エリアルの滝②
きっちり焼けた魚を皆で食べていると、気持ちな良い風が吹き、俺たちの間を行き来する。
「これは・・・」
この現象には覚えがある。
「精霊達が集まってきましたね」
と、リーリス。
そう、この現象は精霊が集まってきたため起きるもの。
ゲームの時も不自然にキャラの服や髪が揺れるので、実際だったらこんな感じになっていただろう。
「ってことは、あのイベントも発生するのかな?」
「どうだろ? ゲームじゃねぇしな」
カプリスの言うイベントとは、このエリアルの滝でのみ起きるイベントで、今のように精霊達が集まってくることにより風の精霊王が姿を現すと言うもの。
稀にしか起きないイベントなので、ここで張っているプレイヤーも結構な人数がいた。
なぜ、精霊王に会いたいプレイヤーがいるのか。
それはその姿が美男美女と言うのもあるが、ほとんどプレイヤーは精霊王から貰える加護が目当てである。
精霊王に会うことができると、各属性の【精霊の加護】を受けとることができる。
【精霊の加護】は、その属性の魔術攻撃にプラス補正がかかるパッシブスキルで、武器に付いている属性の効果も上がるため、皆欲しがっていた。
俺達【白】のメンバーも各人の得意とする属性の加護を受け取っていたりするが、かなり時間がかかったのは言うまでもない。
因みに、カプリスは風系統の武器や防具を好んで使っているので、風の精霊王ヴィエントの加護を貰っている。
全属性を扱う俺やレグルスは七属性の精霊王と会っているがな。
『ふふ。まさか、こうしてプレイヤーであるあなた方に会うことができるとは思いませんでした』
その言葉と共に彼女は姿を現した。
緑の長髪を風になびかせ、白い衣を身に纏う美女。彼女は宙に浮かんでおり、柔和な笑顔を浮かべていた。
ん? プレイヤー?
「・・・俺達をプレイヤーと認識しているのか?」
『ええ。あなた方のことは原初の神より聞いています』
ここに来て原初の神が絡んできたか。
『この世界が、あなた方の世界では娯楽の一つだったということも聞いております』
「それを聞いて、どう思った?」
俺は自然とそう聞いた。
精霊王は世界を見守っている。そんな設定があり、おそらくこの世界でもそう言う役割をもっているのだろう。
そして、自我が芽生え始めた頃にも見ていたはず。
俺達プレイヤーが、どんな風に遊んでいたのかも。
NPCを問答無用で殺す奴もいた。
精霊からドロップするアイテム狙いで精霊狩りをする奴もいた。
プレイヤー同士で殺し合いをしていた。
殺傷を楽しむ輩を見て、娯楽として殺傷をしていた俺達プレイヤーを見て、彼女達精霊王はどう思っていたのか。それを聞きたい。
『いえ、どうも思いませんよ。あなた方の娯楽であろうとも、それがきっかけでこの世界が産まれてくれたことにより、私達はこうして生を受けることをできたのですから、嫌悪や憎悪などと言うものは特にありません』
「そうか」
ヴィエントの言葉に俺は安心し頷く。
俺達プレイヤーの行動に不信感や嫌悪感を抱かれていたらと、少し不安だったのだ。
「聞きたいことがある」
『原初の神。についてですね?』
「ああ」
彼女の返答により、やはりこの世界はゲームが元にできた世界だとわかる。
となると、ゲーム内では登場しなかったもう一つのオリジン。原初の神がこの世界を現実化させたとみて間違いないだろう。
ならば、その原初の神にならば、俺達プレイヤーやカプリス達勇者を元の世界に戻すことができるのではないだろうか?
「原初の神はどこにいる?」
『・・・彼女には会えません』
「なぜ?」
『もう、いないからです』
いない?
『彼女はとある三人の女神により葬られました』
あの三人か。
『彼女は不死なので、死ぬことはないのですが、三人の女神は彼女の力を五つに分けて世界に落とし、力を無くした彼女を殺したのです。
そして、今この世界は三人の女神の娯楽として使われております』
三女神は、ゲームの時の俺達同様、現実となったこの世界で遊んでいるのか。
「プレイヤー達が呼ばれた理由は?」
『五つに別れた原初の神の力を抹消するためです。その為、この世界に詳しいプレイヤー達を呼び戻したのです』
俺達に後始末させようって腹だったのか。
『レグルスとノア。あなた方二人以外は、ですが』
「俺とレグルス以外?」
『あなたは少し時間がかかりましたけどね』
どう言うこっちゃ?
ピコン
caprice:うち達が勇者として呼ばれた意味は?wwwwwwって聞いてwwwwwwwww
今はそれどころじゃないわ。ボケ。
お読みいただきありがとうございます。




