらの影響を与えている?
朝らしい。俺はベットから起きようとした。寒い。僕の身体は冷えている。布団どこ。
「…さむい…」
「あ、兄さんやっと起きました?全く、起きるのが遅いのですよ!」
窓の前に弟が立って俺の顔を覗き込んでくる。窓から太陽の光が差し込み眩しい。そして俺の布団は弟の手にあった。
「布団を取り上げることない…。まだ僕は眠いから寝る。ギリギリまでなら大丈夫…」
「兄さん!ダメです!もうそろそろ起きないと遅刻します!」
「まだ大丈夫。律は気が早い…」
「気が早くないです!何回も起こしてるのに起きない兄さんが悪いのです!最終手段の布団を取り上げるまで寝てたんですよ?」
僕の弟、中学1年生にしては律はしっかりしているので性格が正反対だ。律は毎日お弁当を作ってくれるし、毎日お母さんの晩御飯の手伝いをしている。そんな弟なので朝起きるのが早い。まぁそのお陰で去年は遅刻せずに済んだ。まるでお母さん。
「兄さん、今日はお弁当入りませんよね?」
「始業式?」
「そうです!今日から兄さんが高校二年生だと思うと心底驚きます。」
「もう起きるから」
そう言って僕は身体を起こし、洗面台へ向かった。顔を洗って歯磨きして極普通の朝を迎えた。
「兄さん!朝ごはん早く食べて!」
「今行く」
クローゼットを開けて制服を取り出す。制服を着てカバンの中を確認する。忘れ物はなさそう。そうしてリビングに行く。テーブルにはもう朝食とコーヒーが入れられていた。
「おはよー…お兄ちゃん今日から学校?」
「織音、おはようございます。兄さんは今日から高校二年生です。」
「おはよ、織音。律、朝食ありがとう。美味しかった。」
そう言って朝食を食べ終わると妹の織音が眠そうにしながら椅子に座った。織音は律の双子の妹。弟と妹の双子だが、律が女の子みたいなので妹2人と言う認識。律は女子力高い。そんなことを思っているとインターフォンが鳴った。玄関を開けると茅陽と飛鳥が立っていた。
「おはよ、翔太。今日は早起きなんだね。茅陽は寝坊しそうになってたよ。」
「飛鳥!それ言わない約束だったでしょ!」
「茅陽も飛鳥もおはよ。学校行こうか。」
「お兄ちゃんいってらっしゃ〜い!今日帰ってきたら一緒にソードバースト・オンラインハンター3やろうね〜!」
「了解。いってきます。」
若干ロリ気質な妹は割とゲーマー。外では割としっかりやってるみたいだけど、家ではだらけている。今日は新作のソードバースト・オンラインハンター3、通称ソドバをするらしい。春休みの時はほぼ毎日ゲームに付き合わされた。高校二年生になったら毎日は厳しいから織音には休日に少しだけ手伝うと約束をした。まぁ今日は始業式だけなので手伝ってやろうと思いながらドアを閉めて歩きだす。
「割と翔太と織音ちゃんはゲーム好きだよね。私ゲームあまりやったことないからわからないけど。」
「翔太には敵わないけど、少なくとも茅陽には勝つ自身はあるよ。」
「何事も慣れだよ。ゲームだってやり込めば飛鳥も茅陽もできるようになる。」
そんな高校生が交わす普通の話をしていたら、ふと、今日見た夢を思い出した。知らない景色の中で知らない女の子が突然、僕に気に入ったと言ってきたこと。何の夢だったんだ。
「翔太くんどうしたの?黙っちゃって。」
「いや、今日変な夢を見て。知らない場所で知らない女の子に気に入ったって言われた。」
「それってなんか取り憑かれでもしたんじゃない?」
「茅陽、あんまり怖いこと言うな。」
「翔太って怖いこと言うなとか言う割に、表情変わらないよね。ほとんど終始真顔のイメージだ。逆に茅陽は表情わかりやすいけどね。」
「そんなことないよ!私はポーカーフェイスだと思うけど?」
そんな他愛ない会話をしながらJR神戸線に乗り、学校の最寄り駅でおりて、須美学院高等学校へ向かう。階段を登る。毎回なぜこんな朝から急な階段や坂を登って筋トレしなければならないかわからないが、文句を言ってもエスカレーターなど付かないのだから仕方がない。
「はぁ…この階段を登るの私もう疲れたよ。」
「俺もだよ…学校始まる前にこんな疲れちゃダメだよね…翔太は意外と体力あるから羨ましいよ…」
「茅陽も飛鳥も、疲れたの?」
「疲れた、早めに登校して良かった。いつも通りなら私達、遅刻してたかもしれない…」
「遅刻する訳ないでしょ。僕先に行くから後で来て。」
急な階段を登り、学校に入って、自分のクラスに着いた。僕は誰もいない教室が好きだ。机があんなにも並んでいるのに一人で静かに窓から景色を見れるから好きだ。誰もいない教室は小説を読むのにぴったりで僕はカバンから小説を取り出し読んでいた。いつもの特等席、窓際の1番真ん中の席で本を読み進めていた。すると後ろのドアが開いた。
「…へ?あ、すみません。人がいるとは知らずに…」
「え、あー、大丈夫ですよ。」
一人の女の子が入ってきた。小柄で眼鏡をかけて、華奢で可愛かった。恥ずかしそうに少し俯いて教室のドアのところに立っている。すると消え入りそうな小さい声でこんなことを聞いてきた。
「えっと…高校二年生の教室であってますか…?」
「はい」
「良かった…えっと同じクラスですね…私は柳沢美凪です。お名前お聞きしてもいいですか…?」
「僕は藤崎翔太。」
「翔太くん…ですね。…よろしくお願いします。えっと…小説お好きなんですか?」
「まぁ。」
恥ずかしがりやなのかそっぽ向いたまま小さい声で柳沢さんは話しかけてきた。正直言ってしまうと僕も人と話すのが苦手だ。沈黙の時は何を喋ればいいかわからないし、話すことが苦手。
「えーっと…わ、私の席が今翔太くんが座っているところで…」
「え、あー、すみません。」
「別に大丈夫なんですけど、その席良いですよね…窓から景色が見えるし、風が入ってきて、気持ち良いですよね…」
そう言いながら恥ずかしそうに笑う彼女から僕は目が離せなくなった。あまり人と話したいなんて思わないのだが、僕はこんな事を言っていた。
「僕、君のこと気に入りました…」
自分でも何を言ったのか理解するのに時間がかかった。突然、柳沢さんに向かって気に入りましたと言ってしまっていた。
「え?」
「え、あ、いや、そうゆう意味じゃなくて、柳沢さんと思ってることが一緒だなと思って」
「えっと…」
「すみません。水筒を忘れたので飲み物を買ってきます。」
一気にこの場の空気が気まずくなったので教室から飛び出した。あんな時はすぐさま撤退が良い。余計なことも言わず、余計な印象も与えず、静かにこのことを柳沢さんが気にしないでくれれば…
お読み頂きありがとうございました!
登場人物
主人公:藤崎翔太
幼馴染:福月茅陽
幼馴染:濱瀬飛鳥
弟:藤崎律
妹:藤崎織音
教室で出会った女の子:柳沢美凪
キャラクターの詳細は後ほどTwitterに載せます!よろしくお願いします。
かんづめ (@Mi_KaN_zUmE)
https://twitter.com/Mi_KaN_zUmE?s=06