彼女の場合。
今まで会ったことのない人種に会った。
彼に出会った時の印象は、それが全て。
なにせよく喋るのだ。
誰もいなくても喋る。1人で喋っている。
携帯の画面に向かって。
私は独り言は言わないし、こんな風に賑やかにゲームをする人に初めて出会った。
ゲームって1人でやるものじゃなかったのかなあ。
後に、彼の家族もすごく賑やかにゲームをする場面に相席したり、1人でも話してるところを見てから、そういう文化なんだな、と気づくことになる。
その時は、その後、彼とそこまで深く関わるなんて思わなかったのだけれど。
恥ずかしいから出会いは語らない。
私は学生時代に一人の男性と出会って、卒業して、イロイロあって付き合って、そのまま一緒に暮らし始める。
イロイロってのは、まあ色々…。
同棲生活って、今まで違う文化で育った二人が、生活をすり合わせていくものだと思ってたけれど、なんせまあ、彼は私と違う生き物で。
一番は、スマフォの画面を見ながら、ずうっと喋ってるのだ。最初は電話してるのかと思った。
そしておまけに、それを色々と私に見せてくる。結果とか勝敗がどうとか。
彼曰く、一緒の時間を過ごしたい、そうなのだけれど、
え、これは、一緒に過ごしてることになるのかな…??
どうなの…?
世間一般的にはそうなの…?
その時はそれなりに素直だった私は、わからないことには文句のつけ方もわからない気がして、同じゲームを触ってみたけれど、
少なくとも私が一人で喋ることはなかった。
私が一緒にいなくても喋ってるし。
と同時に、私が引いたガチャ?を見て、彼がぶぅぶぅ文句を言い始めることになる。
こういうのは、わからない子どもとか、欲がない人の方がいいんじゃないかなあ、と思いながら。
そしてこのぶぅぶぅ言われるのは、私たち二人の、恒例の時間になっていくのだ。
その時は、思いもしなかったけれど。