素晴らしきかな草原
「へへ! 強そうな装備してんじゃねーか!」
「俺達に寄越せよー!」
「お頭に似合いそうだ」
とか、なんとか言いながら俺を囲う世紀末な男達。
盗賊か何かだろう。
「この装備の良さがわかるとは・・・」
似合いそうっても顔見えなくなりそうだけどな。
威厳がある人なら似合うのかもしれない。
・・・つまり、威厳のない俺は似合わないと言うことだな。はぁ。
「だが、貴様らに渡せるほど安いものじゃない。残念だが引き下がってくれ」
これで引き下がってくれるなら万々歳だが、そう上手くいかないのがファンタジー。
「引き下がるだぁ? お前何言ってんの?」
「俺らに出会ったからには金目のもん全て置いてくか死ぬしかないんだよ」
「まぁ、全て置いても生かすとは言ってないけ──」
「へ?」
最後まで言わせる前に首を刈り落とす。
赤い飛沫を飛ばしながら倒れる仲間に、何が起こったのかわからないといった顔をして横を見る男達。
その顔には真っ赤な血糊がベットリと付着していた。
「引き下がってはくれないだろうか?」
再度問う。
「は、はは! っざけやがって。仲間の仇だ! 全員でかかれ!」
「「「「おう!!」」」」
怒らせてしまったらしい。
四方から浴びせられる斬撃打撃魔術。
レベル差のせいで、どれもこれもダメージが1しか入らない。
そのダメージもHP回復Xで即時回復されるため全くもって意味がない。
レベル制のMMOはこれだから怖い。
レベルが上のプレイヤーキラーに出会ったらまず勝てないからな。だから俺はPKされないようにレベルを上げ続けたわけだ。
と、気がついたら俺を攻撃していた賊達はスタミナ切れを起こしていた。
スタミナ管理は大切に!
そんなんじゃレイド戦とかで足手まといになっちまうぞ?
「はぁ、はぁ、クソッ! ずらかるぞてめーら!」
賊達は引き下がってくれました。
なんだ、最初から無抵抗でやられてればよかったのか。
「"ファイア"」
残された死体を火の魔術で葬る。
ふむ、人を殺したのに何も感じないのはこの身体のお陰だろうか?
この身体は殺し慣れているからな。
何回敵NPCを殺したかわからない。
何回PKKしたかわからない。
この十年で数えきれないほど殺してるので、この身体に入った俺には精神に来ないのかもしれないな。
だって殺しなれてるから。
灰になり風共に消えたのを確認した俺は再び歩み始めた。
暫く歩くと、やっと森を抜けた。
「おお、草原か」
抜けたところは森に囲まれている草原。
爽やかな風にざわざわと音を立てながら揺れる草。
開けた土地なので空が広く見える。
なるほど、これが気持ちのいい草原と言う奴か。
真ん中にポツンと一本デカい木が生えてるので、そこで野宿しよう。
近くで見るとその大きさがよくわかる。
「でもこれだと星が見えないな」
ってなわけで、少し離れたところに簡易テントを設置。
ゲームではこのテントを張ったところからリスポーンできる仕組みだった。
滅多に使わなかったけどね。
さて、夕方だし、のんびり夕飯の準備でもしますかね。
「今日のディナーは水竜の焼き肉だ!」
さっそく取りかかろうではないか。
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