フリューゲルの里③
翌日。
今日は見送りのあと片づけをし、その後は里を挙げての宴を開催することになった。
昨日の今日だが、こうでもしないと気分も晴れないだろうな。
そんなわけで、俺は何故かカプリスとともに調理係となった。いや、なぜ?
カプリスは何やらご機嫌な様子。こう言ったらアレだが、一応俺たちは森を救った側である。なのにこうして調理係として調理しているのだ。
なぜ?
「さすがの手際ですね! レグルスさんの言う通りです!」
犯人が誰だかわかったので、後で材料代請求しておこう。
「そんなわけで今日は手持ちの高級食材を使ってやろう」
ピコン
caprice:どんなわけだwwwwww
金はいらないから請求するのは使った食材をそのままだな。うむ。
「俺たちが調理係に選ばれた理由がレグルスだったわけよ」
ピコン
caprice:把握wwww
「うちとしてはこうしてマスターの隣で料理できるからいいけどねー」
「それで機嫌がいいわけか」
「うん!」
笑顔で頷くカプリス。
「お二人はお付き合いをしているのですか?」
俺たちの会話を聞いていたシャーロットが疑問をぶつけてくる。
「いや、付き合ってはないぞ」
いきなりの問いかけではあったが、その程度で恥ずかしがるような年でもないので普通に答えた。
「うちの方からは好きって言ってるんですけどねー。一向に返事をくれないんですよ。この人ー!」
「まあ! それはどうかと思いますよ? ノアさん」
「と、言われてもねー」
そもそも、年齢的にアウトでは?
相手は高校生なわけだし。
確かに俺としてもカプリスみたいな可愛い子に好意を向けられたら嬉しいが・・・。
「あ、今年齢とか高校生とかって考えたでしょ?」
「なぜバレたし」
「にしし! マスターの事は全部お見通しさー!」
「あーはいはい」
「軽く流さないでよー!」
「ふふふ!」
俺たちのやり取りを見ていたシャーロットは口元に手をやり、小さく笑った。
「いえ、すみません。仲がいいなーって思いまして」
そんなこと言われるとは思わなかった俺達は、キョトンとしたあとお互いに顔を見合わせたあとシャーロットに視線を戻す。
「まぁ、仲は悪くないな」
「五年の付き合いだしねー」
「五年ですか?」
「うん。うちはサービス終了の五年前にマスター──ノアのギルドに入ったんだー。そこからの付き合いだねー」
そう、カプリスはサービス終了する五年前、丁度ユグドラシル・オンラインが五周年を迎えた年にうちのギルドへ来たのだ。
当時のカプリスはレベル2000越えたばかりの中堅に足を踏み入れようとしていたプレイヤーだった。
「ノアさんのギルドって言いますと、あの【白】ですよね? 人員募集してないのによく入れましたね」
「確かに募集はしてなかったな。あまり増えても管理とかめんどくさいことになりそうだし」
「確かに、レグルスさんを見てると大変そうですよね」
あそこはレグルスがいなかったら確実に崩壊するからなぁ。やべぇ奴ばっかりなのに統率が取れてるのはレグルスのカリスマ故だろうな。
「カプリスさんはどうやって【白】に入ったのですか?」
「んーっとねー。うちがメインクエスト進めてるときにPKに会ってね。集団にリンチされてたときにマスター達【白】のメンバーに助けられたんだー。んで、ダメ元でギルドに入れてください! って頼んだら二つ返事で入れてくれたんだよー」
確かオリジンバードが実装された当時で、ギルド総出で浮遊島を探してた時だな。
馬を殺されて、必死に抵抗してたカプリスを助けたんだ。
「二つ返事で、ですか?」
「そうそう! うちもびっくりしたよ! 頼んだらマスターが「いいぞ」って答えてくれてさー。他のメンバーは滅茶苦茶草生やしてたし。ドッキリかからかわれたのかと思ったもん!」
「いや、別に募集してないだけで入りたいって言った奴は入れてたからな?」
「うん。うちも入ってからそれ知ったよ」
「え? 言えば入れたんですか!?」
「まぁな」
何故か皆すぐ辞めてったけどな。
「いやー、入れても最初は全然楽しくないからねー。むしろ辛すぎて皆辞めてっちゃうんだよー」
「つ、辛い?」
「うん。うちのギルドの特性上高レベル帯がメインの狩り場になるからねー。最初やるのはレベリングからなんだよ。そして、そのレベリングの手伝いをするのがマスターなんだけど、それがまたキツくてキツくて。うちも辞めようかと思ったくらいだよ」
レベリングが大変なのは当たり前だろ。なぁに言ってんだ。
「そんなにですか?」
「まぁねー。自分より強い魔物の群れに一人放り出されて一、二時間狩り続けたりしたなー」
パーティーもいいけど、ユグドラシル・オンラインのシステム状、経験値アップ系のアイテム盛ってソロ狩りした方が効率いいからな。しょうがないのさ。
「えぇ・・・」
そこで引かないでくださいな。
「それをマスターが納得するレベルまでずっとだよ? ログインしたらレベリングレベリングレベリング! もう、なんか学生なのに社畜にでもなった気分だったよー」
「それは・・・うわぁ」
いや、本気で引かないでくださいな。
俺だってちょっと傷付くぞ。
「まぁ、それを乗り越えたらすっごい楽しいギルドなんだけどね! ギルドメンバー皆で戦場荒らしまくったりとか! 楽しかったなー!」
イベントの時とかは暴れまくってたからなー。運営にも自重してくれって言われたくらいには。
最終的にギルメンが、他のギルドの助っ人で入ってギルメン同士で戦闘したりとかな。その度に周りへの被害が凄いことになってたけど。
いやぁ、良い思い出だな!
レベリングに付き合ってたノアの仕事はレベリングから逃がさないための監視です。
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