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天使のような悪魔

前回の続きです!

1部訂正しました!

教えてくれた方、ありがとうございました!

柔らかな感触が当たった瞬間、私は身体を硬直させた。


「んぅ……っ!?」


やっと現状に気づいた私は懸命に弟の胸を叩く。だが、彼の腕は強固でまったく離れない。


「姉さん、口、あけて…?」


弟は吐息交じりで私に問いかける。その艶っぽい声は私を更に混乱させた。

今世では初めてであるが、前世では一応経験がある。

だからこそ、ここで口をあけたらどうなるのか、わかってしまうのだ。

吸われ、舐められても、その口を固く閉じる。


「強情。」


弟の手は怪しげに動き出す。その手は肩、背中を撫で、ついに帯へたどり着きグッと力を入れる。

さすがに焦った私は口あけてしまった。

その瞬間、素早く濡れた舌が私の口腔に押し込まれる。その舌は生き物のように動きまわり、口腔を犯し続けた。

抵抗するため手をあげようとするが、その手は弟に捉えられてしまった。私が抵抗する度、弟の手はさらに力を込める。手首が折れてしまうのではないかというほどに、強い力だ。

思う存分私の口腔を貪った弟は最後に触れるだけのキスをした。


「……はぁっ、……はぁっ……。」


腰が抜けそうな激しい口付けだった。前世でもこんなに深い口付けはしたことがない。

私はもはや瀕死状態で、息を整えるのでやっとだ。


「何その顔、可愛い。もう一回キスしよ?」


再び口付けをしようと唇を近づけてくる弟を全力で押し返した。


「ま、待ちなさいっ!姉弟でこんなことおかしいでしょ!?」


私は必死に諭すが、弟は反省するわけでもなくキョトンとしている。


「血は繋がってないよ?」

「そうじゃなくてね。こういうことは好きな者同士することよ?軽い気持ちでする事ではないわ。」


いつもより強く弟を叱る。わかってくれただろうか。

弟の様子を伺えば、苦々しい顔つきになっている。


「……僕は姉さんのこと好きだよ。」

「……はい?」


空耳だろうか。今、とんでもないことが聞こえたような気がした。


「だから良いよね?」


穏やかに微笑む弟は私を再び布団へ沈ませる。そして、なんの躊躇もなく私の上に跨った。


「ははははは陽っ!?何やってるの…!?早く降りなさい…っ!!」


慌てて弟を私の上から降ろそうとするが、弟の身体はびくともしない。

私のことなんてお構いなしの弟はさらに距離を縮める。


「ギャアアア!近いぃぃぃぃ!!」

「うん、近づいているからね。」


爽やかに受け答えする弟。何だ、この余裕は。ってか誰だ、こんなこと教えたやつは。


「あ、毛穴見えそう。」

「見ないでぇぇぇえっ!!」


恥ずかしくて死んでしまいそうだ。むしろ死にたい。

弟の毛穴も見てやろうかと思い、鼻をガン見する。

……毛穴が、無いだと…!?

