失われた新婚生活を探して。
気のせいだと思っていた。
運は、偏ったりしないと。
日頃の行いが大事だと。
でも、
何度も何度も、
あっさりと、
「あ、出た。」とか、
同時に引いたのに妙に無言とか、
ふと気づくと強化値が俺を超えているとか、
知らないURが増えているとか、
年単位で繰り返されると、
心に芽生える気持ちは一つ。
嫁のガチャ運がおかしい!!!!!!!!
嫁は、読書はするが、ゲームは学生時代に嗜むくらい、という人種だった。
かたや自分は、遡れば義務教育時代から、夜な夜な親のパソコンをいじり倒していた。
定額制になる前の時代、パケット通信費で、何度怒られたことだろう。
年を重ねるごとにRPGからMMOに流れ、学生時代は夜ごと領地を守っていた。
就職してからは専らソシャゲ。
職場で昼休みの息抜きかつ、点数を叩き出しては、無言でスクショを同期に送りつける日々。
そして詳細を語る気は無いが、その頃女性と暮らし始め、一緒にソシャゲを始めた。
最初は俺がやるのを、すごいだの目が回るだの言いながら、横から見てるだけのはずだった、のだが。
ある日、気づいてしまった。
いつの間にか、彼女の端末に並ぶのは、星6つのキャラばかりということに。
「ああ、このキャラ強いの?よく見てなかった!」
「全然ランキングで点数が出ないよ…ミスばかりだよ…、代わりにやってー!!!」
「なんで出来るの!?ずるいずるい!」
その頃はまだ、可愛かった。
頼られもすることだし。
そこから一年。
「タゲ切れたじゃないか、目開けてるのかー!!!」
「はいおつー、仕留めたー!!」
「そんなもんで裏取りした気になるとは甘いわ!!!」
嫁となり、暴君と化した女性と、俺は暮らしている。
着々とプレイヤースキルを上げた彼女の端末には、俺の知らないキャラや装備。
きっと俺はこの先の人生、繰り返し、何度でも言う。
嫁のガチャ運がおかしい。