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お相手探し

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教えてくれた方、ありがとうございました(^-^)

タイムリミットはあと一週間。焦りを感じながら身近に居る男性を思い浮かべた。……強面のおじさんしか出てこない。

あぁ!ヤスならどうかしら。

ヤスは私の世話役の1人であり、気心が知れた仲だ。私は親友と思っているがヤスは「そそそそそんな!お嬢と親友なんて恐れ多い!!消される!!!」という。一体誰に消されるのだろうか。とんだ被害妄想だ。親友ですらあんなに躊躇するような奴だ。恋仲になるなんて想像すらできない。

……駄目か……。

ならば職場はどうだろう。私は中学校の養護教諭として働いている。ぞくに言う保健室の先生だ。同僚である男性はほぼ既婚者である。素敵な殿方は幸せを掴む可能性が高い。独身の方々を思い返せば、少し変わっている方が多く、将来を共にすること前提で見てしまうと、とてもではないが無理な気がした。アメーバの細胞分裂を見て性的興奮をするような方々だ。少しどころか、かなり変わっている。

あとは中学校……………………。

いや、それは犯罪であろう。中学生は鑑賞するのに限る。

あぁ、学ラン、セーラー可愛いぃ……!あの子供から大人へと成長していく過程が堪らん。

……それ以前に職場はアウトだった。実家が極道であることがバレてしまう恐れがあるため、職場で面倒なことは起こすわけにはいかない。


身近に相手が居ないことに軽くショックを受けた。


最後の手段といえば、父が毎日持ち帰ってきたお見合い写真である。やむを得ない。私は千枚近くある写真を手にとった。黙々と見てみるが、いまいちピンと来ない。会ったこともない相手だ。写真を見るだけでは決められる筈がない。いつの間にか、写真が乱雑に広がっており、人の顔が浮き出た海のようになっている。どんなホラーだ。気分転換がしたくなり、私は部屋を出た。写真を3枚持って。密閉された部屋に居る事は良くない。開放的なところで見れば少しは変わるのではないのかと思い、縁側に腰をおろした。時間帯は真夜中であるため、少しヒンヤリとしているが長居するつもりはない。すぐ戻れば風邪ひかないだろう。今日は月が出ていて、月明かりのおかげで手元が良く見える。


「うーん…………。」


部屋で見てもら外で見ても心に変化はない。ゴーンゴーンと0時を知らせる音が屋敷に響く。そろそろ部屋に戻ろうとして腰をあげた。


「姉さん。」

「……っ!?」


中腰の私に背後から底冷えするような声が聞こえた。心臓を鷲掴みにされたような気がし、体が強ばった。恐る恐る振り返ればやはりそこには弟が立っていた。月明かりを浴びているハニーブラウン色の髪はキラキラと輝いており、白い肌はくっきりと浮かび上がっている。現在、21歳の弟は高校の時に急に身長が伸び、あっという間に私を追い抜いた。スラリとした手足、締まっている体は完璧すぎて嫉妬する気が起きない。弟は美少女から美青年へと成長した。そんな月明かりを纏った弟はどこか神々しい。しばし見とれてしまった。


「姉さん。こんなところで何をやっているの。」


再び声をかけられてハッとする。見とれている場合ではない。


「ちょっとした気分転換よ。陽は今帰ったの?」

「そうだよ。」


そう、素っ気なく答える。最近弟は帰りが遅い。酷い時には朝帰ってくることもある。一体何をしているのだろうか。


「もっと早く帰って来ないと駄目じゃな。心配するでしょ?」


私の言葉なんてきっと疎ましく思っているのだろう。その証拠に綺麗な顔が歪んだ。


「……気をつける。」


その言葉にホッとした。てっきり、関係ないと言われたり、無視して言ってしまうと思っていたからだ。

あ、今、陽と会話してる……!!!

その事実に嬉しい気持ちになった。


「約束よ?じゃあ、そろそろ部屋に戻るわ。」

「手に持っているのはお見合い写真?」

「え?」


完全に別れると思っていたら、会話が続いた。こんな事、陽が小学生の時以来である。しかしなぜ、弟がお見合い写真を言い当てたのか。驚いたが父から聞いたのだろうと自己解決した。


「えぇ、そうよ。」

「姉さんはここで写真を見てたの?」

「少しの間だけね。」

「そう。」

「……。」


会話が途切れてしまい静寂に包まれる。気まずくなり、ついソワソワしてしまう。


「寒いの?」

「え。」


寒がっていると解釈されたらしい。弟は着ていた上着を私の肩にかけてくれた。弟らしくない行動に戸惑っていると弟は私の顎をつかみ、無理やり視線を合わせた。冷たい目が私を貫く。


「姉さん、会ったこともない相手と結婚したらきっと不幸になるよ。相手は気心が知れた仲じゃないと後悔するから、ね?」


そう言い残し、弟は自室に戻った。弟なりのアドバイスだろうか。体が震えるほど冷たい声で少し怖かった。しかし、掛けてくれた上着は暖かく混乱してしまう。何だ、これは。私も自室に戻り、気持ちを落ち着かせた。そして弟の言葉を思い出す。


『姉さん、会ったこともない相手と結婚したらきっと不幸になるよ。相手は気心が知れた仲じゃないと後悔するから、ね?』


気心……。私の頭には一人の男性が浮かび上がった。


「あの人しかいない……!」


私にはあと一週間、いや六日間しかない。その間に何としても、あの人を説得するのだ。私は決意と共に眠りにつくのであった。




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