皇女とオリジン
首都へ来て早くも三日が経った。
ちょっとした観光も兼ねた休暇だな。
この休暇の間にレグルスから偽装カードが届いたので、これからはこれを使うつもりである。もちろんカプリスのもある。
宗教国家であるためか、肉は鳥のみで、牛や豚などの肉を使った料理はこの国にはなかった。基本的に野菜や魚を中心とした食事形体で、鶏肉も食べるのは稀だそう。
そして今日は何やら催しが行われるらしい。
なんでも帰って来た皇女様が、オリジンヒューマンに挨拶に行くとかなんとかで、その見送り行事みたいな事を聞いた。
この国ではオリジンヒューマンは敵ではないようだ。
通りで他人の話を耳にしながら組合へと向かう。
「オリジンヒューマンと人間が仲良いってなんか不思議だね」
「まぁ、オリジンって言っても、端から見ればただの人間だからな。仲良くはできるだろうよ。表面上は」
「表面上は、かぁ」
「国とオリジンとで不可侵でも結んでるんじゃないかな。・・・今回の挨拶に行くってのは謎だけど」
『正直私達からしたら殺しに来る傍迷惑な存在なんですけどね』
『一番殺しに来たのは主だがな』
「悪かったな」
『まぁ、過ぎたことだ。今生きてればそれでいい』
『ですね』
割りと根に持ってんのか。
話ながら組合の扉を開けると、最近慣れつつある静けさの中に異物が紛れ込んでいた。
その異物は三人。二人は純白の甲冑に青いマントを身につけた騎士。その二人の間にいる純白のローブで身を隠す小柄な人物だ。
騎士の二人は、一人は帯剣しており、背には大きな盾を背負っており、守備が強そうだ。もう一人はランスを右手に携え、背には同じく大盾を背負っていて、こちらも守備重視のようだ。守りに徹している辺り、小柄な人物は相当重要な人物なのだろう。
「彼らです」
その小柄な人物が小さく隣の騎士に言う。
彼? 彼女? は聞こえないように言ったのだろうが、こちとら耳がいい。丸聞こえだぞ。
「貴殿が冒険者であるノワールでよろしいか?」
帯剣している方の騎士が俺に話しかけてくる。
ん? ノワール?
おやぁ?
ピコン
caprice:ノワールですってwwwwww・・・んぅ?
カプリスも不思議に思ったらしい。
俺がノワールだと知っているのはフィルズの組合員と、首都の組合員、あとアルフだけだ。
つまりは───
「ああ、話をするなら場所を移そう」
「承知した。組合の会議室を借りよう」
騎士は頷くと、もう一人の騎士へ目配せした。
しばらくすると、ランスを持っている方の騎士がこちらにいる騎士へ目配せする。
「許可がおりた。こちらへ」
「ああ」
騎士達に付いて会議室へと移動した。
騎士の一人は扉の前で待機するようだ。
窓側に騎士達二人が座り、俺たちは対面するように座る。
『ふむ、あの商人と同じ匂いだな』
はい、誰だかわかりました。いや、まぁあの門での対応からお偉いさんってのは知ってたけども。
「さて、まずは顔を見せてくれ」
いつまでもローブで顔を隠す彼? 彼女? に言う。
すると、横に座っている騎士が立ち上がり、ランスを俺に向けてきた。
「態度を改めよ。この方は───」
「───やめなさい。貴方では彼に、いえ彼等には敵いませんよ」
「・・・」
彼? 彼女? の言葉に武器を下ろし座り直す騎士。
レベルがいくつかはわからないが、まずランスの方が壊れるだろうな。
「すみません。ノワール様。そして、先日はありがとうございました」
そう言いながらフードをとる彼───否、彼女は先日護衛したアルフだった。
うん、まぁ・・・うん。
彼女は、護衛中の時とは違い髪が長くなっており、少し化粧も施してあるのか、とても綺麗になっていた。
「この姿では初めましてですね。私の名前はアルフィード・フィン・エイブレイル。護衛中と同じくアルフとお呼びください」
立ち上がり、ローブをつまみ軽くお辞儀をしながら自己紹介をするアルフ──もといアルフィード姫殿下。道理で女の子っぽいわけだよな。だって女の子なんだもの。
「改めてよろしく。口調は正さないぞ」
「ええ、構いません」
俺の言葉にピクリと反応する騎士だったが、にこやかに了承したアルフに何も言うことができずにいた。
ピコン
caprice:帰って来た皇女様ってのがアルフだったわけねwwwwww髪型でだいぶ印象が変わるwwwwww
「それで? わざわざ組合で待っていたってことは、俺達に依頼したいことがあるんだろ? だいたい予想は付くが」
「ええ、私を原初の神殿──オリジンヒューマンの所まで護衛していただけませんか?」
ほーら来た。
予想的中ですわー。
話の流れ的にそれ以外考えられないんだけどね。




