二
「疲れたわぁ」
「そうですね〜」
溝端と一緒に職員室に戻ってきた平野は、溝端の大きいため息と同時に発せられたその言葉に、大きく首を縦に振って答えた。
「良いスピーチでしたよ!平野先生」
日田がいつの間にか横に立って笑顔で微笑む。
「いぇそれほどでもぉ」
疲労感がむき出しになった顔で存在していた平野だったが、日田にそう言われ自然と笑顔になった。日田が隣の自分の席に座り、平野の方に端正な顔を向けた。
「さっき言ってた特○ですけど、」
「そうです、そうです!あれなんなんですか?」
平野が真剣な顔になる。
「簡単に説明するとですね、この学校には二つの科がありましてね、さっきあなたが見たのが普通科の総勢300人の生徒達です。で、もう一つ、あそこには居なかったんですけど特A〜Cという三つのクラスがありまして、学力偏差値が異常に高い生徒の中からたった30人の選ばれた生徒が通っている科があるんです。」
日田が一息ついたその瞬間に平野が割り込む。
「待ってください、私そんなところがあるって聞かなかったんですけど…」
「まぁ僕も初めてここに来た時は驚きましたよ。慣れましたけどね」
不安な顔の平野に諭すように言う。
「ていうか何で始業式に来ないんですか?」
平野が問う。
「特別ですからねぇ〜あの科は...」
どこか遠くを見ながら日田が呟く。
「おかしいです!そんなの、生徒に特別扱いなんてないと思います!」
突如平野が熱くなる。
「僕もそう思うんですけどね、まぁ特A〜Cの先生方には言わない方がいいですよ。特に特Cなんてそんなこと言ったらなにされるかわかりませんよ。」
「特C?」
平野が問いただすと日田が顔をしかめて答えた。
「あそこの担任はちょっとおかしいのでね、まぁ確かに特A〜Cがあるからうちの学校が全国トップの学力になるのだけれども。」
「堀花織先生でしたっけ?」
「そうです。」
まぁ気をつけて下さいね、と日田が付け加える。
「どうしてですか?」と平野が続けると、
「今年度は特A〜Cの先生方が何処かのクラスの副担任に来るのよ!」
と横で日田と平野の話を聞いていた溝端が騒ぐ。
うちのクラスだったらどうしようと平野は思ったが、悪いことを考えるのは辞め、そうなんですねぇ、と話を流した。
あの荘厳なチャイムがまた鳴り響く。
「それでは先生方は教室へ行って下さい!」
丹羽が奥から出てきて、声を張り上げた。
さぁ今日から教師生活が始まるぞ、と平野は職員室を出る際、ガッツポーズを右手の拳を握りしめて作り、自身の気合を再び入れ直した。




