三匹の子ぶた不仲説 ~if童話~
あるところにお母さんぶたとその子供の三匹の子ぶたが一緒に住んでおりました。この三匹の子ぶた、それはそれはとても仲が悪かった。
ある日喧嘩ばかりしている子ぶた達にお母さんぶたが言いました。
「お前達、そんなに喧嘩ばかりしているのならいっそ自分だけのお家を作って生活してみたらどうだい?」
と自活を提案しました。
さっそく三匹の子ぶたは母親の家を出てそれぞれお家を建てて独り暮らしをすることにしました。
一匹目の子ぶたは怠け者。一番平坦な山の入り口辺りに簡単なわらのお家を作りました。
二匹目の子ぶたは食いしん坊。山の幸が沢山あり川魚が捕れる山の中腹辺りに木の小屋を作りました。
三匹目の子ぶたはとても臆病。山のずっと奥一番高い場所に窓の少ないレンガ作りのお家を造りました。
さてそこへ、とても大きなオオカミがやってきました。オオカミは山の入り口にある一匹目の子ぶたのわらの家へ呼び掛けます。
「子ぶたさん、子ぶたさん。僕をおうちに入れておくれ」
一の子ぶたは出るのがめんどくさかったので、居留守をつかう事にしました。
ですがオオカミは怯えてドアを開けないんだと勘違いし力づくでおうちを壊すことにしました。
「いるのは分かってるぞ!そーれ!ふっふーのふーっ!」
思いっきり息を吹きかけ、たった一息きで弱く軽いわらの家はあっという間に吹き飛ばされてしまいました。一の子ぶたは大慌て。めんどくさがりはどこへやら、トットコト、トットコト走って二匹目の子ぶたのお家にたどり着きました。逃げた勢いそのまま木のドアを叩きます。
「助けておくれー!オオカミに食べられちゃうよ!」
食いしん坊の子ぶたは迷います。
(入れたら僕の食べるものが減っちゃう…)
食いしん坊の性格を知ってる一の子ぶたは、
「おやつがあるよ!」
と呼び掛けました。
それならと喜んでドアを開ける二の子ぶた。なのにおやつがありません。
「おやつはどこ?」
「あとであげるよ。今持っているとは言ってない」
二の子ぶたは悔しがり喧嘩になりました。
そこへ追い付いてきたオオカミがドアを叩きます。
「お〜い、僕を入れてくれ。一緒にりんごを食べようじゃないか。う~ん美味しいな~」
嘘だと知ってる一の子ぶたは開けようとした二の子ぶたを制止します。
焦れたオオカミはまたもや
「ふっふーのふーっ!ふーっ!!」
と二回ほど息を吹き掛けおうちを吹き飛ばしてしまいました。木の小屋も大きなオオカミの息には敵いません。
二匹の子ぶたは大慌て。重い体を必死に動かし一の子ぶたと一緒に走って逃げました。そして山の頂上にある三匹目の子ぶたが住むレンガのお家に助けを求めます。
一「助けておくれ!オオカミが追ってくる!」
二「僕ら食べられちゃうよー!おうちに入れてくれ!」
三の子ぶたは臆病者。今ドアを開ければオオカミが入ってくるのではないか?と考え、開けるのを拒否。
二匹の子ぶたは必死だったため「え~い!」と無理矢理窓を割って入ってきました。
三「えーっ!窓が壊れたじゃないか!どうするんだよ、オオカミが入ってきたらっ」
一「大丈夫。大丈夫。あのオオカミはこのちっちゃな窓からは入れないさ」
と一の子ぶたが言います。そう、臆病な子ぶたのお家は怖いものが入ってこないようにと頑丈なレンガでおうちを造り、更に窓は子ぶたが一匹ずつしか通れない大きさにしておりました。完璧な城塞です。二の子ぶたもなんとか通り抜け、そのあとすぐに大きなオオカミがやって来ました。
「子ぶたさん達〜。この小さな窓じゃ通れないよ。だからドアをあけておくれ。」
一「やだよ!」
二「食べ物あげない!」
三「怖いよー」
と三匹の子ぶたが答えます。
珍しく意見が一致した?三匹の子ぶたは、そのまま無視することにしました。
何度呼び掛けても反応しない子ぶた達。苛立つオオカミはまた息を吹き掛けます。
「ふっふーのふーっ!ふっふーのふーっ!…???」
ですが今度は頑丈過ぎて吹き飛ばすことが出来ません。
それならと子ぶた達が通った以外にも穴が他にもないか探し回ります。そして見つけたのが屋根の上に付いている煙突でした。
こっそり登って煙突へ入っていくオオカミ。
「へへっあいつらバカだな〜」
家の中では出られない事に段々と苛立ってきた三匹の子ぶた達が喧嘩をし始めます。