弟の肌はきめ細かく、毛穴など存在してないようだった。こんな状況でも羨ましく思ってしまう。そしてつい、目線が下に移った。

弟は前かがみなため、着物の中からチラリと無駄のない筋肉が隆起した男らしい身体が見える。

徐々に顔が熱くなるのを感じた。


「いやらしい。」

「…は?」


ボソりと呟く弟。その声はどことなく熱っぽい。


「そんな目で見つめちゃって…。弟の裸、見たい?」

「……っ!?ち、ちが……っ!!」

「少し恥ずかしいけど、姉さんにならいいよ。」


大胆にも弟は襟に手をかけ、今着ている着物を脱ごうとしている。その姿にギョッした。


「わぁぁぁぁぁっ!!脱がなくていい脱がなくていいからっ!!!」

「何慌てているの?よく一緒にお風呂入ったでしょ?」

「いつの話かしら!?」


昔の弟は女の子のように可愛らしかった。しかし、今の身体は昔の面影など欠片もない。

私の説得も虚しく上半身をさらけ出す弟。

目の前にある美しい体に呼吸が止まりそうになる。

しかし、そのシミ一つない真っ白な上肢に赤いものがくっきりと浮かび上がっていた。 胸部の真ん中よりやや左の位置に一輪の赤い花が咲いていた。


「…椿?」


そう、椿の花だ。丁度心臓の位置に椿の花が彫られていたのだ。白い肌によく映えた真っ赤な椿。


「あぁ、これ?綺麗だよね。」

「いつの間にに……。」

「言ったら怒るでしょ?」


一回彫ってしまえば、一生刻まれ続けるのだ。

父にも背中一面に般若が描かれているが、前世が庶民であった私には受け入れられない世界だ。

私は思わず手を伸ばし、弟の頬を叩きつけてしまった。


「当たり前でしょ!?綺麗な身体になんてことを…!」


私が怒りで体を震わせている中、弟は私が叩いてしまった頬を撫で心底嬉しそうに微笑む。


「……何で笑ってるの…?」

「姉さんが初めてつけてくれたものだから。」


その言葉にゾワリと肌が粟立つ。

この男は誰だろうか。


「でも、すぐ消えちゃうよね。だからこそ、消えないよう姉さんの花を彫った。」


慈しむように胸に咲く花を撫でる弟。穏やかな顔なのに、何故かその姿には狂気を感じる。


「ねぇ、姉さん。」


弟の目が私を捉える。

その目は弟の目ではない。捕食者の目だ。


「僕の心臓、貴女に捧げるから、身も心も全部、僕にちょうだい?」


妖艶な笑みを浮かべる弟。

本能が危険だと告げている。しかし、身体が石のように動かないのだ。

狂気的な言葉を並べる弟から逃げなければ、拒まなければと思うのに……。


あぁ、なんでこんなにも嬉しいの……?


私の心は嬉しくてたまらないと歓喜している。

どうやら私はおかしくなったらしい。


「顔が赤い……。可愛い。八島の兄さんの時は全く赤くならなかったのに、脈アリ…かな?」

「み、見てたの……!?」

「あんなところで騒いでたら嫌でも目に入るよ。あぁ、見せつけてたの?」


弟の目は一気に氷点下まで下がる。その冷たい視線が突き刺さり、私の身体は強ばる。


「ち、違うわ!」

「ふぅん。まぁ、八島の兄さんなんてどうでもいいや。」


どうでもいいって……。


「大切なのは今後の僕らについてだもんね。ねぇ、姉さん?」


なんともいえない色気を纏った弟に表情を凍らせた。5歳も下、ましてや精神年齢では何倍も年下の男を怖いと思ってしまったからだ。


「姉さんは僕のこと好き?好きだよね?うん、愛してるよね?」


私の上に跨り笑顔で迫る弟は天使の皮を被った悪魔だ。


「えっとね……、陽。その……ちょと落ち着いて?嫌いではないわよ?」


展開がいきなりすぎて頭がついていけない。


「姉さん!!」


その目は勘違いでなければ歓喜で溢れている。そして、感極まった様子で私を抱きしめる。


「んぐっ……。」


声が出ないほどの強い抱擁だ。身体がメシっと音を立てる。年を考えて欲しい。


「嬉しいっ。姉さんが僕を好きだなんて……!」


好きだとは言っていない。嫌いではないと言っただけだ。

私は離して欲しいという意図を伝えるため強めに弟の背中を叩く。


「あぁ、ごめん。」

「はぁ……っ、はぁ……。」


肺に一気に空気が入る。そして、歳のせいだろうか、なかなか息が整わない。


「嬉しくてつい……。本当にごめんね、大丈夫?」


一応心配してくれる弟の顔は今まで見たこともないぐらいの輝かしい笑みだ。そんな笑みを前にして好きではないなんて言えない。とことん私はこの弟に弱いのだ。


「……大丈夫よ。……ってか陽、私の事嫌いじゃなかったの?」


私は今だに弟の変わりようには驚いている。

そんな私の問いかけにキョトンする弟。

あぁ、可愛い。


「嫌い?僕が姉さんを?ありえないよ。」

「え、だっていつも冷たい目で見てくるし、そっけなかったじゃない。」

「……あぁ。血は繋がってなくても姉さんだし、普通に接してたらきっと姉さんが傷付くと思って。でもね、一応わかり易くアピールはしてたんだよ?」


アピール?そんなものあったのだろうか。いくら思い返しても、素っ気ない弟しか出てこない。


「わからない?まぁ、いいか。今からわかるように好意を示していけばいいんだから。」

「え、ちょ……!?」


あろうことか弟は同じ布団に入ってくる。


「取り敢えず寝ようか。まだ、早朝だし。あ、変な意味じゃないからね?普通に寝るんだよ?」

「そんなこと聞いてないわよ……っ。」


真っ赤になる私を背後から抱きしめクスクス笑う弟。


「ごめんね。可愛い反応してくれるからつい。こんなに可愛いなら早く行動に移せば良かった。」

「何?」

「ふふふ。何でもないよ。続きは起きてからしようね?」


あっという間に背後から寝息が聞こえる。

何という早業だろう。

どうにか弟の腕から逃れようとするが逃げれば逃げるほど腕の力は強くなる。逃げるのは諦めた方がいいらしい。

弟の側からも……………。


その事実に満更でもない私が居ることに気付く。

あぁ、なんてことだろう。

私はこの天使に囚われてしまったようだ。


きっとこれからが大変だ。しかし、今だけは何も考えず、この温もりを感じていたい。


私はそっと目を閉じるのであった。


*****


目をあけたら、婚約、結婚の日取りが決まっていたことはまた、別のお話。





ここまで読んで下さってありがとうございました!

一応、本編は完結ですが、弟視線を書こうと思っています!!


評価、感想、ブックマークありがとうございました!

完結したので感想のほうも返していきたいです(*^^*)

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