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左腕に大きめの胸を当てるように、女が腕をからませてくる。
その行動に嫌悪感を覚え腕をはらう。
「もー。つれないなぁ」
なんだかんだ嬉しそうにして再び腕に絡んでくる。
おそらくこの女にとって男を落とすテクだと考えているのだろうか。
もう一度腕をはらいのけようとしたが今度は強く掴まれているためはらいのけることができなかった。
隣ではペチャクチャとまるで、鳥のように喋りかけてくる。
「でねー。
ほんっと大変だったんだよぉ」
「へぇ」
どうした物かと考えていると目の前に同じ講義を入れている友達のナタが虐殺をしていた。
真っ白のはずの体には、大量の血がこびりついていて赤く染まっている。
「おい。ナタ」
「ん?
おーおー、ラディ!
どしたモナ?」
先ほどまでの下品な笑い方から普段の温厚そうな笑顔に戻る。
「いや、何がどうと言うわけでもないがコレと一緒に遊んでてくれ」
ホイッと腕を振るいナタの方に女を投げる。
女は不服そうな顔をしたが、遊べるためかちょっと悩んだあと笑顔になった。
「コレ扱いしないでよー。
ま、今度一緒に遊ぼうね」
女はそう言うと足元でまだ生きているレッサーギコ種を右足で蹴り上げる。
弱っているからか、そいつの口から叫び声が出ることはなく、少量の血が漏れる。
俺は特に何もいうことも無く、その場から離れた。
体に死体の臭いと血の臭いがついてしまった。
残念だが、今日はあそこにいけない。
あいつは鼻がいいから、すぐにばれてしまう。
誰もいない公園の片隅で物音がする。
横目で音の方向を見てみると、ゴミ置き場の隅に細長く薄汚れた青色の尻尾が動いている。
あれで隠れているつもりなのだろうか。
なるべく物音を立てぬように近づいて飛び出ている尻尾を左手で掴む。
「ぴぎゃっ!」
情けない声と同時に何匹かが逃げようとするが、腰が抜けているのか全員動くことが出来ずプルプルと震えている。
「まぁまぁ。
安心しろって、別に俺は遊びにきただけさ。
ほれ」
ポッケに入ったミルクチョコを三つ投げる。
よほどお腹がすいているのか、五匹の中で争いがおきる。
僕が、私が、俺が。
お互いにお互いを殺すつもりで殴り合っている。
生き残ったのは、俺が一番最初に見つけたレッサーギコ種のチビギコと、ちびしぃそして、チビフサ。
三匹がチョコを一心不乱に汚い音を立てて食べ尽くす。
「もっと無いんデチか?」
薄汚れた青色の毛並みをした黒く丸い目が印象的のチビギコがマヌケな顔で尋ねてくる。
チビギコの言葉に伴って他の二人もギャーギャーと騒ぎ始める。
俺はチビフサのフサフサとした暑苦しい茶色毛を掴み引き抜くとブチブチっと心地よい音が響く。
「ひぎゃぁぁぁぁぁぁあぁあっ!!
フサッ!フサタンのおけけがぁぁっ!」
むしられた所を抑えてのたうちまわる。
呆然としているちびしぃを足で踏みつけ、チビフサの耳を握る。
チビギコを捕まえようとしたが、二匹を置いて逃げようと走り出した所だった。
俺は近くにある小さめの石を左手で拾い上げるとチビギコにむかって投げつける。
「はぎゃっ!」
後頭部に綺麗に命中して、頭から血が弾けた。
その場にドサリと倒れこむと、プルプルと震えている。
ショルダーバックからナイフを取り出すと(基本いつでも虐殺が行えるように、誰でも一本は常備している)右手で掴んでいるチビフサの両足の腱を切り離す。
「ぴぎゃっあぁっ!!」
動けなくなった所でチビフサを地面に投げつける。
両足からは、どくどくと血が流れていてもはや歩ける状態ではない。
足元でプルプル震えているちびしぃを見つめる。
俺が見つめただけで、ちびしぃは失禁してしまった。
ぎりぎり足は濡れなかったが。
「くっくっくっ。足が濡れたらどう処理してくれるんだよ」
こみ上げてきた笑いを抑えるようにして足元のちびしぃを拾い上げる。
「は……はにゃ…。
たすけ…」
「どーしよっかな」
俺はそう言うと地面に叩きつけて、足で頭をグリグリと潰す。
地面は砂利のためこすれて痛いのだろう。
「はぎゃっ!
