天空ダンジョン
ダンジョン内は窓や隙間から日の光が入ってくるため、そこそこ明るく、石畳である床は苔が生え、隙間からは草が生えている。
「滑らないように気を付けろよー」
「あいさー」
このダンジョンは鳥類の魔物が多く生息しており、レンジャーやスナイパー、魔術師などの遠距離の職業が適正のダンジョンだ。
かといって、近接職が足手まといになることはない。
低空飛行で近付いてきた敵を斬り伏せれば良いのだからな。
「マスター、ワイヤー頂戴」
「ほい」
「・・・うん、まさかと思ったけどフルメタルスパイダーのワイヤーですか」
フルメタルスパイダーとは名前のまんまの蜘蛛型の魔物で、謎金属で覆われた身体が特徴的。
そいつが吐く糸は馬鹿みたいに丈夫であり、シーカーのサブ装備であるワイヤーの中で一番耐久値の高い装備だ。
需要の高い装備ではあるが、フルメタルスパイダーの出現率が低すぎるため、材料が入手困難となり高価格で取引されていて、割りと稀少な装備である。
これはさすがの俺も多くは持っていないが、まぁ使う機会はないと思うのでこのままあげてしまうつもりだ。
「それでいいだろ?」
「十二分過ぎるよ」
やれやれ、と首を振る彼女。
「さて、対飛行型の準備もできたし、行こ!」
「あいよ」
今回のメイン目標である天空ダンジョンの主、オリジンバードのいるのはダンジョン最上層。
一際大きい樹が生えている場所だ。
サブ目標のエンゲルバードは五階層目。オリジンのいる階層の一つ前だ。
「と、そうだ。三階層にも用があったな」
忘れちゃいけない王からの依頼。
「三階層って言うと、スカイフラワー?」
「そうそう。王妃が毒盛られたらしくてな。その治癒のために依頼されたのさ」
「なるほどねー」
スカイフラワーはフルポーションの材料となる花で、高山の頂上付近など、空が近い所にしか咲かない花だ。
天空ダンジョンは確実にこの花が咲いているので、フルポーションのために来るプレイヤーも多かったな。
話ながら歩いていると、もう次の階層への階段についてしまった。
魔物が来ないな。
活性化もしてるはずだし、来てもおかしくないんだが・・・。
チラッとギルを見る。
エンゲルバードが楽しみなのか、うずうずしていた。
うーん、原因は恐らくギルなんだろうなぁ。
人間相手ならともかくも同じ魔物であるギルを警戒して出てこないのかな。
「ギル、気配って消せる?」
『うむ』
頷くギル、特に何かが変わった気はしないが、頷いた後から魔物がわんさかやってきた。
「戻してみて」
『うむ』
次にギルが頷くと、近付いてきた魔物達が一斉に去っていった。
「お前が原因か」
んん?
だが、この前の侵攻の時は逃げ出さなかったぞ?
『何を考えてるかわかった。この前のは魔物は召喚かなんかで操られていたからだろうな』
なるほど、こいつらは野生だものな。
恐怖より命令が勝るのか。
「まあいいや。楽できるし」
「えー! ワイヤーもらった意味ないじゃん!」
「安心しろ。五階層からは高レベル帯だからギルを恐れない奴等ばかりだから」
「ギルちゃんのレベルが8000ちょっとだよね? だとすると五階層からは6000越え?」
「そんくらいかな。覚えてないわ」
効率悪かったし。
因みに魔物同士はレベル差によって敵対するかどう決まる。
検証動画も上がっていて、レベル差が2000以上ある相手には敵対行動を示さないのだ。
かなりレベルの層が厚いが、五階層からはカプリス言うとおりレベル6000を越えてくる。
そして、ダンジョンの主であるオリジンバードはレベル8500。
ギルターより強い。
「とりあえず三階層に行っちまおう」
「うい」
素晴らしい魔物避けがいるので、特に苦労することもなく二階層を突破。
むしろ、戦闘がないのでつまらないな。
「うち、天空ダンジョン来たの今回で二回目だからわからないんだけど、スカイフラワーってどこにあるの?」
「三階層はバルコニーエリアがあってな。そこに生えているんだ」
日当たりもよく、風通しも良い所だったな。
あそこから見る景色も良かったのを覚えている。
スカイフラワーを摘みに行くときにスクショしていこう。
「えーっと、確かこっちだったな」
あんまり行かないところだったから道順をきっちり覚えていないんだよな。
ぼんやりとしか覚えていない経路を進んでいく。
「あ、そうそう。ここがモンスターハウスで籠ったのは覚えてるわ」
「の割りには何もいないけどね」
「ギルターがいるからな」
まさか、オリジンのせいでモンスターハウスまで機能しなくなるとは・・・。
ギルは虫除けスプレー並みだな。
なんも出ないモンスターハウスを抜けて二回ほど角を曲がると、漸くお目当てのバルコニーだ。
「うわぁ!」
バルコニーに出るとカプリスが目をキラキラさせながら感嘆の声をあげる。
広いバルコニーは花畑と化していた。
空色の花が特徴的なスカイフラワーが一面に咲き誇り、爽やかなそよ風に揺れる花達。
ゲームの時はバルコニーの隅っこに生えていた程度なのに、150年でこんなに増えたのか。
「マスター! すっごいねっ!」
いつのまにか花畑の中にいたカプリスは満面の笑みを浮かべ、こちらに手を振っていた。
「お、シャッターチャンス」
花畑の中で手を振る美少女。
とても絵になっていたので迷わずスクショ。
良いのが撮れたな。
スクショしたあと、スカイフラワーを摘み始めたカプリスの所へ向かう。
「これくらいで平気?」
俺が近付いてきたのに気付いたカプリスは、摘み取った花を俺に見せてきた。
その手には二十輪位持っている。
「正直一輪でいいんだが、まぁ多くて損はないからな」
フルポーション一本に付き一輪なので、今回の依頼ならば一輪で充分だ。
まぁ、いつフルポーションが必要になるかわからないし、多くあって損はないのは確かだ。
適当に一輪摘んでアイテムボックスにいれておく。
そして、花畑を横切ってバルコニーの端っこ、手すりの所に行く。
「うむ、記憶の通りだな」
記憶にあったバルコニーからの絶景。
この浮遊島を一望できるこの場所はまさに絶景ポイント。
面白いのが、地上ならば途切れることのない大地が見れるのだが、ここでは途中で途切れた大地が見れる。
浮遊島ならではの光景だ。
スクショスクショ。
「ここからの眺めもすごいね!」
気が付いたら横にいたカプリス。
「よーし、いいもん見れたし次行くぞー」
「おー!」
『エンゲルバードだな!』
お次はお肉だ。




