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天使が舞い降りたました

強面のおじさん達とやっとの想いで自然に話せるようなってきた10歳の誕生日。その夜私は父に呼ばれた。


「やぁ、ちぃ。10歳の誕生日おめでとう。お父さんの所へ生まれてきてくれて本当に、ありがとう。」


父の部屋に入ると慈愛に満ちた眼差しで私を迎えてくれた。私にも前世では子供がいた。この人の気持ちは良く分かる。何だか目頭が熱くなってしまった。


「ありがとう。父さん。」


ちなみに、この父がいう『ちぃ』という意味は、小さい子というらしい。


「さぁ、そこに座りなさい。今日は大切な話があるんだ。」


父が勧めた座布団の上に正座をする。大切な話し。成程、だから舎弟達がこのあたりに居なかったのか。本来であれば舎弟達も一緒に誕生日を祝ってくれるのだ。おかけで誕生日はいつも賑やかだ。しかし、今日は父と2人っきり。いつもは騒がしい屋敷はシンと静まり返っており、いやに緊張してしまう。私は背筋を伸ばし、口元をひきしめた。


「そう、緊張するな。悪い話じゃない。むしろ良い話だ。」

そういう父は穏やかに微笑んでいる。少し緊張が和らいだ。


「良い話とは…?」

「見せた方が早いだろう。入りなさい。」


見せる?何のことだ。私が考えている中、控えめにふすまが開いた。反射的にふすまの方へ目を向けるとそこには天使が立っていた。


「さぁ、こちらにおいで、陽。」


『ハル』と呼ばれた天使は父の横にちょこんと正座をした。歳は3、4ぐらいだろうか。肌は雪のように白い。目はパッチリと大きく、泣いてしまうのではないかと思うほど潤っていた。髪はハニーブラン色で綿あめのようにフワフワ、体は華奢で小さい。抱き締めたら折れてしまうのではなのか、そんな儚さをもった美少女天使だった。この世にこんな綺麗な子どもが存在していたとは驚きだ。しかし、綺麗過ぎて何だか怖い。巧妙に作られたように完璧すぎるのだ。そして、表情がピクリとも動かない。人形のような子供だった。


「ちぃ、この子は今日からお前の弟になる陽だ。」


弟、つまり男の子。天使は男……………。


「男!?」

「驚くところはそこか。」


父は盛大に笑った。横にいた天使は父の声にビクッとしてしまい、小さい体がさらに小さくなってしまった。


「父さん、その子が怖がってるわ。大声を出すのはやめて。」

「ちぃだって人の事は言えないだろう。」


父の言葉はあえてスルーし、再び視線を天使に向けた。……………どこからどうみても美少女だ。

…服を剥いてみないと分からないわね。


「父さん、一体どういう事なのか説明してくれる?」

「あぁ、陽は昔お世話になった人の息子でな。その人が急に亡くなってしまい身寄りのない陽をウチで引き取ることにしたんだ。」


かなり強引な話ではあるが私は素直に嬉しかった。周りには強面のおじさん達。そんな中舞い降りた天使は私にとって癒しとなるだろう。


「陽くん、初めまして。私は椿。今日で10歳なの。よろしくね?」


天使を刺激しないよう優しく声をかけ、手を差し伸べた。天使は私をじっと見る。こんだけ顔が整っている子に見られると、さすがの精神年齢アラフォーの私でもドキドキしてしまう。


「…僕は陽。5歳。よろしくおねがいします。…姉様。」


姉様、ねぇさま、ネエサマ、NEESAMA…。

天使は声も天使であった。拙い言葉でつないだ言葉は私のハートを鷲掴んだ。

な、撫でまわしたい!!

そんな私の心境を知るはずのない天使は、私の手をおずおずと握った。

何、この、可愛い生き物。

忘れかけていた母性が泉のように湧き出た。


「あぁ!なんて可愛い子なの!?お姉ちゃんが立派に育ててあげるから甘えてね!!」


私は鼻息荒く天使の白くてプニプニしている手を両手で握り返した。そんな天使は、ぼんやりと私を見て見て首を傾げた。多分何を言っているのだろうと思っているのだろう。しかし、その仕草はさらに私を母性心を掻き立てるものであった。父もこの場に居たはずだが、もはや私には見えていない。


これが天使というなの弟との出会いであった。


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