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第64話「びびる俺」

 旅の準備を整えた俺達はジェトレの村を出発した。

 

 目的地である、旧ガルドルド魔法帝国の遺跡コーンウォールに向う。

 コーンウォール遺跡は西の街道に出て、バートランド方面へ1日ほど歩いた所。

 

 ジュリアに聞いた話によれば……数千年ほど前に栄えた旧ガルドルド魔法帝国は、この大陸の殆どを支配したと伝えられている。

 現在あるガルドルド帝国領の、約10倍もある広大な国だったらしい。

 俺の前世で言えば古代ローマ帝国のような存在なのだろう。

 ちなみに現在あるガルドルド帝国は、以前の魔法帝国とは血筋的に全く関係が無いそうだ。


 高度な魔法文明を持ちながら、国家が滅んだ原因が不明。

 これって、もしかしたら?

 アトランティスとかムーとか、俺の中二病的な要素がこの世界に反映されているかもしれない。

 いわば邪神様の悪戯とか?


 閑話休題。


 ところで俺は不安にかられている。

 何がって?

 正直言って、迷宮に潜る事に対して……だ。

 

 何を今更感が半端ないが……

 正直、最初は戦いを結構、楽観的に考えていた。

 

 だが、俺は徐々に怖くなって来たのだ。

 戦いに負ければ、引き裂かれ、喰われて死ぬ。

 そんな現実の話を聞けば、幾らファンタジー大好きな中二病患者と言っても、怖い。

 現実の戦いは、甘い空想や夢とは全く違うものだと分かって結構びびる。

 アモンにリアルな戦闘の経験談を聞いたり、居酒屋店主父のバリーから散々言われた影響もあった。


 これから体験するのは現実。

 血潮が飛び散り、肉が裂け、骨が断ち切られる厳しい現実。


 空調が効いた快適&安全な部屋で、バーチャル的に戦うのとは違う。

 スマホの画面を見たり、ゲーム機のコントローラーを握ってTVモニターを見ながらプログラミングされた敵と戦うのとはわけが違うのだ。

 

 これまで戦った経験は、ジュリアを助けた時の雑魚だけ。

 つまりゴブ戦、たった1回。

 出来るなら、もう少し場数を踏んでおきたいというのが切実な願いである。


 今日も天気は快晴。

 雲ひとつ無い。

 

 ジェトレ村からバートランドに向かう道もタトラ村からジェトレ村に向う様相とほぼ一緒だ。

 見渡す限りの大草原と点在する雑木林……ずっと変わり映えしない風景が続く。

 

 クランには唯一まともな人間のジュリアが居る。

 2時間歩いて休憩し、それを2回繰り返して、また歩き始めた時であった。

 ジュリアがまた例の勘というか、危機回避能力を発揮して前方に危険がある事を俺達に報せたのである。


 危険!?

 ふうむ、危険ね……

 相手にもよるが、どんなものなのか?

 俺はジュリアに聞いてみる。


「怖い! ……凄く強い魔物だよ、きっと! 少なく見てもざっと40匹以上は居る」


 40匹以上!?

 凄い数だし、はっきり言ってやばい!

 それに、俺でも戦えるレベルなのだろうか?

 ジュリアが言う強いってどんだけ?


「私も感じるよ。ジュリアの言う通りだ」

 

 ジュリアが感じた危険な気配を、イザベラも感じていたようだ。

 こちらは、はっきりと相手を認識しているらしい。

 何故ならば、イザベラは魔法使いらしく索敵の魔法を使っていたからである。


 自信満々に言うイザベラ。


「早速、支援役(バファー)の本領発揮か?」


 俺が褒めると、イザベラは嬉しそうにぺろりと長く赤い舌を出した。


 一方、アモンは眉間に皺を寄せていた。

 怒っているような顔が余計に険しくなっている。

 はっきり言って怖いよ、こっちの方が。


「ふむ、この相手なら、我々の面子で問題は無い……進もう」


 この相手なら?

 問題ない?

 本当かな?

 全く分からん?


 気になった俺は思わず聞いてみる。


「アモン、この相手って何だよ、一体」


「…………」


 しかし、アモンは無言であった。

 答えてくれない。

 こうなると、余計に気になるでしょ。

 改造されたとはいえ、俺だって人間だもの。


「なあ、教えろって」


 俺が再び聞くと、アモンはさもうるさいといった顔で答えてくれる。


「雑魚だ」


「雑魚?」


「そうだ、以上!」


 俺がまだ聞きたそうにしていたら、アモンの奴は質問を一方的に打ち切ってしまった。


 はぁ……

 雑魚って何だよ?

 低レベルな俺でも戦える相手なのか?

 謎は深まる。


 しかし『クラン』の戦力を1番把握しているのは、戦い慣れた戦鬼アモン。

 彼が発した最後のひと言で、俺達は注意しながら進む事になったのであった。

いつもお読み頂きありがとうございます。

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