舞踏会・オンライン
こんばんは。
お父さん出番です。
漢字のお題にも踏み込んでしまいました。
第7回「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」大賞への応募作です。
よかったら、ぜひ読んでやってください。
私の名前は神楽坂音哉。
妻と子ども二人の四人家族だ。
妻は有名なピアニストで、結婚当初は周囲を騒がせた。
私も指揮者を夢見ていたが、今はしがないサラリーマンだ。
それでも家族は幸せだし、たまにチェロも弾いている。
「神楽坂くん、これが我が社の新製品だよ!」
取引先の部長が会議室の隅を指さす。
寝台付きの設置型VR機器――息子に買ったVRゴーグルはこれに較べたらオモチャだ……幾らで売る気なんだろう?
「最新の全身没入型だ!さあ試してくれ!」
全身? 試作品? 嫌な予感しかしないが、結局その圧に負けた。
虹色の光の輪を抜けると、洋館の一室だった。かなりの人数が集まっている。
『はーい! ナビAIのピコちゃんでーす!』
ウサ耳の小妖精が現れる。
『今回は亡霊を音で退けて館を脱出するゲームですー』
ホラー音ゲー?
『ヒントは音程ですー。レッツ、プレイ!』
周りを見渡すと、皆それぞれ楽器を持っている。私の腰のポーチには……金属製の三角形。
……音程出せないじゃん!
文句を言いかけたところで、短い棒を渡された。
指揮棒?
「ちょ、これも――」
『では、ゲームスタート!』
あ、今無視された……。
次の部屋は食堂だった。長テーブルと椅子が並び、三人のメイドの亡霊がふわふわと浮かんでいる。赤、緑、水色のメイド服。
金ピカの鎧の男がピ◯ニカを吹くと、一人だけ一瞬消えるが、すぐ戻る。
「ダメじゃねーか……?」
――と、閃く。
「これ和音だ!みんな、ドミソだ!」
明るい音が響き、メイドが一斉に消えて、次の扉が開いた。
短い廊下に三人の執事の亡霊が立ちはだかる。白、黄色、水色のボウタイ。
「これはソシレだ!」
盛り上がってきた。つい指揮棒を握りしめる。
次は舞踏会場だった。
広間で煌びやかな衣装の亡霊が七人、踊っている。
赤が二人、紫も二人、水色が三人。
仲間が何人か襲われ、倒れてしまう。
「おっさん! それ、振ってくれ!」
金ピカの男の声に、周りも一斉にうなずく。
手の中の指揮棒を見る――
ゲームなのに、胸の奥から色々込み上げてきた。
でも、何の曲だ?三音で繰り返し……
――妻と子の姿が浮かぶ。
「ドドソソララソ♪ きらきら星だ!」
みんなに向けて指揮棒を振る。
一斉に音が満ち、色が溢れる。
亡霊たちが消え去り、扉の向こうから光が差し込んできた。
『ゲームクリアですー! グラッチェ!』
光に目を細めながら、私は指揮棒を握りしめた。
少しだけ前に踏み出すのも悪くはない……かな?
(おわり)
最後までお読みいただきありがとうございました!
もし、少しでも気にいってくださったら、ブックマークや★をいただけると嬉しいです。
なんか連作っぽくなってきたので、シリーズのURLも貼っておきますね。
『第7回「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」大賞応募作』
https://ncode.syosetu.com/s8251j/
『オルゴール・オンライン』
『ホットケーキ・オンライン』
『サバイバル・オンライン』
『ギフト・オンライン』
『舞踏会・オンライン』
今回もゆるいVR短編でしたが、
普段はもうちょっと騒がしい長編
『デスゲームに巻き込まれたのでマジチートしてイイですか?』
(マジチー)を連載しています。
バグ技、名古屋弁、ラーメンなど色々入り混じった
にぎやかVR冒険ものです。
よかったらこちらもどうぞ!
マジチー本編:
https://ncode.syosetu.com/n4658kt/




