第11発明 南の国の竜殺し ミディ&アムレア登場なのじゃ
広場の空気が、張り詰めている。
全員が空を仰いでいた。
カルテが息をのむ。
「……どこ?」
アルが目を細める。
「建物の上だ」
カロが静かに言った。
「二人いる」
屋根の上に、人影が二つあった。
一人は細身。
長い弓を構えている。
フードを深くかぶり、顔が見えない。
もう一人は大柄。
全身を覆う巨大な盾を持っている。
その盾には――竜の紋章が刻まれていた。
観衆がざわつく。
「あの紋章……」
「竜殺しの証じゃないか」
「南の国の……ドラゴンハンターだ」
細身の人影がフードを外した。
若い女のエルフだった。
切れ長の目。 長い耳、腰まで伸びた金色の髪。
「私の名はミディ」
静かだが、よく通る声だった。
「最攻のミディ」
大柄の人影も兜を外した。
がっしりとした顎。
傷だらけの顔。 規格外の大柄なドワーフ。しかし目だけは穏やかだった。
「俺はアムレア」
重く、そして太い声だった。
「最硬のアムレア」
二人が同時に言った。
「「南の国の竜殺し――ドラゴンハンター」」
キセルを吹かしながら老婆がつぶやく。
「ドラゴンハンター……南からわざわざ来たとはね。南の国のドラゴンは特に強い。そいつらを倒してきた歴戦の勇者ってことかい」
ミディが弓に矢をつがえた。
「ハンバーガー派に頼まれた」
「邪魔な研究者を排除しに来た」
カルテが叫ぶ。
「排除って……!」
博士はゆっくりと一歩前に出た。
白衣の袖をまくる。
その時。
ミディの弓が引かれた。
ヒュッ。
また一本、矢が博士の足元に刺さった。
「動くな」
ミディの目が細くなる。
「次は足だ」
アムレアが盾を構えながら屋根を降りてくる。
ずしん、ずしん、と地面が揺れた。
カルテが小声で言う。
「博士……多勢に無勢です」
博士が歯を食いしばる。
その時。
「ここは俺が力を貸すぜ」
アルが一歩前に出た。
腕を組み、ミディを見据える。
「いいえ」
カロも同時に前に出た。
「私の出番よ」
二人が同時に前に出て、ぶつかった。
「おまえは引っ込んでろ」
「あんたこそ」
「弓使いは俺が得意だ」
「魔法の方が相性がいいに決まってるでしょ」
カルテが頭を抱える。
「今そんな場合じゃ……」
博士は二人を見ていた。
しばらく黙って。
そして静かに言った。
「アル」
アルがカロから振り返る。
「なんだ博士、今いいところで――」
「お前に頼む」
アルは一拍置いて、背筋を伸ばした。
「そうこなくっちゃ、大会6連覇の俺に任せとけ」
カロがむっとする。
「ちょっと博士、なんで――」
「相手は鉄壁の盾と長距離の弓の組み合わせじゃ」
博士は静かに続けた。
「アル、お前の力が必要じゃ」
アルはしばらく博士を見つめた。
そして小さくうなずいた。
「……わかった」
カロが腕を組んで黙った。
アルは二人の敵を見渡し、口を開いた。
「作戦はこうだ」
ミディとアムレアを交互に見る。
「弓使いを野放しにしたまま盾使いには近づけない」
「だから俺が弓を引き付ける」
「その間に博士が盾使いを――」
「アル」
博士の声がした。
「なんだ博士、今作戦を――」
「力を抜くなよ、死ぬぞ。」
アルの言葉が止まった。
「………は?」
気づいた時には遅かった。
博士の手が、アルの足首を掴んでいた。
「ちょ――」
ぐいっ。
アルの体が宙に浮いた。
「待て待て待て待て――!!」
博士はゆっくりと腕を振り上げた。
白銀の空に、アル・デンテが掲げられる。
広場が静まり返った。
カルテが額に手を当てた。
カロが目を細めた。
ミディの弓が止まった。
アムレアの盾が止まった。
博士は静かに、しかしはっきりと高らかに言った。
「アルデンテソードじゃーーーー!!!」
アルが叫んだ。
「俺は武器じゃなああああああああいっ!!!!




