ホラー短歌3
ホラー短歌の第三弾です。今回は私が大学生の時に経験した実話を元に構成しています。書きながら当時を思い出し、ちょっと寒気がしてきました。
第十四首
大学の時に後輩の女の子が、
「先輩。グランドピアノをすごく安い値段で手に入れたんですよ。私って買い物上手かも」と自慢してきました。
その値段を訊くと、中古なので八千円とのこと。いくらなんでもそれはないだろうと言うと、後輩はピアノが写ったそのカタログを見せてくれました。私は、やっぱりなと気付きました。
後日、送られてきたピアノを見て後輩の女の子はがっかりしていました。
そらにその後を詠んだ歌
真夜中に
オモチャのピアノを
奏でてる
憑いてきたのか
前の持ち主
詠み人 合沢 時
本人コメント「八千円で本物が買えると信じきっていた後輩も、ある意味怖い」
第十五首
大学の時に私の友人たちが、霊の見えるトンネルで有名なI鳴トンネルに肝試しに行った翌日の学食でのこと。
「で、霊とか見えたと? 」と私。
「見えんかった。だけん、ただの男三人のドライブじゃった」
四人でそんな話をしているところに、あとから来た先輩が言ったのです。
その時のことを詠んだ歌
さっきまで
お前の横に
座ってた
あの可愛い娘を
紹介してくれ
詠み人 合沢 時
本人コメント「お昼時を過ぎた学食は閑散としていて、私たちの周りには誰もいなかったはずなのです」
第十六首
大学の時に、私の部屋の横の部屋に住む後輩(男)が、深夜二時頃にドンドンドンと私の部屋のドアを叩き、「先輩、起きてください。先輩、起きてください」とただならぬ声で叫んでいました。寝ぼけ眼でドアを開けると、後輩が血の気を失ったような青い顔で震えていました。どうしたのか尋ねてみると、なんでも壁に架けていた元カノから貰った手編みのマフラーが、架けていたフックの所を軸として、フワッと水平まで浮き上がり、そして何事もなかったようにまた降りたというのです。深夜までギターをつま弾いていた後輩は、その超常現象を目撃して、恐怖に震えて私に助けを求めてきたのでした。
その時のことを詠んだ歌
怖いから
先輩の部屋に
泊めてくれと
すがる後輩
背後に生き霊
詠み人 合沢 時
本人コメント「霊感そんなにないけど、たまに見えちゃうからね」
第十七首
大学の時に、私の住んでいる下宿から買い物に行くためには、山沿いの細い道を通らなければなりませんでした。ですから、夜中に買い物に行くのは、自転車を使っても覚悟が必要でした。なぜならば、その山の麓からすぐの所には墓地があるのですから。
ある晩、授業で出された課題に取り組んでいた私は、十一時頃になって空腹を感じ、食べ物を探しました。しかし、部屋には食べ物は何もありませんでした。我慢するしかないかと一時はあきらめましたが、やはり空腹感には耐えきれず買い出しに行くことにしました。店に行くまでは何事も無かったのですが…。
そんな時のことを詠んだ歌
ゆらゆらと
道の行く手に
人の影?
行きはよいよい
帰るの無理だ
詠み人 合沢 時
本人コメント「そりゃあ、即Uターンして、友人の家に向かいましたよ」