白き水の都③
水の都ルーセントの異常気象について。
異変の始まりは約二ヶ月前。
気温の下降から始まり、雪が降り始め、今では海まで凍っている。
異変の始まりの時に吹いていた風は西側からの物だった。周辺を歩いてみたところ、吹雪いたときの風向きは決まって西からのもの。おそらく、西の山に何かしらの原因がありそうだ。
戦闘力が足りないため確認しには行っていない。そのため仮定の段階で止まっている。
要約するとこんな感じだった。
他の紙には写真やルーセント周辺の地図が描かれていた。
「いや、お前戦闘嫌いなだけで戦闘力はあるだろ」
「足りない」
「そんなにあそこの魔物って強かったか?」
「違う。原因、おそらくレグルスの言ってた魔物」
「根拠は?」
「この世界はゲームのシステムをそのまま。だから異常気象は基本的にあり得ない。人為的、または天変地異を起こせる魔物と仮定できる。気象観測の結果的にも異常が起きているのはルーセント西の山周辺のみ。人為的、魔物、どちらにしてもオリジン級の魔力を有するため、戦闘力もオリジン級と予想できる。だから、足りない」
「なるほど、オリジン級ね。なら、俺の領分だな」
「うん」
「了解。ちっとばかし様子見てくるか」
「そう」
「情報とお茶、ありがとな」
「うん」
お礼を行って立ち上がる。
見送ってくれるためかウェルも立ち上がった。
出口まで向かうと、ウェルもそのまま出てきた。
「どうした?」
「ついてく」
「危ないんだろ?」
「ノア最強。もーまんたい」
「謎の信頼をありがとう。一回宿に戻ってから行くがいいか?」
「お任せ」
「あいよ」
ウェルと共に宿へと歩いていく。
「そう言えば街の人に聞いたらローウェルって言ってたが・・・」
「同じ理由」
「ああ、お前も有名だもんな」
「うい」
ウェルも俺と同じで偽名を使っているようだ。
確かにプレイヤー間でも知らない奴はいない有名人だしな。こちらの住民達が知らないはずがない。
その後も適当に話ながら宿へと戻った。
カプリスの部屋に行き、ノックする。
「はーい。どなたー?」
「おっさん冒険者」
「ぷふっ! ちょっち待ってー」
中から吹き出したような声が聞こえたあと、少しして扉が開いた。
「おかえりマスター! 情報は──って誘拐はダメでしょ!」
ニコニコと笑顔で出てきたあと、ウェルを見てそう怒るカプリス。
「誘拐? あぁ・・・」
「子供じゃない」
カプリスはウェルの名前は知ってても会ったことがないもんな。
ウェルもウェルで、子供扱いされたことにご立腹のようだ。
「彼女はウェル。名前は知ってるだろ?」
「ウェル? え? あの【学者】のウェル?」
「そう」
頷くウェルと俺の顔を交互に見るカプリス。
「うぇぇぇぇ!? あの知らない人はいない超有名人じゃん! あ、いつも情報ありがとうございました!」
「役に立った?」
「もちろん!」
「なら、よし」
カプリスの返答に深く頷くウェル。
「やっぱりマスターもウェルさんと知り合いだったんだねー!」
「ウェルでいい」
「ん、了解っ!」
「一回ウェルから護衛を依頼されてな。フレンドになったわけだ」
「あれ、助かった」
「世界樹はさすがにウェルじゃソロで潜れないからな」
「致し方なし」
ダンジョンである【世界樹】は高レベルのプレイヤーでも、ソロで潜るのはキツい。
ただでさえ魔物が強いのに、ダンジョンの壁である世界樹の幹から魔物が現れて奇襲されたりするため、ソロで潜るとすぐに囲まれてお釈迦になる。
一応うちのギルメンはボス部屋である最上階までソロで潜れるようにはしたけどな。
ポーションがぶ飲みじゃないと無理と皆に言われたわ。
「いや、世界樹を単独無傷で攻略するマスターがおかしいだけなのでは?」
「ん、規格外」
いや、魔物の現れるタイミングとか全部覚えれば無傷攻略は余裕だろうが。
「守りながら無傷はおかしい」
「え!? もしかして、護衛の時ウェルちゃんを無傷かつ自分も無傷で攻略したの!?」
「そう」
「さすがにそれはキモいっ!」
キモいはさすがに傷つくぞ?
「とりあえず、昔の話は後にして、ウェルからルーセントの異常の原因について教えて貰ったから、確認してくる」
「場所は?」
「西の山だ」
「パスっ! 寒いの嫌っ!」
「そうか。まぁ、今回は確認だけだからな。原因がわかったら一度帰ってくる」
「了解! ギルちゃん達とぬくぬくしながらお留守番してるね!」
「あいよ。行くか」
「うい」
「ってらー!」
カプリスに見送られ宿をあとにした。
宿から出て、一度ウェルの小屋の前に戻った俺達は山へと向かうことにした。
俺は死神の足甲を装備する。
そしてウェルを小脇に抱えた。
「?」
一切抵抗しない彼女だが、小脇に抱えられたことを不思議に思い首をかしげ俺を見上げる。
お腹を抱えているためだらーんっとなった猫みたいでなんか和む。
「飛ぶぞ?」
「!」
一言伝えて浮かぶと、彼女はビクッと驚き下を見下げる。
「落とさないから安心しろ」
「うい」
そう返事すると強ばった体から力が抜け、まただらーんっとなった。
それを確認した俺は西の山へと向けて飛ぶ。
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