「ねぇ武器になるものは?この家はなんで何もないのさ。このままじゃあのオオカミを追い払えないじゃないか!お前達が何とかしろよ!」と人任せの一の子ぶた。
「あ〜安心したらお腹すいちゃったよ」とお腹を鳴らし勝手に食べ物を探しだす二の子ぶた。
「何勝手に僕の鍋でお湯を沸かしているんだよ!籠城するのに食料が無くなったらどうするんだいっ?!」
と怯える三の子ぶた。
一「僕も食べたい」
二「もっと野菜ないの?」
三「早く出てってよ!」
それぞれ言い合って全く噛み合いません。
そこへ煙突から入り込んだオオカミが知らずにすすーっと下りてきます。ですが、茹でられた大鍋にドボーン!っと落ちてしまいました。
「熱い!熱い!助けておくれーっ」
オオカミのことをすっかり忘れていた三匹の子ぶたは突然のことに驚きました。そしてオオカミを助けることなくみんなてんでバラバラに逃げていきました。
オオカミはなんとか這い出てきましたが大火傷。
「仲が悪いって聞いていたのに…協力して俺をこんな目に合わせるなんて…。もうあのぶたどもには二度と関わるもんかっ!」と泣きながら去って行きました。
バラバラに逃げたはずの子ぶた達といえば、結局のところお母さんぶたのお家へと舞い戻って来ておりました。
お互い口々に
一「僕を助けてくれなかった」
二「食べ物をくれなかった」
三「おうちを壊された」
と相手の悪口や文句ばかりです。
それに対して母親は、
「お前達、どうして仲の悪いままじゃなかったんだい?どうして…オオカミの餌にならなかったんだろうねぇ。そこで仲良くお腹に収まってくれれば良かったのに…」
「???」
三匹の子ぶたは意味がよく分かりません。
「お前達みたいな、可愛くない子ぶたはもういらないわ。だからあなた達を追い出してあのオオカミにそれぞれの家を教えたのに、なんてマヌケなオオカミなのかしら」
三匹の子ぶたは驚きました。
久しぶりに見るお母さんぶたはとっても怖い顔になっていました。オオカミよりもとても恐ろしい存在に成り果てたお母さんぶたにショックを受けた子ぶた達は自分達が母親を追い詰めていたことを、今更実感したのです。
反省した子ぶた達は、また家を出て自分達だけで生活していけるように一緒に暮らすことにしました。畑での野菜作りを一の子ぶた。お料理は二の子ぶた。家のお掃除は三の子ぶた。とそれぞれよく働くようになりました。
はたから見るとそれはそれはとても仲良の良い三匹の子ぶたに見えたとさ。
~余話~
三匹の子ぶたが去ったすぐ後、母ぶたの独り言が静かな部屋に響いた。
「ちょっと脅かし過ぎたかしら…?」
あの恐ろしかったはずの顔は優しいものへと元に戻り子供を心配する普通の母親の顔に戻っていました。
「本当にあの子達には困ったものだわ〜いつもいつも喧嘩ばかりで、私が甘やかしたせいもあるけれど…」
今回の一件、実は母ぶたがオオカミに少しあの子ぶた達を脅かしてくれないかとお願いしたことでした。それにより子供達同士で協力し合い危機を乗り越え兄弟のありがたみや、いかに自分達が守られていたかを知って欲しかったのだ。
オオカミは別に子ぶた達を食べようとはしていなかった。ただ戸を叩き入ろうとしただけ。家を壊し三匹が集まるように仕向けたまでは上手くいったが、熱湯に落ちるという思わぬマヌケな結果になってしまった。
その為、急遽自分がオオカミを利用して襲わせたと思わせた。
彼らは怒った顔の母ぶたを知らない。そのためかなり驚いていた。見知らぬオオカミよりも優しかった母親の怒り顔の方がよっぽど怖いものに見えたらしい。護ってもらえないと悟った彼らは案の定母親から離れ、三匹仲良く生活するようになった。
のはいいけれど、逆に恐ろしくなって会いに来てくれなくなってしまった。
「やっぱり寂しいものねぇ…」
自分勝手な三匹の子ぶたはけっきょく本当の優しさを知らずに過ごすことになる。
そのことに気づくかは三匹の子ぶた次第…
おしまい
読了ありがとうございました。
三匹の子ぶたが不仲だったらこんな感じかな?と思い御話を創りましたが結局結果は同じになったという。
平凡な童話になってしまいましたが、お母さんぶたのちょっとズレた愛情も感じて頂けたら幸いです。