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幕間 動き出す策謀

 カルサドラこと征四郎が言葉を喋れるようになって、ロズは嘗ての様な明るさを取り戻し始めていた。


 だが、古城に住み込む使用人達は、反対に遣り辛さを感じていた。


 最低限の世話だけをしろと命じられていた彼らの仕事が、征四郎一人の為に覆されたからだ。


 最低限の食事の提供、死霊術に関する本の提供、ロズを監視しゆっくりと精神が荒廃する様を記録すると言う彼等の仕事が。


 征四郎は食材を勝手に取って来るばかりか、勝手に厨房に入り、使用人達の使う食材まで齧って味を見たり、調味料を舐め味を覚えて料理を始める始末。


 これでは最低限の食事とは言えない。


 栄養が死なない程度にしか与えられていなかったロズの体は、ある程度丸みを帯び、女らしさを取り戻し始めていた。


 この事実を報告するべく使用人達が王に書簡を出し事態の急変を知らせた。



 カムラ王にその報告が届くと、王は激怒した。


 このままでは征四郎一人の為に計画が頓挫とんざしてしまうと。


 そこで、正体の良く分からない者がロズの傍に居ては一大事と言う名目で、討伐隊を送り出す事を画策する。


 征四郎さえ消えれば、後は元通りだ。


 しかし、王族の姫の元に居る化け物染みた男一人を討つのに、誇り高いと言われるカムラ王国の戦士団が動くはずも無く、討伐隊の集まりは悪かった。


 その様子に業を煮やした王は一計を案じて、ロズワグンの弟であり、剣士としても十分な腕前を持つグラルグスを送りつけることにした。


 十五歳の少年であるが、グラルグスを次期王にと言う声も無い訳ではない。


 一昔前ならば、成人として扱った年齢でもある、王も何れは手を打とうと考えていた。


 だから、不幸な事故が起きて、姉弟共々倒れてくれることを王は強く願った。


「生半可に生かしておくから面倒が増えるのです。幸いに今回は胡乱な男が居る、そいつに全ての罪を着せればよいでは無いですか?」


 そう囁く腹心の声に従い、王は討伐隊と言う名目で傭兵を雇い、それをグラルグスに率いさせた。


 全ては王の望みどおりに動いているように見えた。


 それは王を裏で操る腹心の思い通りである筈だった。


 だが、王の腹心は、黒装束の巫女は思う。


 何かがおかしい、何かがずれている、と。


 本来ならば、400年前に倒された巫女姫様が甦りロズワグンの肉体を奪っていた筈なのに、ロズワグンは未だにロズワグンのままで、謎の護衛染みた存在まで傍に控えていると言う。


 今回の策謀で事を決せねば、聊か面倒なことになりかねない……。


 彼の強国が圧力をかけてくる前に、決せねば……巫女姫様を迎えられない。


 そんな事を煩悶していた所為か、傭兵の人選を腹心は人に任せた。


 その結果は……黒巫女の思惑を飛び越え、黒巫女の真の主にすら飛び火する事態を生む。


 ロズワグンの弟、グラルグスはその傭兵達の中から真の友を得ることになるのだ。


 それは、後に征四郎とも真の友となる者達でもあったのだ。

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