ワールドチャット
うぇい
小遣い稼ぎを行った次の日。
魔物の事をレグルスに報告するために組合へとやって来た。
受けつけでレグルスに会えるか聞いたところ会えるとのことで、そのままレグルスの部屋へと向かった。
因みに、今回カプリスはギルターとフィズリールの散歩という名の狩りに出かけている。
今回はちょいと遠出しに行くと言っていたのですぐには帰ってきそうにない。
なので、今回はゆっくりと組合で過ごそうかと思っている。
部屋の扉をノックして、ノブに手をかける。
「入るぞー」
そう言いながらドアを開けて中に入る。
いつも通り書類仕事に追われるレグルス。と思いきや、今回はなんとすでにソファーに座って寛いでいた。
おい、仕事しろよ。
「休憩か?」
「まあな。適度な休憩は仕事の効率が上がるからな。無理したところでいい仕事が出来るわけない」
「ソースは?」
「地球にいたころの私だ」
「・・・なるほど」
確かに、疲れた状態での効率は酷いもんだな。
仕事は程々に、休憩は小まめに、これ大事。
「さて、今回は報告に来たんだ」
「ふむ、天空のダンジョンについてか」
「ああ」
いつも通り、相向かいに座る。
レグルスもいつも通りに紅茶を差し出してきた。
「報告として、まずはオリジンバードだが、テイムした」
「・・・またか」
「まただ。んで本題だが、今回もギルターの時と同じく、ダンジョンの最奥に部屋があって、そこで俺たちプレイヤーを呼んだと思われる人物と話した」
「ほぉ・・・続きを」
俺はレグルスにあの部屋で聞いた事を話した。
話を聞いたあと、レグラスは熟考し始め、その場に沈黙が訪れる。
眉間に皺まで寄せ始めたレグルスを眺めてても面白くないので、魔力で遊ぶことに。
魔術を使ってて思ったのは、魔力の使い方によって色々応用が利くことだ。
例えば、昨日使ったトラッキングレイのように貫通性を無くしたり、威力を落とす事だって出来るようになる。
要は、魔術に限ってだが、手加減が出来るようになった。
だが、まだ甘い部分があるので、しっかり殺さずが出来るように練習はしといて損はないだろう。
掌に火の玉系魔術を発現してその場に留める。
そのまま、火の玉に込められた魔力を操って形を変えたりしてみる。
狼や、鳥、人型やドラゴンの頭など色々。
ラノベとかで魔力操作の基本としてこういう修行をしているのをよく見るが、確かにこれは修行になるな。割と集中力がいる。
しばらく操作しながら遊んでいると、レグルスが熟考をやめて顔を上げた。
「まず、魔物の正体がわからないことにはどうしようもないが、ユグドラシル・オンラインに存在しなかった魔物を探せばいいのだろう?」
「ああ」
「ならば、情報くらいなら揃えることが可能だろうな」
「本当かっ!?」
熟考しすぎて居眠りしてたんじゃねーかと疑ってたが、そうでもないないらしい。
「カプリスからチャットを送られてきたあの日から、UIの事を少しばかり調べていたのだ」
「へぇ」
「既にノアは知っていると思うが、UIのほとんどの機能が生きたままだ」
そうだな。
スクショ機能すら生きてたしな。
「UIが生きてるとなんかあるのか?」
「ああ。目を向けるべきはチャット機能だ。個人チャットが生きてたので他のチャットも生きてるのは当たり前だろう?」
「まぁ、そうだな。・・・ん? ああ、そう言うことか」
「気づいたか」
「そう言えばそんな機能もあったな。普段使わないから忘れてたわ」
「ギルメン募集とかよく使うはずだがな」
「うちは募集かけてなかったからさ」
「なるほど。話を戻すが、要はワールドチャットを使って世界中にいるプレイヤー達へ呼び掛けるのだ」
「でも、ワールドチャットって確かチケットかなんか必要じゃなかったか?」
「大手ギルドをなめるなよ?」
持ってるのか。あの課金アイテムを。
全チャンネルにチャットを送れるワールドチャットだが、ただじゃない。チャンネルチャットは行動力を消費して送信できるのだが、ワールドチャットは十円課金で買える、チャットチケットが必要になる。
それなら現実はチャンネルが一つしか無いから、チャンネルチャットでよくね? と思うかもしれないが、別チャンネルから来た人もいろだろう。設定がそのままならもしかしたら届かない可能性もある。
より確実性を生むならばワールドチャット1択だ。
「さすが大手は違うな」
「やるぞ」
「ああ」
レグルスはUIを開いたのか空間を指で操作し始めた。
しばらく操作しているところを見ていると、視界の端にチャットが表示された。
黄緑色なのでワールドチャットなのだろうが、システム通りに#画面端__・__#に表示されるのリアル的に鬱陶しいな。
UIを開いてチャット欄を開く。
regulus:突然のワールドチャット失礼。私はギルド【Witchcraft】のマスターレグルスだ。今回チャットを送ったのは我々プレイヤーがこの世界に戻された理由だ―――
この文章から始まり、俺が伝えた内容を詳しく載せて特殊な魔物、変な魔物などの情報の共有を図りたいとの旨を伝えた。
「これで今いるプレイヤーには伝わっただろう」
「そうだな」
「あとは情報が来るのを待つだけだ。っと、フレンド申請が来た」
「フレンドのシステムも生きてるんだな」
フレンドリストはあとで確認しておこう。
もしかしたら、俺の知り合いが戻ってきているかもしれないしな。
「さて、俺は帰るわ」
「ああ。っとちょっと待て」
帰ろうと立ち上がると、レグルスは俺を呼び止めて仕事机へ向かい何やら袋を持って戻ってきた。
「陛下から報酬だ」
「ああ、昨日のか」
「・・・それから王国から出るなら一度王に報告しとけよ」
「まあ、そのつもりだよ。じゃあな」
「うむ」
一言交わして俺は組合を後にした。
さて、早くに切り上げちまったし、暇つぶしに近くのダンジョン攻略しよ。




