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勇者といざこざ

「おいおっさん。風夏に何かしやがったら許さねーからな!」


 と、勇者の一人である金髪の男の子。

 そうか、俺はおっさんなのか。


「あれは?」

雷宮司蓮(らいぐうじれん)君と言いまして、何かと私にちょっかいを出してくる嫌なことです」

「それって倉科さんのことが好きなんじゃ」

「え? そんな小学生じゃあるまいし・・・。そう言った行動で行為を示されてもなぁ。むしろ嫌いになってますよ」


 残念雷宮司君、君の恋は実らない。


「おっさん顔ちけーぞ!」


 コソコソ話に怒る雷宮司君。

 言いにくいな。レン君と呼ぶことにしよう。


「ほら」

「ほら。と言われましても」


 おー、物凄い困った顔しちょる。


「なぁ風夏! そんな得たいの知れないおっさん冒険者より俺達とパーティ組んだ方が安全だって」


 安全云々だったら俺のとこにいたほうが安全だと思ったが、口にするのはよしておこう。


「え? あー、いえ、安全云々だったらマスタ──こほん、このおっさん冒険者さんと一緒の方が安全だと判断してるので・・・」


ピコン

caprice:おっさんwwwおっさん冒険者wwwwww


 うるさいなぁコノヤロー。

 と言うか今どうチャット打ったよ。


「そのおっさんの方が俺より強いってのか?」

「ええ、このおっさん冒険者さんはさいつよです。あなたなんか手も足も出ませんよ」


 おいよせ。俺と戦わせる気か。


「あぁ? なら証明してみせろ! おっさん、俺と戦え!」

「・・・まぁいいか。噂の勇者様の力も見たかったしな」


 これは本当。

 オリジン討伐のために呼ばれたのだから強いに決まってるだろ?

 強い奴と戦いたかった所だ。丁度いい。


ピコン

caprice:さすが戦闘狂いwww楽しそうだwwwwww


noah:強い奴と戦えるんだ 楽しいに決まってるだろう


caprice:ヒェッwww戦闘狂いこわっwwwwww



 なんか草を見ると安心する辺りネット中毒だよな。

 俺はレン君達を引き連れて、訓練場へと移動した。

 相対するような立ち位置で、お互い武器を構える。否、レン君は武器を構えたが、俺は棒立ちのままだ。


「・・・おい、ふざけてるのか!?」

「はっは! 初撃はくれてやる。どこからでも来いッ!」

「ざけやがって!!」


 レン君は無難なロングソードを構え直し、正面から一直線に突っ込んでくる。

 縮地くらい使えないのだろうか?

 疑問に思いながらレン君の攻撃を見る。

 構えとしては剣道だろうか? 上段からの面狙い。と思ったらフェイントで胴狙いらしい。

 中々の早さではあるが、オリジン相手にこの程度じゃ赤子の手を捻るように軽くやられてしまうだろうな。

 まぁ、来たばっかりってのもあるが。

 胴にロングソードが当たった瞬間、パキンと言う砕ける音が聞こえ、折れた刃が宙を舞った。


「・・・は?」

「武器が壊れた程度で動きを止めるな」

「かひゅッ!?」


 動きの止まったレン君の横腹に蹴りをかます。

 数メートル吹き飛んだ彼は、バウンドして転がり落ちた。


「お前が、お前らが呼ばれた理由は?」

「かはっ! けほけほっ・・・」

「咳き込んでねーで答えろ」


ピコン

caprice:無茶言いおるwww


「けほけほっ・・・オリジンを・・・倒すためだ」


 苦しそうに答えるレン君。


「その程度でオリジンを倒すと? はは、笑わすな。断言してやる。お前はこの組合にいるどの冒険者にも勝てない。今のお前は弱すぎる。俺より強い? お前が一番弱いに決まってるだろ。この世界の冒険者達は、お前らみたいな平和な世界でのんびり生きてきた軟弱ものとは違うんだよ。この世界に来て小説みたいに無双出来るとでも思ったか? ハーレムでも作って楽しく生きようってか? 武器が壊れた程度で動きを止めるような愚か者が? 俺の蹴りで吹き飛んで動けなくなる軟弱者が?」


ピコン

caprice:いやぁwwwマスターの蹴り食らったらそりゃ吹き飛んで動けなくなるわwwwwwwwwwうちも吹き飛ぶもんwwwwww


 うるせぇ。


「その程度の力しかないなら、どこか安全な場所に引きこもってろ。それが嫌なら強くなれ。オリジンの強さはさっきの蹴りと比べもんにならないぞ」


 そう言ってレン君に背を向けて訓練場から出ようとする。が、後ろから何かが飛来する音が聞こえ、俺の背に当たった。


「へっ、俺は、魔術も使えるんだぜ・・・」


 当たって焦げた背を見て笑うレン君。


「そうか。奇遇だな」


 俺は振り向きながら、彼と同じ火の魔術を行使する。

 魔術名は"火の玉"。

 全ての魔術の始まりにして基本の玉系魔術の火系統だ。

 基本の魔術でも、俺のステータスから捻り出される威力は馬鹿にならない程エグい。

 素晴らしいことに、この訓練場はゲームの時の設定が生きていて、魔術で地面や壁が壊れることはない。


「俺も魔術が使えるんだ」


 どや顔レン君の数メートル斜め後ろを狙って放つ。

 凄まじい破裂音と共に爆風がこちらまで届く。

 レン君の表情はどや顔から一変、真っ青になり爆発した箇所を見ていた。


「調子に乗るのはよせ。足元を掬われるぞ」


 そう言って今度こそ訓練場から出た。


「さすが最強。言うことが違いますね」


ピコン

caprice:決まったな! ドヤwwwってしてみてwwwwww


 手を後ろに組ながら付いてくる倉科さんがにこにこしながら言う。

 喋りながらどうチャットしてんだこの子。


「お前、裏表が激しいな」

「初めて言われました」


ピコン

caprice:それほどでもあるぞいwwwwww


 こいつうぜぇ!


「まぁ、何はともあれ、これでレン君は死ににくくなっただろうよ」

「ですねー。あのまま外の世界に行ってたら確実に死にますからね」

「調子に乗って高レベル帯に行って即死」

「「あるある」」


 昔を思い出すねー。


「とりあえず、外行くか」

「冒険しにいきましょう!」


ピコン

caprice:ひゃっはーwwwやっとお外だぜーーwwwwww


 チャット機能オフにしようかな。 

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