報告と仮説
冒険者装備に変え、ギルターに乗って王都へと戻った。
さすがに門までギルターで行くのは騒ぎの原因となるので、離れたところで降りておいた。
「ギルター。お前はその辺で遊んでろ」
『いや、私も付いていくぞ』
「デカすぎて目立つだろうが」
『ふむ、こうすれば目立たない』
そう言って縮むギルター。
軽く物理法則を無視するなよ。
『物理法則とか考えるない方がいい。ここは主らの言う所のファンタジーなのだから』
さすがファンタジー。なんでもありなんだな。
普通の狼サイズになったギルターと共に門へと向かった。
「これはノア様。お仕事お疲れさまです。そちらは・・・?」
門番は俺の横にいるギルターを見て眉間にシワを寄せる。
「ちょっとした事情があってな、テイムしてきたのだ」
「なるほど。テイムした魔物の責任は主に来るので気を付けてくださいね」
「ああ。肝に命じておこう」
「では、カードも確認しましたのでどうぞお通りください」
「ありがとう」
礼を言って門を抜けて組合へと向かった。
組合の中へ入ると、こちらに視線が集まるがすぐに散り、それぞれの会話へと戻った。
組合ではテイマーもいるので、魔物を連れて入ってくるのも少なくはないので、その辺りは何も言われない。
受付でカードを見せてレグルスの部屋へと向かった。
「邪魔するぞ」
「ノックぐらいしろ。元社会人だろう」
「俺とお前の仲だ。気にすんなよ」
「・・・はぁ。で? 戻ってきたってことは完了したのだろ? その狼も含めて説明してもらおうか。座れ」
鋭いな。
さすが大手のギルマスは違うな。
「しょっと」
対談用のソファーに腰かけると、ギルターが横に来て丸くなった。
その頭を撫でていると、俺の前のテーブルにティーカップが置かれた。
「すまないな」
「まったくだ。さて、話してもらおうか」
出された紅茶を一口飲み、足を組む。
「まず、今回の活性化についてだ」
「うむ」
「原因としてはオリジンの復活が起因していた」
「・・・やはりか。奴等もまた魔物だからな。リポップしないわけがない。それで、お前のことだ。オリジンは倒したのだろう?」
「答えはノーだ」
「・・・何? では、どうやって活性化を止めた? まさかと思うがそいつは・・・」
うわお、さすがだ。
「ああ、こいつはオリジンウォルフだ。活性化を止める方法でこいつを殺すかテイムするかなのだが、こいつ──ギルターに命乞いされてな。テイムすることになった」
「オリジンが命乞い・・・か。やりすぎたな」
「経験値が良いのが悪い」
「さすがレベリング厨」
「そう、誉めるなって。嬉しいだろうが」
「・・・」
「そこで黙るな」
せっかくのボケをスルーとは酷い奴だ。
ギルメンだったら「褒めてねーよwww皮肉ってんだよwww」とか草生やしながら突っ込んでくるんだがなー。
まぁ、喋れる今はチャットなんて使わずに会話が出来るから、草なんて生やせないんだがな。
「まぁいいか。調査報告の内容としては"活性化の原因はオリジンの復活。冒険者ノアによって原因は排除され、活性化は鎮圧された"と上げておこう」
「おう。報酬をよこせ」
「ああ」
レグルスは頷くと、アイテムボックスからパンパンになった麻袋を取り出してテーブルに置いた。
「約束の3Mだ。受けとれ」
「確かに」
受け取った麻袋のなかを見る。
金貨がいっぱいだぁ。
無限財布を取り出し、そのがま口を開け、そこに麻袋をひっくり返して中身を全部流し込んだ。
「これからどうするのだ?」
いれ終わったタイミングでレグルスが話しかけてきた。
「しばらくは王都を拠点に活動するつもりだ」
「了解した。ならばこれを受けとれ」
そう言って手紙を出すレグルス。
「これは?」
「プレイヤーが経営している宿屋への紹介状だ。正直必要かわからないがな」
「・・・ありがとうよ」
「うむ、何かあったら顔を出すといい。こちらからも呼びつける可能性があるがな」
「・・・宿屋への紹介状とか言って、そこに泊めさせて場所を把握したいだけだろうが」
「さて、なんの事やら」
「まぁいい。今回はアンタの手のひらに乗っていた方が色々と楽だしな」
「そう言ってくれるとありがたい」
「んじゃ、この宿に泊まっててやるから、何かあれば呼べ。頭を使う仕事以外なら手伝おう」
「お前に武力以外の力は求めておらんよ」
「けっ。行くぞギル」
『うむ』
俺が立ち上がるとギルを起き上がり、付いてくる。
扉の前まで来て、一つ思い出したので立ち止まって振り向く。
「それと、他のオリジンも既に復活してるからよろしく」
「なっ!?」
最後の最後で爆弾投下しておいた。
また、オリジン巡りでもするかー。