言葉探し【詩】
そうして皮をぺろりと剥くと
中は蜜柑の果肉のようにつぶつぶになっていて
私たちはその粒のひとつひとつを捉えようと
不器用な指先をこねくり回すのだけれど、
そうこうする間に蜜柑は
輝く三毛猫になって紙面から逃げて行ってしまう
かと言って、蜜柑をつぶしてジュースにしたところで
その粒だちひとつひとつの煌めきを見分けられなければ
何の意味もない
ただ甘ったるく舌ざわりが良いだけで
一瞬で喉元をすぎてしまう
私たちは 酸も苦みも含めて
その涙型のつぶつぶを
丁寧にほぐし、味わわなければならない
そうしてはじめて
蜜柑というものの全体像が分かるのだ
2018年11月制作。