第一発明 サクッとしっとり伊沢博士登場なのじゃ
世はまさにグルメ時代。
世界では、二つの派閥が長いあいだ争っていた。
チョコ付きビスケットの
きのこの山
をこよなく愛する「きのこ派」。
そして、クッキー生地にチョコが乗った
たけのこの里
を支持する「たけのこ派」である。
きのこ派は言った。
「サクッとしたビスケットにチョコ!この黄金バランスこそ至高!」
すると、たけのこ派が言い返す。
「いやいや、しっとりクッキーとチョコのハーモニーを知らないとは、人生の半分損している!」
言い争いは、毎日のように続いた。
ある日、ついに広場で事件が起きる。
チョコが投げられ、クッキーが飛び交い、ビスケットが空を舞った。
通りの人々は叫んだ。
「やめろー!」
「食べ物を粗末にするなー!」
しかし、誰も止まらない。
きのこ派は叫ぶ。
「たけのこなど認めない!」
たけのこ派も負けていない。
「きのこ派こそ時代遅れだ!」
お菓子の世界は、甘くない空気に包まれていた。
そんな混乱の中、
一人の男が静かに現れた。
平和を愛する科学者――
伊沢博士である。
ボロボロの白衣に丸メガネ。
爆発したような頭。
手にはメモ帳。
いかにも研究者らしい男だった。
博士は争う人々を見渡し、静かに言った。
「人々が争う姿を、もうこれ以上見たくはないのじゃ。」
そして拳を握る。
「ワシが……この国を平和にしてみせるのじゃ!」
人々は口を止めた。
博士は続ける。
「ならば――両方あればいい。」
国民たちは顔を見合わせた。
「……たしかに。」
こうして博士は研究に研究を重ねた。
ある日、巨大な装置の前に立つと、
博士は大量のきのことたけのこを投入した。
装置は唸りを上げる。
ゴゴゴゴゴ……
そして――
一つのお菓子が誕生した。
その名も、
「たけきのこの国」
きのこの山とたけのこの里、
両方の良さを活かした奇跡のお菓子である。
きのこ派は言った。
「たまには、たけのこも悪くないな。中がしっとりしていて最高だ!」
たけのこ派も言った。
「きのこも案外うまいじゃないか。外がサクッとしていて至高だ!」
国民は笑い合った。
「今日はなんて素晴らしい日だ!」
国王は高らかに宣言した。
「今日からこの国の名は――
たけきのこの国じゃ!」
こうして世界には、
甘い甘い平和が訪れた。
――かに見えた。
その平和を乱す者が現れたのである。
それが――
グミ派だった。
グミ派は胸を張って言った。
「チョコ?クッキー?そんな硬いものは古い!」
「これからの時代はぷにぷにだ!」
「ぷにぷにこそ正義!」
国中にカラフルなグミがばらまかれ、
たけきのこの国は再び大混乱に陥った。
きのこ派が怒る。
「歯ごたえがない!」
たけのこ派も怒る。
「チョコがない!」
博士は深くため息をついた。
「落ち着くんじゃ。争う必要はない。」
博士は静かに言った。
「お菓子はみんな違って、みんな良いのじゃ。」
しかしグミ派は聞く耳を持たない。
「ぷにぷに最強!」
「チョコは時代遅れ!」
広場は騒然となった。
沈黙が流れる。
博士はゆっくり立ち上がった。
そして――
白衣の袖をまくった。
周囲がざわつく。
博士は近くにあったグミを手に取った。
ぐにゃり。
それを――
握りつぶした。
博士は静かに言った。
「仕方がない……平和のためなのじゃ。」
次の瞬間――
博士の拳が炸裂した。
ドゴッ!
バキッ!
ボコッ!
博士はグミ派を容赦なくボコボコにした。
グミのようにぷるぷる震えていたグミ派たちは、悲鳴を上げながら逃げ出した。
「に、逃げろー!!!」
「ぷにぷにじゃ勝てないー!」
こうしてグミ派は撤退し、
たけきのこの国には再び平和が戻った。
戦いのあと。
国民は、あることに気づいた。
博士の腕が――
明らかに太い。
まるで丸太のようだった。
誰かが恐る恐る聞いた。
「博士……その腕は……?」
博士は静かに答えた。
「やはり平和を守るには、筋肉が必要だ。」
そして博士は、レシピを改良した。
それ以来、たけきのこの国のお菓子の生地には
あるものが混ぜられることになった。
それは――
プロテインである。
こうして世界で初めての
「筋肉を育てるお菓子国家」
が誕生したのであった。
めでたしめでたし。
今日も博士は研究室でダンベルを持ちながらつぶやく。
「発明は世界を救う。
だが筋肉は――
もっと手っ取り早く救う。」
ここまで読んでくださってありがとうございます。
生まれて初めてシリーズものを書いてみようと思いました。
できれば、このまま3話目まで読んでいただけるとありがたいです。




