たこ焼き
勇者ご一行と別れたあと、海から程近いところにある宿をとった。
聞くと、近々エイブレイル神聖国の聖都で魔・武術大会が開かれるらしく、渡航者の数がいつもの倍以上で俺達がとった二部屋が最後だそうだ。
レン君達がこの港町にいる理由は、もしかしたらその魔・武術大会に用があるからなのかもしれない。
同じ船にならないことを祈っておこう。
「おー! ゲームからしてわかってたけど、透明度すごいね!」
宿をとった俺達は桟橋に来ていた。
まぁ、カプリスが来たいと言ったからなのだが。
「確かに、こりゃすごい」
この桟橋の下は少し深めなのだが、底が見えるほどの透明度を持っている。
海岸沿いで波が立っていると言うのに砂を巻き込んでいないので、深さもそこそこあるはずなんだがなぁ。
ゲームがそのまま反映されているのだから当たり前っちゃ当たり前だが・・・。
異世界すごい。ファンタジーすごいって言っとけばいいか。
ファンタジー万歳!
「こんな綺麗な海にも魔物がいるって信じられないよねー」
「だな。大陸移動の時は必ず襲ってくるからな」
自前の船を壊されたプレイヤーが何千人いたことか。
だからなのか、NPCの船はいつも混雑していた。
NPCの船は魔物に襲われることはないからな。
システム的にそうしないと成り立たないのだろうけど、詳しくは俺もよくわからない。
「そう言えば、マスターってガレオン船持ってたよね」
「持ってるけど、確かフランシールに置いたまんまだったはず」
「あぁ、海洋拠点にあるのかー。残念乗りたかったんだけどなぁ」
「鯨の所も行くことになるだろうし、その時に乗れるだろ」
「結構先じゃないですかー。やだー」
「我慢したまえ。それにここから出る船のほうが安全だろうしな」
「むぅ、ゲームと同じならねぇ」
あー、確かにな。
ここは現実だ。NPCだった船も今や生きた人間が操っている。襲われる可能性が0と断言はできないか。
「まぁ、そん時は軽く捻っとけばいいべ」
船守を軸に活動する冒険者もいるだろうし。
この海域相手に戦力としては申し分ないはずだ。
「うち、海上戦苦手」
「苦手でも負けることはないだろ」
「そーだけどさー」
『おい主! 何か来るぞ!』
桟橋にこしかけながら話してると、魚を取ろうと泳いでいたギルターが桟橋に上がってきてそう言う。
「魔物?」
『うむ、気配からして相当の大きさだ』
「ふむ」
この海域で大型の魔物って言ったら二匹しかいない。
アビスオクトパスとアサルトホエールだ。
アサルトホエールは沖の方、しかも彼らのテリトリーに行かないと出会うことはない。
なので、こちらに向かってきてるのは───
「アビスオクトパスかぁ。また微妙なやつが来たなー」
大きな波と水飛沫を飛ばしながらその巨躯を現した。
こんな巨体がどっから湧いたって話になるが、この辺りは少しでも沖に出ると一気に深くなっている。
崖と言っても良いくらいに極端な地形をしているため、奴はその崖を登ってきたのだろう。
「アビスオクトパスだあああああああああああああ!!」
いち早く気が付いた者が周りに危機を知らせるため大声で叫ぶ。
その声で逃げ出す人々。
奴が現れて数分後には海岸沿いに人はいなくなった。
「マスター」
「んー?」
誰もいなくなった桟橋で、アビスオクトパスがばったんばったん暴れる中、俺達は未だに座っておりのんびりしている。
後ろでお前らも逃げろー! と言う 声が聞こえたような気がする。
「アビスオクトパスって食べれるかな?」
「なんか、お前も食いしん坊キャラになりつつあるよなー。太るぞ」
「うち太らない体質だから平気」
「腹ん中に虫でもいんじゃね?」
栄養を横取りする寄生虫がいるって言う話をどっかで聞いたなー。
「親に心配されて検査したことあるけどいなかったよー」
「そうか。・・・多分、食えるべ」
毒ないし。
「「たこ焼き」」
「ははは!」
「にひひ!」
俺達は立ち上がる。
「あっちの砂浜に投げるから足切っといて」
「ういういー」
『食えるのか!? あれ、食えるのか!?』
「多分なー」
嬉しそうに尻尾をフリフリするギルターを一撫でして、足の装備だけ死神シリーズに代えて浮かんで、蛸のほうへ。
アビスオクトパスは俺に気がつくと、脚を伸ばして俺を叩き落とそうとしてきたので、その足を掴み、投げ飛ばす方向を確認したあと、背負い投げの要領で投げる。
俺のバカげたステータスだからこそ出来る芸当だ。
因みにアビスオクトパスのレベルは1500から2000で、この海域のボスみたいなもんだな。
初心者で最初に出会う超大型の魔物は大抵こいつだったりする。
このサイズはなかなかいないからな。
投げ飛ばした先ではカプリスがダガーを手に待っていた。
ドーンっと大きな音ともに砂ぼこりを撒き散らして砂浜に投げ上げられたアビスオクトパス。
これだけでも結構なダメージになったと思うが、そこへ追撃としてカプリスが八本ある足を輪切りにし始めた。
リーチの短いダガーに範囲拡大の付与魔術を使っているのだろう。スパスパッと切り裂いていく。
抵抗しようと足で攻撃するアビスオクトパスだったが、その足すらも降り下ろされた地点を予想され、すぐに輪切りになった。
「頭潰すか」
確か、眉間を刺せばいいんだったかな?
一般のより少し長めのロングソードを取り出して、眉間めがけて飛来する。
ズブッと嫌な感触と共に暴れていたアビスオクトパスが、徐々に弱まっていき、足のつけねら辺が白く変色していたので成功したのだろう。
さて・・・。
「おーい! 誰かこいつ使ってたこ焼き作ってくれる人いませんかー?」
と、呼び掛けてみると、避難していた人々が歓声を上げながら駆け寄ってきた。
ありがとうや、凄いな。と言った称賛の言葉を並べられる。
それより料理できる人はおらんのか。
「そいつの料理はあたしらに任せなっ!」
と、ありがたい言葉と共に現れたおば様達。
これはもしかして漁師飯と言うのが食べられるかもしれないな。
「お願いします」
「今日は町のみんなでタコパーティーしよーーーーーー!!!」
と、カプリスがタコの上で言うと、一瞬キョトンとした人たちだったが、意味を理解して大盛りがり。
一種の祭りと化した。
後で聞いた話なのだが、先のアビスオクトパスは年に二度位現れるらしく、暴れまくったあと何事もなかったように帰っていくそうだ。
来る度に船を破壊していくので、かなり迷惑していたらしい。
しかも、来るのはいつも同じやつだったので、今回討伐されたことで港町に平穏が訪れると漁師連に感謝された。
こちらとしては久々にたこ焼きを食べたかっただけなので、感謝される覚えはないのだが、まあいいか。
タコパ楽しかったです。




