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爺さんチートでチートいい気分  作者: 猫野御飯
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チャプター4 最強チート爺さん誕生

「それでは、いきますよ」


 ミカエルが不敵な笑みを浮かべながらワシの頭に手を添える。すると不思議な事にミカエルの手のひらが眩い光を放ち始めおった。

 その光は野球ボールぐらいの大きさに形を変え、物凄い速度で回転をはじめ視界を奪われるぐらいの強い光を放ちおった。

 ワシは眩しくて目を開ける事が出来ず、堪忍じゃ、ナンマイダブ、ナンマイダブと心の中で唱える。


「我の持つ全ての力、目の前の者に全て委ねよ!」


()()()()()


 身体中に電撃が走るような痺れが生じ、ワシはもう立ち上がる事は出来ないかもしれないと悟る。

 しばらく放心状態でいると、閉じた瞼に広がる真っ暗な視界の中、不思議な現象が起こったのじゃ。


 真っ暗な視界の中に光が現れ、天が現れ、地が現れ、海が現れ、植物が現れ、太陽と月と星が現れ、魚が現れ、鳥が現れ、獣が現れ、家畜が現れ

 そして……人が現れたのじゃ。

 なんという壮大な映像じゃ。ワシの閉じた瞼のスクリーンの中で、世界が出来上がったのじゃ。それはまさに天地創造じゃった。


「どうですか私のチートスキル、天地創造は」


「ど、どどど、どうと言われても凄すぎる世界観じゃ!地球の誕生をしかと見届けたぞワシは!」


興奮冷めやらぬ口調でワシは答える。


「それは良かったです。ある意味既に結構な最強チート爺さんになっていますが……」


 ミカエルは好奇心の塊のように見入る天使達を指差し


「まだ、あんなにもあなたにチートスキルを付与したがっている輩がおりますのでお付き合い頂けますでしょうか」


 とさらっと言いよった。

 ワシが天使達を見ると皆一様に興奮した表情でワシを見よる。


「つ、次はワタシよ!」


「いや、俺で!」


「あたいも!」


「あっしも!」


「いやいや、僕だから!」


 押しては押されて、おしくらまんじゅうのように我さきにと、天使達はワシの元へと殺到しておる。

 大人気爺さんじゃ。スターダムじゃ。


「はいはい。喧嘩しないの。こちらに一列に並んで下さいねー」


 ミカエルが『最強爺さん製造の列、先頭はここです↓』と書かれた札を持ち案内し始める。

 すると今度はその看板の前に天使達が殺到する。


「ちょっとアンタ!何ずるこみしてんのよ!」


「してねぇよ!俺が先に居たし!」


 と今度は喧嘩まで始まる始末じゃ。たかだか爺さん一人の為にと思うが、たかが爺さん、されど爺さんなのじゃなぁーとシミジミ思う。

 気が付くと列は遥か後方まで続いておった。


――ワシの身体持つじゃろうか……。


 一抹の不安を抱きながらワシは天使達の動向を見守る。


「はーい、それじゃあ一人ずつ名前を呼んで行きまーす。チルチルさーん」


「はい!」


 チルチルと呼ばれたあどけなさの残る少女のような風貌の天使が手をあげて、嬉しそうな顔でワシのもとへ翼を羽ばたかせ寄ってくる。

 ファサッと着地し。


「チルチルです。よろしくねお爺様!」

 

 とニッコリとほほ笑む。

 ミカエルと同じようにワシの頭に手を添えて何やら念じるとチルチルの手がミカエルの時と同じように光を放ち始め、その光は円形に形を変えていく


「お爺様、私の力授けます。アブソリューション(能力吸収)!」


 すると、今度はワシの脳裏に百獣の王ライオンが草原を駆け巡り動物達を狩っている姿が浮かんだ。

 シマウマ、インパラ、キリン、と動物の首根っこに噛みつき、次々と動物達を捕食している。

 食べ終える毎にライオンの肉体は強化され筋肉が盛り上がり強靭な肉体になっていく。

 壮大な光景じゃ。サバンナ万歳じゃ。


「私のチートスキルは相手の能力を吸収するスキルなの。だから上手く使えばめっちゃ強いよ!」


「ほぉーそれはそれは、良く解らんがすまんですじゃ」


 拝みながら頭を下げる。何が凄いのかは良く解らんが有難い事じゃ。

 ワシはチートスキルとやらを頂く度に頭を下げ拝んだ。

 そんな事を何百回と繰り返したじゃろうか。さすがに疲れ果て憔悴していた矢先ミカエルが


「皆さん、聞いて下さい!世界最強のチート爺さんがここに誕生しましたよ!!」


 わぁーっと歓声が上がる。記念撮影を希望する者、抱き着く者、拍手する者、一人涙を流す者、悲喜こもごもの感情が入り乱れておる。


「で、どうなるんですか」


 呆れ顔でサルエルがミカエルに聞く。


「別にどうもしませんけど……」


 はて、どうしたんじゃろうか。みるみる内に天使達がしおれていく。楽しかったはずのゲーム機を母親に無理やり没収された子供かのごとくじゃ。


「解っていたんです、最強チート爺さん製造計画は、その過程にこそ最大の楽しみがあったんです……。そんなの解ってました、解ってましたとも、解っていましたやい」


 駄々っ子のようにミカエルが続けおる。


「でも、我々は久しぶりの転生者に胸が高鳴り、心が躍ったんです。なのにさっちゃんたらヒドイやい」


「はぁ……」


 サルエルが困ったように沈黙し、ミカエルが続けおった。


「なんだか一気に興ざめですよ。さっ撤収撤収、スキル撤収」


 ミカエルがワシに近づき頭に手をかざす。何かを呟いて目を閉じている、が、何も起きない。

 ミカエルが困惑した表情で再び手をかざし何かを呟く、が、何も起きない。


「……」


「どうしたんじゃ?」


 心配になり尋ねると冷静沈着なミカエルの表情がみるみる内に曇る


「外れません」


「ん?なにがじゃ」


「チートスキルを外せません……。この世界を一瞬で滅ぼせるチートスキルが外せないようです……」


 棒読みじゃった。心ここにあらずじゃった。


――こうして世界最強のチート爺さんがここに誕生した――

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