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式典

おはよ

 翌日。

 朝からざわざわと騒がしい外の音で目が覚めた。

 UIを開いて時計を確認すると8時を少し過ぎたところだ。

 いつもならここまでの喧騒は聞こえず、もう少しだけ惰眠を貪っている時間帯だ。

 カーテンを開いて外を見ると、ゾロゾロと城の方へ向かう人々で道が埋まっていた。

 祭りか何かあるのだろうか?

 二度寝する気も失せたので、部屋から出ることにした。

 ギルターは爆睡してるので放置。

 一階に降りてみると、食事の時間にも関わらず客が一人もいない。

 皆、外の騒ぎに参加しているのだろうな。


「あら、おはようございます」

「おはようシルファ。外が騒がしいが何かあったのか?」

「ええ、床に伏せていたクリスティー殿下が回復したからですよ」

「ああ、なるほど」


 昨日の件か。

 でも、回復したとはいえ、翌日にこの騒ぎとはなー。


「何やらクリスティー殿下の回復祝いを、王都民総出で祝うそうですよ。外の喧騒は、その前に行われるクリスティー殿下からお言葉を聞くためらしいです」

「へぇー」


 王都民総出でって、相当人気があるのか。

 だが、ここまで大々的だと普通に暗殺者とか出張ってくると思うけどなぁ。


「ふむ、ちょっと小遣い稼ぎでもしてくるか」

「ふふ、ノアならそう言うと思っていましたよ。はい、お弁当です。朝ごはんとして食べてくださいね」


 差し出された弁当箱を受けとる。


「ありがとう。行ってくる」

「いってらっしゃい」


 シルファはいい嫁さんになりそうだよなー。

 そんな事を考えながら宿を後にした。



 暗殺者相手には暗殺者で行こうとアサシン装備に変える。

 黒を基調とした服で、フード付きの黒いロングコートで全身をすっぽり覆っている。

 武器はダガー。カプリスと同じようにツインだ。

 サブ武器にはショートボウ。小さい弓だな。


「さて、と」


 アサシンのスキルである【クローク】を使用して屋根を伝って城の広場の方へ向かう。

 クロークは認識阻害のスキルで、相手の俺に対しての認識を阻害し、そこにいるのにいないと思わせることが出来るスキルである。

 透明化と違って、相手に認識されるようなことをすれば直ぐに解ける。例えば攻撃や大声をあげるとかだな。

 まぁ、透明化なんてスキルは無いんだが。


 広場に着いた俺は、サブ武器をワイヤーに変えて、まず一番高い建物である時計塔に登る。

 その場から時計塔に跳躍して、ワイヤーの範囲に入ったらワイヤーを伸ばす。

 引っ掛かったのを確認して、巻き上げ装置を起動する。

 一気に巻き上げられ、十秒もかからないうちに時計塔へ到着。

 窓まで移動して中に入る。

 時計塔に移動した理由は2つ。

 一番見晴らしがいいから、と同じ考えを持つ暗殺者を狩るためだ。

 クロークの効果で足音も消えているため、ボウガンを構えている暗殺者に近寄っても気づかれない。

 真後ろまで来たところで、羽交い締めにして首を絞めて落とす。

 逃げられないように縛り付け後ろに転がしておく。

 暗殺者が構えていた窓から外へ出て、時計塔の屋根の上へ移動する。

 サブを再びショートボウに切り替え、周りを見渡す。


「いたいた」


 路地から広場の方を伺う男を発見。

 先の暗殺者と同じようにボウガンを持っているのにも関わらず、通行人から怪しまれることなくその場にいるので、おそらく俺と同じクロークを使っているのだろう。

 俺がクロークを使っている相手を見ることが出来るのはレベルに差があるからだ。

 クロークはレベル差600までは効くのだが、それ以上の相手となると効果がない。つまり、格上には丸見えなわけだ。

 ショートボウを構え、引き絞る。が、殺さずの精神で手加減する。

 よくよく狙いを澄まして放つ。

 矢もちょいと細工して、先をゴムに変えておいた。

 上手く顎に当たったのか、脳震盪を起こして倒れた。

 回収はどうしようか。


「うーむ、放置で」


 クロークも切れたし、誰かしら通報してくれるだろう。


「どんどん撃ち抜いて行こう」


 気分はTASさんのボウガントレーニングだ。

 じゃんじゃん撃ち抜いて行き、始まるころには三十人を越えた。

 多すぎぃ!

 王と共に王妃がバルコニーに出てきて、広場は大盛り上がり。

 それと共に各方面から出る殺気。

 まだ居やがるのか。しゃーない。


「”トラッキングレイ”」


 追尾型の光の魔術を使用する。

 この魔術はターゲットした相手を射貫く魔術だ。

 今回は威力抑え目、貫通効果抜きで使用してみた。

 現実となった今ならではの改良型魔術。確かにこれはレグルスの気持ちがよくわかるな。魔術を弄るのは楽しいな。


「よーし! 殺気の発生源は消えたな。・・・ん?」


 消えたのを確認して、広場のほうに目を向けると人々の間を抜けていく影を発見した。

 殺気はないが、その動きから見て暗殺者のジョブなのは間違いない。


「ちっ・・・!」


 窓縁に強化魔術をかけて壊れにくく細工し、足をかけて跳ぶ。

 バカみたいなステータスから発揮される脚力により、ダガーを片手に王妃へ飛び掛かる暗殺者の前へ降りることが出来た。

 そして、目の前に現れた俺に対して驚くが、すぐにターゲットを俺に変えて突貫。


「”アクセル”」


 速度上昇のバフを自分に付与して、暗殺者の真後ろに回り込んで捕まえる。


「がっ!?」


 速度が速度なだけあって、羽交い絞めにしたら暗殺者の肩が外れたが、まあいいだろう。死にやしないし。


「ちぃっ!」

「おっと、自害も禁止だ」

「あがっ!?」


 自害しようと、奥歯に仕込んである毒薬を噛み潰そうとしたみたいなので、口に手を突っ込みそれを阻止する。

 この手袋は捨てよう。よかった、アサシン用装備量産しといて。

 そのまま、奥歯にある毒の丸薬をつぶさないように抜き取り、首を絞めて落とす。


「さて・・・」


 立ち上がると、後ろでざわざわする民衆の声が・・・。

 これはやっちまったなぁ。


「ノア。そいつは・・・」

「ええ、暗殺者ですよ。いくら近衛をつけていても、重鎮が二人同時に現れるんです。あたりまえでしょう」


 王妃の復帰に喜びすぎてその辺抜かったな。とは言えない。この場では。


「すまない。一度ならず二度も助けられるとは・・・」

「報酬は組合の方にお願いしますね。では」


 ちゃんとお小遣いは頂かないとな。

 クロークを発動してその場を去る。さて、二度寝でもしよう。

 因みに報酬は次に日にもらえた。

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