クリフォト③
襲い来る枝を耳を抑えつつバックステップで回避。
「っ~~! 耳キーンなったぞクソ!」
まだほんの少し耳鳴りが残るが、これくらいだったら気にするほどでもなさそうだ。
「さて、と」
相手に視線を向ける。
本体であるフリューゲルを中心に枝がうねうねと蠢いていた。炎で焼くか?
いや、やめておこう。生き残ることはできても、そんなので勝っても嬉しくないし、楽しくない。
「まあ、いつも通りやりますか」
大鎌をくるりと回して構える。
「"エンチャント・フレイム"」
大鎌の刃に炎のエンチャントを施す。
「Kiyaaaaaaaaaa!!」
再度咆哮。今回は距離があるためダメージは皆無。うるさいけども。
咆哮とともに襲い来る枝を切り落とし上へ跳ぶ。
切ったところで即時再生されていくので、本体を叩くべきか。
「"Descarga electrica"」
雷系統の範囲魔術を行使して、本体を守ろうとする枝と、同時に攻撃してくる枝を破壊する。
本体まで近づき、横蹴りで吹き飛ばして、背中から伸びる木を切断した。
それにより蠢く枝達は制止した。
俺は急いで吹き飛んだフリューゲルの元へ近寄る。抱き起こして安否の確認をとる。が、やはり最初の見立て通り手遅れだった。
樹から剥がされたことにより、瑞々しかった肌はどんどん枯れ果てていく。
そんな彼女を部屋の隅へ寝かせる。
「さすがに、これで終わりじゃないよな」
彼女を隅に寝かせたのは、次の戦闘の巻き添えにならないようにだ。
振り返ると、そこには制止ししていた枝達が再び蠢き出していた。奴等は左右に伸びると、彼女を捕らえていた所が光だし、何かが奥から出てくる。
それはいつしか戦った、どでかい鮫の腹の中にあった白い玉。それに良く似た玉だった。
その玉をコアに広がった枝が一斉に集まり出す。
どんどん大きくなっていくそれは、徐々に人形へと変化していき、最終的には巨大なエントとなった。
「"アナライズ"」
余っていたスキルポイントを使って取っておいた魔術を使い、ステータスを確認。うん、やっぱりあると便利だな!
名前以外の項目が全て文字化けしていて詳細はわからない。
そして、唯一文字化けしていなかった名前は【クリフォトの化身】。
ってことはだ。この巨木は邪神の樹、悪魔の樹として知られるクリフォトだったってわけか。
まぁ、いい。なんにしても倒すだけだ。
「ッ!?」
足に力を入れて飛び出そうとした直前、目の前に無数の枝が迫り、避けきれず吹き飛ばされてしまった。
「チッ、油断し──!?」
体勢を立て直そうとした所で、横からの追撃。ギリギリで鎌を盾に防御が出来た。
単純な攻撃だが、速さが段違いだ。
床へと叩きつけられた所に、今度は化身本体の攻撃。倒れる俺へと振り上げられた拳が振り下ろされた。
「っ!」
その拳を、手首の部分を蹴りあげて軌道を反らして回避。直ぐ様立ち上がって距離を取るが、下がったら下がったで壁やら床やら、至るところから攻撃が来る。
ゲームだったらクソシステム、無理ゲーって運営に文句が飛びそうだ。
まあ、そもそもゲームじゃこんな動きは出来ないんだけどさ。
「っ・・・やりにきぃ・・・」
強個体を複数対同時に相手しているようなやりにくさ。
一度大鎌を振り回し、周囲の枝を全て切り落とす。落としたと同時に前へ踏み込み、懐へと向かう。横から来た枝を踏み台にして化身の背後へと上から回り込んだ。
背後から、化身が振り向く前に接近して斬りかかる。が、刃が触れる直前、化身の背中から枝がトゲのように突き出てきた。
刃が弾かれたところで瞬時に後退して攻撃を回避。周囲からも攻撃が来るが、上に跳んで回避し雷系統の魔術で破壊する。
「本体の防御も完璧か。だったら、まずは周りのを止めるか。"Descarga"」
雷系統の魔術の一つで、術者から放電して周りに麻痺の効果と微量のダメージを与えることが出来る魔術だ。樹木に対しての麻痺効果は無いが、微量のダメージの方は入るだろう。
魔力値がカンストしてる俺やレグルスだと、この微量のダメージが無視できるようなレベルじゃなくなる。
これにより、枝達も下手に手を出せなくなった。
最初からこうすりゃ良かったな。
「さて」
あとは本体をたたっ切るだけだ。
踏み込んで前へ。
化身から伸びる腕をかわして切り落とす。すぐに再生するが気にせず懐へ。
正面からの接近に身体の全面から枝のトゲを無数に生やしてきた。それを空いた左手に大盾を装備してチャージする。
伸びてきた枝を折りながら懐へと入り込んだ。
即座に大盾を解除して股下から切り上げる。
「はぁ」
構えを解いて左右に倒れるのを確認して一息。
「ん?」
上から真っ二つになった白い玉が落ちてきた。
「やっぱり、原初神の力片か」
ピコン
caprice:ぐっじょぶマスターwww略してぐっじょマwwwwwwwww
どうやらクリフォトの化身を倒したことで、外でも変化があったようだ。
「出るか」
フリューゲルの女性を抱き上げ、壁を切ってから蹴飛ばして外への道を作った。
ひとっ飛びしてカプリス達と合流する。
「お帰り~」
「ただいま。おー、枯れてってるなぁ」
クリフォトの方を見ると、白く立派だったクリフォトはどんどん萎れていく。
最終的には白さに曇りがかかったように美しさを失っていた。
葉もはらはらと舞い落ち、敵だったがどこか寂しさを感じる光景だ。




