侵攻②
現在午後16時を少し越えた辺り。
もぐむしゃーっとすいた小腹を癒していると、街の兵士がドタバタと組合へとやって来た。
「魔物の、魔物の大群が押し寄せてきましたッ!!」
その一言で、組合にいた冒険者達は皆武器を手に取り、組合から飛び出していった。
「ふぅ、ごちそうさまでした」
『うむ、腹ごなしに行こうとしよう』
やっと食い終わったか。
「行くぞ」
「はい」
『うむ』
一人と一匹を引き連れて組合をあとにする。
大群が来たという門に近づくにつれて、戦闘音が大きくなっていく。
門から出た先では大規模な戦闘が行われていた。
魔物の数は数えきれないほど、だが、レベル自体はさほど高くないので、ここにいる冒険者達だけでもどうにかできそうだな。
戦場全体を見回していると、勇者ご一行もいることに気がついた。
「なんでここに・・・」
「彼らにはまだ早いでしょうに」
いくらレベルが低い魔物とは言え、さらにレベルの低い彼らにこの戦場はキツすぎるだろう。
上の連中は何を考えているのやら。
「手助け行くか?」
「はい、雷宮司君は別として、あの中には親友もいるので」
「なるほど、なら急いで向かわないとな」
「はいっ!」
俺の言葉に頷くと、倉科さんは戦闘体勢に入り風のような速さで彼らと対峙している魔物たちに近寄り殲滅しはじめた。
勇者ご一行はいきなり現れた彼女に驚き、その強さに呆然としていた。
「ギル。遊んでこい」
『ああ』
一つ遠吠えをしたあと、ギルは少し大きくなり、身体を発光させて敵の中心へと駆けていった。
ギルを見送ったあと、戦闘に参加できずにいる勇者ご一行へと近寄り話しかける。
「なぜこの場にいる。お前らにはまだ早いだろう」
俺が話しかけたことによって、彼らはビクッと身体を強張らせこちらを向いた。
「あ、貴方はこの前の・・・」
最初に口を開いたのはサイドテールの女の子。
「ノアだ。よろしくな」
「えっと、よろしくお願いします」
「それで、君たちは何故ここに、この場にいる?」
「手っ取り早くレベルを上げるためだ」
答えたのはレンくん。
「なるほど。なら帰れ。お前らのレベルじゃ攻撃が通らないぞ」
低レベルの魔物とは言え、最低がレベル150。
レンくん達のレベルはわからないが、この前召喚されたばかりならば、まだ3桁にも達していないだろうな。
「・・・やっぱり、攻撃通ってないのか」
と、呟くのは三人いる男の子のうち、がたいがよく、身長も高い子。ジョブは大盾と剣を持ってることから騎士だろう。
タンクとはいいジョブを選んだな。
「因みにだが、君らのレベルは?」
「60だ」
「59」
「61っす」
「55だよー」
「57です」
ふむ、60前後か。
「ここにいる魔物の最低レベルは150だぞ」
「「「「「150っ!?」」」」」
揃って驚く勇者ご一行。
その声に反応した空の魔物が数匹急降下してきたので、火系統の玉系魔術で撃ち落とす。
「でも、冒険者の皆さんはスパスパと斬り伏せてますけど・・・?」
と、疑問を発したのは、サイドテールの子。
「彼らの中で一番低い人のレベルは190だと聞いている」
「じゃあ、風夏ちゃんはー? ボク達と一緒に召喚されたよねー?」
と、間延びのある喋り方の女の子。
「倉科さんはー・・・。あの子は特別だ。聞きたいなら本人に聞け。俺からは言えないな」
本人も言うかはわからんけど。
「わかったー」
納得はしてくれたのでよかった。
「さて、レベルでわかったと思うが、お前らは足手まといになるだけだ。とっとと街に戻れ」
わかりました。と頷く四人と、舌打ちしてこちらを睨んだあと他四人と共に戻っていくレンくん。
あの子、なんか危ないな。
変にレベルの高いとこ行って、無理矢理レベルを上げようとしそうだ。
ゲームならいざ知らず、ここは現実だ。
そんな無茶なことやったら即死ぬ。
「どうしたもんかね」
「いつまで突っ立ってるんですか。ヘイト稼いでる私のこと考えてくださいよ」
「息一つ切らさないでバッタバッタ切り裂いてる子のことを考えてもなぁ」
「はい、とっとと働きますよ」
「はいはい」
そうだ。リース達も出しておこう。
こんだけいるんだ。一個くらい良いもの取れるだろう。
