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死神さんののんびり異世界散歩  作者: 水無うるふ
フリューゲルの森編
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フリューゲルの里

「お見苦しいところお見せしました」

「いや、もういいのか?」

「ええ、いつまでも泣いていたら彼女に笑われてしまいますので」


 涙は収まっても、充血した目。

 シャーロットは無理に笑顔を作っているのか、少し笑顔に影があった。


「彼女は私の実の妹なのです」

「実の・・・。と言うことは──」

「ええ、彼女もプレイヤーの一人です」

「・・・」


 思わず、言葉に詰まる。

 プレイヤーの一人がこうして命を落としたのだ。今まで楽しんでここまで来た俺はどう言葉をかけていいか分からなかった。

 こうして、同郷の者の死に立ち会う事になるとは思わなかったのもある。

 そうだよ。そうだよな。

 この世界はゲームじゃない。死した者は生き返らない。だが、戦わなければ生きていけないのだ。

 いつ命を落とすかもわからない。これからはまずは生き残ることが最優先か。

 カプリスもレベルは高いとはいえ、オリジン級と戦闘となれば───否、考えるのはやめよう。暗い思考を続けると碌な事にならない。

 こう思考巡らせている時にこの世界の住人──元NPC達の事を考えない限り俺も腐っているな。


 ふと、再び思考の波に飲まれようとした俺の背中に誰かの手が触れた。

 背に触れた手の持ち主は、いつの間にか横に立っていたカプリスだった。


「・・・カプリス」

「考えすぎないで」


 彼女の名前が口から漏れると、彼女は一言そう言ってくれた。


「ありがとう」


 さっき、暗い思考は碌な事にならないって言ったのに俺は馬鹿かよ。


「里に行こう。シェロさんも皆さんに会いたいだろう」

「そうですね。こちらへ」


 シャーロットはシェロを抱え上げると里へ向かって歩き出した。




 里に着くと、先に来ていた人達に歓迎された。

 里の人々はシャーロットの抱くシェロに気が付くと、彼らはシェロとシャーロットに近寄り涙を浮かべながら感謝と謝罪をし始めた。


「すまない。すまないシェロ。私達がシェロの言っていることに耳を貸していれば・・・」


 と、一人の年配の女性。

 どういうことだろうか?


「今更謝ったところで遅いのです。今は、彼女を、シェロを見送りましょう。火葬の準備を」

「えぇ」


 里の人々は、シェロを火葬するため各々準備を始める。

 設定では、確かホワイトウッドで作った棺に死者を寝かせ、棺の周りに四角形に組んだホワイトウッドに火を点けて燃やす。そんな感じだったところだ。


「シャーロット嬢。シェロをこちらに」

「ありがとう。ジットさん」


 初老の男性──ジットが持ってきた棺にシェロを寝かせるシャーロット。


「場所はいつも通り月の丘でいいか?」

「ええ、お願いします」

「了解だ」

「手伝おう」

「ありがとよ兄ちゃん」

「気にするな。カプリス達も自由にしててくれ」

「りょーかーい」


 カプリス達には適当に指示しといて、俺はジットと共に月の丘と呼ばれる丘まで棺を運んだ。

 見晴らしのいいこの場所は里全体を見渡すことができる。不謹慎だが、この場所で里全体を収めなスクショを撮る。


「今日の夜には間に合うだろうな」

「そうか。この調子なら夜も晴れるだろう。それに今日は満月だ」

「そいつぁいい」


 ジットとしばらくその場で話し、後から来た枠組みを作る人らと合流して火葬台を作る。

 火葬台が出来上がり、その上に棺を乗せ、次は周りのを枠組みを作る。

 火葬台の下に着火剤を撒き、薪を乗せ、棺を囲うように枠組みを設置したら完成だ。

 完成した頃には日は落ち、東の空から青白く真ん丸な月が顔を覗かせていた。


「皆を集めてください」


 シャーロットの言葉に近くにいた女性が頷き、里の方へ走っていく。

 暫くすると、里の方にいた住人達がこちらへ集まりだした。彼らは火葬台を囲うように集まる。


「これより、我らが家族の見送りを行う。火を」


 シャーロットの言葉に、松明を持った女性が前へ出てくる。

 彼女は枠組みの隙間から松明を入れて、着火剤に着火させる。

 優しい小さな火種は徐々に広がっていき、棺を覆うように天高く火柱を立て始めた。


「我らが家族に祈りを」


 シャーロットは跪き、胸の前へ手を組んで祈りを捧げる。

 里の人々もそれに倣うように祈りを捧げる。

 辺りには木が焼け、火花が弾ける音だけが響き渡る。否、それ以外にも啜り泣くような小さな泣き声も混じっていた。


「ん?」


 そんな静かな光景を後ろで見守っていると、あることに気がついた。

 風も吹いていないのに木々がざわめき始め、ホワイトウッドの葉から白い小さな光がこぼれ落ちる。それはふわふわと棺の方へ向かうと、火の周りをくるくるとまわりだす。光は徐々に数を増やし、最後には光の輪となった。


「精霊か」


 【意思を持つ魔力】とも言われる魔法生物。彼らはどんな場所にも存在していて、彼らが居なくなった場所は生物すら住むことが出来ないと言われている。


 精霊の輪は楽しそうにくるくると回っていて、その中心にまた一つ白い少し大きめな光が下から現れた。

 シェロの魂だろうか?


 その少し大きめな光は、精霊の輪に導かれるように空へと昇っていった。

 これでシェロは天に向かうことが出来たのだろう。

 どうか安らかに。そして、彼女の来世に幸多からんことを。


 その後、見送りは火が燃え尽きるまで行われた。

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