湖の化け物
崖を降りて、まず向かったのは上から見えた湖だ。
そこそこの規模があり、自然豊かなこの環境での湖と言うのは地球とは違うに違いないと、勝手に決めつけてやって来たのだ。
「うむ」
やはりと言うかなんと言うか、まぁ絶景だわな。
青く透き通った水に写し出される木々。
水の中を泳ぐ魚達の鱗が太陽の光を反射して星のようにきらびやかだ。
そして、湖の中心辺りだけ深いのか、黒く見える辺りもポイントだな。
水底には何が沈んでいるのだろうか?
もしかしたら、宝物が沈んでいるのかもしれない。
もしかしたら、遺跡があるのかもしれない。
もしかしたら、まだ見ぬ生き物がいるのかもしれない。
そんなロマンがあそこにはあるのだ。
「まぁ──」
俺が言葉を紡ごうとした瞬間、水柱が立ち上った。
「ロマンの欠片もないただの水竜がいるだけなのだがな」
現れたの深い青色の鱗を纏った竜。
まだ見ぬ生き物の部類に入るが、すでに#知っている__・__#のでノーカウントだ。
「これで現れたのが俺の知らない生き物だっならなぁ」
と、水竜のブレスをモロに喰らいながら残念がる。
「水浴びは好きだがかけすぎだぞ?」
攻撃モーションに入った瞬間に現れた大鎌を、水竜の首めがけて投げる。
鎌はブーメランのように回転し、水竜の首を刈り取った。
レベルの差って凄いな。
あんな無抵抗に攻撃が入るとは思わなかったわ。
「って、ああああああああッ!?」
水竜の血で湖が真っ赤に・・・。
「やっちまった・・・」
とりあえず、空中浮遊で死骸に近寄り水竜を解体しようとしたところ、なぜかそのままアイテムボックスに入った。
今までは解体してアイテム化させないといけなかったのに、変なところで便利だな。
まあ、それはどうでもいい。
「浄化せねば」
こう言う場合はどうすればいいのだろうか?
対アンデットの浄化魔術はあるけれど、それで行けるのか?
まぁ、物は試しだ。
「"クロスドライブ"」
魔術名を唱えると、俺を中心に白きオーラが放射され辺りを満たしていく。
この魔術は墓場などの限られた場所で使うことにより強力な効果を発揮する魔術だ。
邪気、瘴気を浄化し、聖属性の効果を強める。ホントに対アンデット用の魔術なのだ。
「む、やっぱり無理か」
まぁそうだよな。
瘴気を浄化するのであって、水を浄化できるわけないよな。
「はあ、せっかくの絶景が・・・」
次来たときには戻っていると思うが、水竜もリポップしてるんだろうな。
次来るときまでに水を汚さない倒しかたを考えておこう。
さて、次はどこに行こうか?
「王都が向こうだが、王都方面に何か名所あったか?」
まぁ、探しながら移動しよう。サイトにないだけで知られざる絶景ポイントが見つかるかもしれないし。
それに早めに村につかないと野宿になるしな。
・・・いや、野宿しよう。排気がないこの世界の夜空を見てみたい。
そうとなればいい場所を探さなければな。
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