「頼んだぞ」
「「「「「ピュイー!!」」」」」
俺を中心に滑空し始めるリース達を横目に、俺はアイテムボックスから大盾を取り出して装備する。
なぜ、俺が剣術や魔術、さらにはタンク用の装備である大盾を装備できるのか。疑問に持つ者もいるだろう。
その秘密は俺のジョブが【全能者】とか言う意味のわからないジョブにある。
このジョブは全てのジョブのレベルを最大である999まで上げることで手にはいるジョブだ。
それだけなら誰でも手に入れられるのだが、如何せん、全能者は個人レベル6500位にならないと、その真価を発揮しないと言うクソ仕様。
最初こそ、全てのジョブのスキルや装備を一つのジョブで使えると盛り上がっていたが、結局はレベルアップで手にはいるスキルポイントでスキルを解放していかないことには、多様性が生まれてかない。
しかも、装備の解放やその他諸々も全てスキルポイントで解放していく仕様かつ、全てのジョブの全てのスキルツリーを管理しなきゃいけないめんどくささから一気に熱は冷め、あっという間にクソジョブ認定された。
レベリング厨の俺には楽しいジョブだったけどな。
話がずれたが、今回は大盾を装備してタンクをすることにした。
敵のヘイトを集めて、纏まったところを倉科さんに殲滅してもらう算段だ。
倉科さんも俺が大盾を装備したのを確認したのか、目眩ましをして離脱した。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」
俺は敵の注目を集めるために咆哮スキルで叫び、注目を集めたところで挑発スキルを使い、大盾をバンバン叩く。
これで、俺の周りにいる敵のヘイトは稼げたはずだ。あとは盾で防ぎながらヘイト稼ぎ用の攻撃をするだけだな。
地響きを鳴らしながら俺へと突撃してくる敵を大盾でいなしながら、どんどんヘイトを稼いでいく。ある程度敵が集まったところで倉科さんが颯爽と登場して無双。
「ねぇマスター」
ある程度周りが片付いたところで倉科さんが声をかけてきた。
「どうした?」
「マスターが魔術で一掃してしまえば早いのではないでしょうか?」
まぁそれも考えたが・・・。
「今回は味方が多いし、現実だとフレンドリーファイアが怖いからな」
ゲームの時はPvPモードになってない限り、味方へのダメージは入らなかったが、さすがに現実となった今ではそんなセーフティーがかかってるはずもない。
一人なら躊躇せずにぶちかますんだけどな。
「なるほど、しばらくはこのまま続けましょうか」
「ああ」
その後も俺が溜めては倉科さんが殲滅するを繰り返して約三十分。
漸く終わりが見えてきたところで──
「ヘル種が来たぞおおおおおおおおおっ!!」
そんな声が聞こえてきた。
ヘル種は、レベル3000台の変異種の事で、ヘル種は総じて色が黒く変色しており、獰猛な真っ赤に光る目からヘル種と呼ばれているらしい。
ヘルとは、まんま地獄のことだ。
ヘル種と聞いて、冒険者達は慌てたように街へ引き返す。
そして、俺たちを残して全員が戻ったところで魔術師達が結界を発動させた。
逃げ足の早さに感服だ。
まぁ、じゃなきゃ冒険者業なんて出来ないけどな。
生あっての仕事だ。無理する必要なんてない。
「これは魔術使いたい放題ですね。マスター」
「地形破壊のない魔術を使わないとな」
血で汚れてしまったとは言え、元は美しい草原だ。
穴なんて開けたら絶対後悔する。
「とりあえず死神シリーズ」
最近は出番がなかった死神シリーズにはや着替え。
あ、つか死神シリーズの攻撃範囲拡大で鎌振ればかなり広範囲を殲滅できるじゃん。
そうしよ。
ピコン
caprice:いつ見ても怖いwwwでもカッコいいから許すwwwwww
なんで上から目線なんだ。
「さて、いっちょやるか」
大鎌をくるくると回して構え、襲い来るヘル種の群れに対して思いきり一歩踏み込む。
この際空中浮遊を発動して、スライド移動を可能にしたので、摩擦による減速を無視して高速移動をすることができた。
そのまま先頭の奴等に向けて鎌を横一線。
これが、一方的な戦いの合図となる。
ピコン
caprice:すぃーwwwwww




