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「相変わらず暇してるんだな。
何か趣味でも探さないと長生きしねぇぞ」
「あら、余計なお世話よ。
私は長生きするつもりもないし、出来ると思ってないもの」
私の言葉に彼は苦笑いを浮かべた。
「その種族だからか?」
図星。
ただ、それを言うのは悔しいし何か負けた気がする。
「残念。
元々、長生きするのはしょうに合わないだけよ」
「そりゃ残念だ」
彼は特にガッカリするようすもなく、いつものように淡々とした口調で言う。
横目で彼を見ようとするけど、黄色い毛並みが少し目に入るだけですぐに目を逸らしてしまう。
「もしも」
言葉を途中で切る。
彼の視線が、横を向いている私の背中にささる。
「もしも、私が明日死んだならどうする?」
こんなことを聞いて何になるのだろう。
……何にもならない。
そんな事はわかっている。
それでも、彼の言葉を…優しい言葉を期待してしまう。
「箱入りが死んだらか?」
「ちょっと、待って箱入りって何よ」
返事を聞くのが怖くなってしまい、どうでもいい事にちゃちゃをいれてしまった。
「お前、いつもその箱に入ってんじゃん」
「あぁ、だから…」
「箱入りが死んでも、俺は来るぞ」
「え?」
思わず彼の顔を見つめる。
しかし、彼の顔からは何か読めるわけでもなく相変わらず、何を考えているかわからない。
「俺はこの場所が好きだからな。
暇つぶしに、花ぐらいは置いてやるよ」
「いらないお世話ね」
「そう思ってくれるなら、大歓迎さ」
彼は種族特有のニヤリとした笑い方をする。
私と同じ種族の子たちならば怖いや、気持ち悪いなど言うのだろうけど、そうは思わない。
むしろ……。
「春でも夕方になると冷え込んでくるな」
「そうね。
でも、この寒さも嫌いじゃないわ」
そこまで言うと、ダンボールの中に何か白いものを彼が投げ込む。
何かと思い、拾い上げるとちょうどよく温まったカイロだった。
「それ、もう春だしいらねぇ」
「私によこされてもねぇ」
彼の言い方は、どうでもいいような感じだったけれど温かいカイロが私の心も温めてくれそうになる。
「ま、それなりに感謝しておくわ」
「お前がそれを言うとかなりの違和感を感じるな」
彼は両手を肩の位置まで持って行き、肩を竦めた。
空はもう暗くなっていき、月が出かけている。