図書館に引きこもる
ギルターをテイムしてから二週間。
王都内の色々な名所や隠れ名所をスクショしまくりながら、次は何処に行こうかと考え始めた所だが、俺は今図書館に引きこもっている。
理由はゲーム時代の事についてと、解放されたあとの事について調べるためだ。
この王都の図書館は、ユグドラシルで最も本の数が多い図書館で、知識集めに来るプレイヤー達が多かった。
なので、負荷がかかり、そこそこのスペックがあるパソコンでないとカクカクどころか落ちる程である。
まぁまず、各国の首都自体プレイヤーが多過ぎて重いけどな。特に倉庫前とか。
話がずれた。
この図書館ならば何か情報があるのでは? と、思いこもっているのだ。
因みにまだ宿には行ってない。
この図書館に仮眠場所が設けられているので、そこを使っている。
盗まれてるのでは? と、思って聞いたら結界魔術で本を持ったまま外には出られないようにしてるらしい。
さすがファンタジー。
と言うか、そんな魔術があるのか。
俺が知らないとなると、解放されてから出来た魔術かもしれない。
「お、【結界魔術について】著者は・・・レグルス・フォン・アーガイル」
あ、察し。
「うーむ・・・」
誰が結界魔術を作ったかわかったところで、目当ての本が見つからず、本棚とにらめっこしながら歩く。
「ん?」
ある程度進んだところで、一冊の本が目に入る。
「【世界の解放】」
これだな。
広辞苑かな? 疑問符が浮かぶくらい分厚いその本を持って読書エリアへと向かった。
適当に空いている席に腰掛け、本を机に置く。
著者名は掠れて読めない。
かなり古い本だが、保存状態が良く、著者名以外はちゃんと読めた。
【この世界の始まりは約200年前だとされている。気がついたら私達はこの世界に存在し、生活していた。記憶にあるのは自由に動く冒険者達に対して、決められた言葉を言って物を売買や、彼らに情報を与えたり、依頼をしたりなど、決まったことしか出来なかった】
このような冒頭から始まり、つらつらとゲーム時代の記憶を記されている。
【──そして、運命の時が来た。一人の冒険者が全てのオリジン種を倒し、この世界を解放してくれたのだ。私達は自由に動くことが、喋ることが出来るようになった。この世界が出来て約50年。長かった。そして、止まっていた時間が動き出したため、私達は歳を取るようになった。今書いている私は89の老いぼれ、もう時間もないため記させてもらった。もし、この本が誰かの手に渡ったのなら、私の代わりに記してほしい。クルセイス・レンジ・レインアース著】
ここから先は書き手が変わっているようだ。
「初代国王が書き始めたものか」
これを見てわかったのは、ゲーム時代が50年も経っていたことだ。
確かに現実の一年がゲーム内では5年だったので間違いはない。
そして、解放と言うのは、やはりゲームからの解放と言うことで合っているようだ。
うーむ、だがオリジンを倒したから解放と言うのはやはり違うと思う。
現に隣にはオリジンの一柱であるギルターが寝ているしな。
「わからんな」
誰が俺達をこの世界に呼び戻したのか。
俺達に何をやらせたいのか。
もし、この世界で俺達プレイヤーが死んだらどうなるのか。
考えれば考えるほど疑問が浮かぶ。
『何やら難しい顔をしているな』
「起きたのか」
『うむ』
横でお座りしながらこちらを見上げるギル。
「俺達がこの世界に呼び戻された理由がわからなくてな」
『ふむ。ならば私達オリジンがいる遺跡を調べると良いかもしれぬ』
「なぜ?」
『あの遺跡は、私達も知らない場所も存在するから、もしかしたらそこに何かヒントがあるかもしれないぞ』
「なるほど、調べてみるか。ありがとうギル」
『気にするな。主人の悩みを解決するのも従魔の務めだ』
いい経験値だったが、いい仲間でもあったか。
「なら、さっそくオリジンの遺跡に行くか」
『思い立ったが吉日だな』
「おう」
俺は本を元の場所に戻したあと、図書館をあとにした。