3/3

嫁、MMOの世界に足を踏み入れる。

嫌な予感はしていた。

俺は、確かに、止めたのだ。

一緒にMMOをやるなんて…。

学生時代に、有名どころのMMOをいくつかプレイしていたから、どんなものかは自分はわかっていた。

24時間体制。

ゲームによるけど誰かと交代したり。ゲームの中でやり取りしたり。

一応社会人の端くれとしては、簡単に手を出すわけにはいかない。

寝る時間がなくなるのが目に見えてる。

MMO離婚、なんて言葉もある。

一緒に暮らし始めた彼女を置き去りにして夜な夜なゲーム、挙句破局なんて、いい歳になってやってられない。

だから俺は止めたのだ。

まさか、当の彼女が、目をキラキラさせてちゃっかり俺の分まで事前登録なんてするとは思わずに！！！！！！

そこまで言われると逆に気になるよね、と言われて脱力、諦めた。

今の家にはスマフォ一台しかないというのに、MMOのなんたるかをわかっているのかこの娘は…。

所詮ソシャゲを２つ３つやった程度だったので、案の定彼女は何もわかっていなかった。

オンラインでゲームをする、という体験が、文字通り初めてだったらしい。

どうしてワールドチャットに絶え間なく文字が流れていくのか、

「この人達はいつ寝てるの？」

「普段何してるの？」に始まり、

「出会いを求めてゲームしてるの？」

「なんで発言に伏せ字があるの？伏せ字入れてるの？」

「なんか変な人から連絡？きたよ？」

俺がオートで狩りができるようになったことに感動している間に、なにやらずっと首を傾げていた。

チャットを打ち込むのも覚束ないのを横目に見ながら、声に出さずに思う。

わかったか小娘、これがMMOの世界だ。

数ヶ月としないうちに、彼女の驚異的な行動力に呆気にとられることになるとも知らずに…。