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勇者と仲間

 遺跡で見つけた本にバカにされてから一週間。

 王都では一つの噂が広がっていた。


「おい、異世界からオリジン討伐のための勇者が召喚されたって聞いたか?」

「聞いた聞いた。まだ十代の子供らしいな」

「ああ、子供なんかが戦力になるのやら」

「上の奴等は何を考えてるのかわからねぇな」

「まったくだ」


 勇者、そう勇者だ。

 オリジンがリポップした事が世界中に広まった今、この国の王は何を思ったのか異世界召喚を行ったらしい。

 レグルスから俺の事が上がってる筈だが、本当に何を考えてるのやら。

 聞くところによると、勇者の人数は6人。

 普通の勇者召喚のようだ。

 何人召喚されようがオリジン相手じゃ赤子同然だろうよ、ら

 そんなことを考えながら組合で飯を食っていると、組合の扉が開かれ、高校生くらいの子達6人が入ってきた。

 引き連れているのは聖騎士装備を身に纏う騎士。

 確か、聖騎士装備は騎士団上位五名に送られる装備だったな。

 となると、あの人は王国では有名人か。

 後で調べよう。


 組合にいた奴等は何事かとその集団に視線を向ける。

 その集団の中に一人だけ周りを見渡し、うんうんと頷いている女の子がいた。

 その子はキョロキョロして、俺と目が合うと目をぱちぱちと瞬き、目を擦ってもう一度俺を見る。

 こちらに来ようとする仕草を見せるが、受付嬢の案内され訓練場の方に向かった。

 あちらには見覚えがあった。と言うことか。となると、彼女はユグドラシルのプレイヤーだったのだろう。

 ちょっぴり気になるので、追加注文して待つことにした。




 30分ほどして、先程の7人組がが戻ってきた。

 どうやらパーティ行動をするようなのだが、さっきの子は他の子達に対して、顔の前で手を合わせて謝っていた。

 どうやらパーティに入らないようで、謝ったあと、俺の方へ真っ直ぐ来た。


「こんにちは」

「おう、こんにちは」


 俺の前まで来た彼女はにこやかに笑みを浮かべて挨拶してきた。

 焦げ茶な髪をポニーテールにしている彼女は元気っ子なイメージを湧かせる、そんな子だった。

 挨拶をされたなら返さないのは失礼なので、出来るだけ親しげな笑顔をつくって返す。


「君は彼らと行動はしないのか?」


 真っ直ぐ来た彼女に聞いてみた。


「はい。貴方とパーティを組もうかと思いまして・・・」


 少し、不安げに言う彼女。

 ふむ。


「理由を聞いても?」

「そうですね。あ、ちょっと待ってください」

「ああ」


 そう言った彼女は、空中を何やら操作するような仕草を見せる。

 その仕草は、俺がUIを弄ってるときと似ているので、もしかしたらUIを操作してるのかもしれない。

 少し待つと、ピコンっと久々に聞くチャットの受信音が頭ん中に響き、俺の前に消していたチャットUIが開かれた。



Caprice:おっすwww私だよマスターwwwww



 そこに表示された草まみれのチャット。

 カプリスと表示されているので、おそらく──いや、間違いなく【白】のギルドメンバーである。

 呼び戻しではなく召喚されてきたか。


「カプリスかよ。よりにもよって一番うるさいのが・・・」

「何か言いました?」

「にっこりやめろ。俺んとこ来ても大丈夫なのか?」

「はい、確認したところ、別に冒険者と組んでも良いと言われましたので。身の安全としては止められましたけど」

「なるほど」


 確かに、若く可愛らしい彼女と組もうとする冒険者は大概下心を持って近寄るだろうな。


「俺なら安心とでも?」

「マスターならまだ顔見知りですし、どんな人かも大体知ってますから」

「まぁ、5年の付き合いではあるが・・・。俺が行くところ全部高レベルの所だぞ? 今のお前で行けるのか?」


 召喚された彼女にゲーム時代のステータスが引き継がれてるかわからないので聞く。


「行けますよ。こっちに来ていきなりステータスの説明されて、見てみろとか言われまして、見てみたらゲーム時代のステータスを全て引き継いでいましたから」


 一応、この世界の住人にもステータスの概念はあるのか。


「因みに私のステータスは二種類あったんですよ」


 二種類?


「どう言うことだ?」

「うーん、何て言うか、こっちの世界での表示方法のステータスと、ゲームのUIで見たステータスの二つが存在してるんですよ」

「・・・それで反映されているのが──」

「UIの方です」

「どう言うこっちゃ」

「みんなは普通の表示方法の方が反映されてるんですよ。謎ですよね」

「・・・もしかしたら、ユグドラシルプレイヤーだった奴は二つのステータスがあるのかもしれないな。カプリスの場合は、カプリスとしてのステータスと・・・」

倉科風夏(くらしなふうか)です」

「倉科さんとしてのステータスが存在してる。ふむ、試しに普通の表示方とやらを教えてくれないか?」


 地球でのステータスってのも見てみたいしな。


「はい。えっと、我が力を示せ"ステータス"で出るはずです」

「え?」

「・・・中々恥ずかしいんですから、その反応はやめてください」


 少し頬を染めながら言う彼女。


「魔術なのか。我が力を示せ"ステータス"」

「そうみたいですね。どうですか?」


 俺の前にはUIのようなウィンドウが出るが、UIの表示の仕方より雑だった。

 名前の欄が石島奏多になっているので、間違いなく地球でのステータスだ。

 レベルも二桁で、ステータス全てが弱すぎる。

 こんなのではこの世界で生きていくのは無理だろうな。

 ノアのステータスでよかったぁー。

 まぁ、見た目がノアなのだからステータスもノアじゃなきゃ意味がないしな。


「やはり、普通の表示方では地球でのステータスが出るみたいだ」

「やっぱりそうなんですね」


 ふむ。


「この世界は元はユグドラシルだから、おそらくアバターを持つ俺達はアバターのステータスが反映されてるのかもしれないな」


 かもと言うか間違いないだろう。

 後でレグルスにも聞いておくとしよう。


「まぁ、そのステータスならいいか」

「やった! ありがとうございます!」


 弾ける笑顔。

 うーん、若いっていいねぇ~。




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