たぶけっ……うぎぃっ!」
地面は、血で赤黒く染まり始めている。
足を外すと、ちびしぃは口の中に入ったであろう砂を出そうとすると同時に顔に出来た傷を手で抑えている。
ピクリとも動かないチビギコに俺は近づく。
「死んだつもりか?」
俺の言葉に少しだけ肩が跳ねる。
図星なのだろう。
「そっかそっか。死んだのか。
ならつまらないな」
チビギコは、安心したように体の力を抜き小さくため息をついた。
本当に騙す気があるのだろうか。
うつ伏せの状態のチビギコを仰向けにさせる。
「ま、死んでそのままにしても金がかかるし」
「っぐぎゃぁぁぁあっぁ!!!!」
チビギコの黒い目を引き出そうと指を入れる。
どのへんを切れば取れるとか、簡単に取るコツぐらいは知っているが、それじゃつまらない。
「おっかしいなぁ。
死んでるはずなのに悲鳴が聞こえるよー。くひゃひゃひゃひゃ!」
「あぎゃっ!ぶぐぎゃぁあっ!」
必死に両手で俺の手を外そうとするが、力の差というものがある。
「ぃゔぎゃぁぁぁぁぁあぁっ!」
「とれたとれた」
わけのわからない悲鳴と共にチビギコの右の目がとれる。
「ほーらほら。
チビタンの可愛いお目目ですよ」
「ヂビッ……チビダンのっ…」
チビギコの口の中に目を入れてから、出されないように口を塞ぐ。
チビギコの顔は血で赤くそまっている。
「ーーーz!?ーーーーzーー!!」
何かわからない事を叫んでいる。
それがまた、俺を楽しくさせている事には気づかないのだろうか。
「まぁまぁ。
それ、食べてくれたら楽にさせてあげるから、ね?」
「ーー……」
悩んだあげく、チビギコは大人しく口を動かす。
グチャリヌチャリと下品な音がする。
自分からその音をあげるのは好きなのだが、人にあげられるのはあまり好かない。
「うぷっ!」
飲み込んだ後、俺は急いで離れるとチビギコの口から吐瀉物が垂れ流された。
「ゲホッ!ゴホッ」
吐瀉物の匂いがキツイが俺は特に気にする事もなく、チビギコに話しかける。
「お疲れ」
「ヂビダン…げほっ…楽になれるっ……ん…でちね」
「あぁ、もちろんさ」
「よかっ…!!」
悲鳴をあげる事なく、チビギコの首がボトリと地面に落ちる。
大量の血しぶきが顔に当たる。
目を開けていたため、少しだけ目に入りそうになった。
後ろを振り向き二匹に目線をやると、チビフサは這いつくばって逃げようとしている。
一方ちびしぃと言えば、気絶しているのか動かない。
ナイフを持って近づくと、チビフサはガタガタと震え出した。
「ご……ごめんデチ!
ちびしぃたんを好きにいじめていいから、フサタンは逃がして欲しいデチ!!
フサタンは、悪いことしてなっあぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁあ!!!」
「知ってるかー?
チビフサの毛皮って高く売れんだぜ?」
フサフサの茶色い毛をナイフで剥がしていく。
魚のウロコを取るように少し強めに。
その度にチビフサの口から断末魔が飛び散る。
「いやー。
ごめんごめん。
クスリを塗ってあげるね」
「はぎゃ……お願い……する…デチ」
バックからチューブのを取り出し大量の練りガラシを敏感な肌の上に乗せ、両手で染み込ませる。
「ひぎゃぁぁぁあぁぁあぁっっ!!
ゲボッゲボっっぎゃあぁぁっ!!いだいっ!いだいデヂぃいぃぃぃぃぃぃ!!」
叫びすぎたのか、血を少しだけ吐き出した。
俺はそれを横目でちらりと見つめるが、すぐに作業に戻る。
そろそろ、カラシを練り込むのにも飽きてきたため、バックを開けて中身を確認する。
しかし、そもそも今日は虐殺なんてする気がさらさらなかったため、対したものが入っていない。
「しょうがねぇな」
「イタイデチ……」
チビフサの目からは涙がボロボロとこぼれてだらしなく、鼻水とヨダレを垂らしていた。
俺はチビフサの汚い背中にナイフを入れる。
「ぐぎゃっ!!」
そのまま勢いよく、下に引く。
切れ間に手を入れて両手で左右に開くと、ミチミチと音を立てながら開いた。
「はぎっ!ぐげっ!!」
「うわっ!」
チビフサが失禁したせいで足にかかるところだった。
こいつらは失禁がすきだな、と内心考えながらチビフサの後ろの首筋にナイフを突き刺した。
ちびしぃに狙いを定めると、気絶から起きたのかこちらをみて腰を抜かせている。
「あぁ、起きたのか」
「はにゃっ!」
ビクリと体を大きく震わせる。
チビフサからナイフを外すとちびしぃに向ける。
「た……すけ…」
俺はナイフをちびしぃの首元に指す。
情けない声をあげて、絶命した。
真っ赤に染まった、ティシャツを見て俺は別の事を考えていた。
「やれやれ」
ビニールを取り出し、死体を中に詰める。
小さい種類で助かった。
気がつくと明るかったはずの空は赤色に染まっていた。