鮫龍②
さて、食われた俺だったが生きてます。
まぁサメがデカ過ぎるが故に丸飲みされたのが幸いしたな。
現在は胃の中に浮かんでいるデカい木片の上に座っているのだが、動けません。いや、飛べば動けるんだけども。
この木片が浮かんでいる水なのだが、胃にいるって事でお察しだと思うが、胃酸である。
運良く木片の上に着地できたから良かったものの、さすがの俺も溶けるんじゃなかろうか?
試す気はないのだけれど。
「内部からの攻撃して伸してもいいんだけど。うーむ」
なんか面白いもの見つかるかもだし、少し先に進んでみんべ。
念のために全身死神シリーズに代えてふわふわっと浮かんで先に進む。
と言うか、奥に進むって肛門に向かうってことになるのか。
燃やそ。
馬鹿みたいに広い胃をふわふわと浮かんで移動していると、何やら肉壁に光る何かが引っ付いているのを発見した。
ゆたーりと近付いていくと、それは白い玉だった。
バチッ!
「いでっ!」
触ろうと手を伸ばしたところ、何やら不思議な力で弾かれてしまった。なんだこれは。
だな、大事に守ってる所を見ると重要な何かと見ていいだろう。多分。きっと。
「敵の腹の中にあるものだし、ぶっ壊しちまうか。てゐ!」
鎌の先っちょを玉に向けて振り下ろす。
また弾かれそうになるが、力が働くのを知っているのだから今回は弾かれない。と言うか、強化の魔術を重ねがけしたらその結界みたいな物ごと玉を真っ二つに出来た。
「っ!?」
直後、頭痛が襲ってきた。
激しい痛みと共に脳内に映し出される断片的な映像。
楽しそうに笑う三人の女。
『まさか、あの女神があそこまで抵抗してくるとは思わなかったわね』
『だよねだよね! もう、この世界は私達の物なのに!』
『まぁ、消滅してしまった彼女では抵抗しようがありませんけどね』
『あとは何も知らないプレイヤー達に彼女の残滓を掃除してもらえば完璧ねっ!』
『『『あはははははははは!』』』
下品な笑い声を最後に映像は途切れた。
「・・・一体、なんだってんだ」
三人の女の中の内一人の声には聞き覚えがあった。
天空ダンジョンで聞いたあの女神の声だ。
もう、私達のもの? だとすると侵略者ってのはむしろ───
「めんどくさいことに巻き込まれたな・・・」
真っ二つになり、効力が切れた玉を拾い、アイテムボックスに入れてアイテム名を確認。
「原初神の力片・・・ねぇ」
名前からするに最初の神。
この世界が#世界として成り立った時に生まれた神様って所だろうか?
このアイテムがこのサメの腹の中に寄生してる辺り、これも抵抗ってやつにはいるのかねぇ・・・。
となると、先に聞いた情報が怪しくなる。まぁ、元より胡散臭くは思っていたけどな。時間がないとか、話を濁したりとかな。
とりあえず、ここから出てカプリスと相談するとしよう。
あの女神どもが怪しくなった手前こいつを殺すのは若干躊躇われるが、下手に敵対的行動に出て目ぇ付けられてもまた面倒だしな。
確実的な証拠がない限りはこちらから手を出すのはやめておこう。
「"デッドポイズン"」
毒系統魔術の中でも、即死級の魔術を行使する。
掌から紫色のドロッとした液体が胃酸に滴り落ちる。すると、落ちた液体は胃酸を侵食していく。数分たたない内に紫色で満たされると、地震が発生する。まぁ毒に侵されたサメが大暴れしてるだけなんだけども。
「うーん、やっぱ効果が強いな」
数分もしない内に静かになった体内で俺は呟く。
ゲームならば、じわじわとHPが減るだけでここまでの即効性はなかった。
他にも首を切り取るとか出来なかったからなぁ。その辺リアルなんだなーと思ったり思わなかったり。
「出よう」
大鎌でスパッと天井を切り裂いて外に出る。
切り裂いた際に空が見えたので、死んで浮かんでいるのだろう。
「っと、やべぇ。毒消さなきゃ」
毒で海が死ぬとこだったわ。
魔術を切って毒の効果を消し去った俺は、サメをアイテムボックスで回収して船の方へ戻ることにした。
もちろん装備は元に戻してな。
「戻ってきたぞ!!」
「無事だったか!?」
戻ってきた俺に対し、乗船していた人達が出迎えてくれた。
「あの化け物は?」
「なんとか倒せたな」
「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」」」」」」
倒した宣言に歓声が上がる。
命の恩人だ。もうダメかと思ってた。助かった~。等と安心し、俺を称える声が耳にはいるが、やはりと言うかなんと言うか、あんな化け物を倒した俺を畏怖する声も多々聞こえた。
まぁ、こればっかりは仕様がない。
化け物を倒せる俺もまた化け物だからな。
『おかえりなさいませ。主』
『サメの肉は美味いのだろうか』
「おう。肉は知らん」
向こうからは近寄ってこないだろうし、放置して出迎えてくれたオリジンズと共にカプリスがいる部屋へと向かった。
うーむ、人混みはやはり嫌いだな。人酔いする。
ノブに手をかけようとしたところで、慌てて手を引っ込めてノックする。自室に帰るような気持ちで来たがカプリスとて女の子だ。ちゃんとマナーは守らねば。
『はーい』
返事と共に扉が開かれる。
「ただいま」
「おかえりマスター! どうぞ中へー」
俺だと認識したカプリスは可愛らしい笑顔を振り撒いて中へと招いてくれた。
中に入ってカプリスはベッドに座り、俺は椅子に座る。
さて、話をしよう。




