表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
みこラブ  作者: 九条九重
一章 尊

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/11

宵宮

夕日が差す橙色の道を自転車で行く。

進んでいるうちに周りの家々が少なくなってくる。田舎の端までくると人目を気にせず大きな欠伸をひとつ、そうして深く息を吸うと喉の辺りが少し冷たい。

宵の空に変わっていき心地よい涼しい風を感じられる。

そのうち木陰が見えてきて、木陰に置かれたベンチには人影がある。ミコはそれを見て自転車を道の脇に止めた。


木陰から片手に缶コーヒーを持ったカレンが歩いてくる。暗く見えるのは日が沈みかけているからか、表情は微笑んで見える、カレンからは何とも言えない寒気がした。

「ちょっと疲れてそうやけど大丈夫?」

カレンはミコの目の下にあるクマを見ながら言う。カフェでのバイトの事もあり、カレンには相当疲れていると見えたに違いない。

「カレンこそ」

落ち着いていて沈んだような、ただ曇っている様には感じない。この宵の空に似ている、妙に澄んでいるところも。ミコにはそれがなぜか分からないので屈託していた。

「ウチは大丈夫やよ

 そうやミコも飲む?ウチの余りやけど」

カレンはコーヒーをミコにも勧めてきた。

いつかカフェで働くのならコーヒーは飲めなくては、ミコは何度か試した事がある。だがどうしても飲み切れた試しがない。母は大人になれば飲めると言っていた。それならば、もう飲めて然るべきなのでその理論はおかしいと思う。

そうこう考えているとカレンは、

「飲まんの?」

と言って差し出してくる。

眠気を飛ばすために、そしてカレンにコーヒーが飲めないと知られるのがなんだか恥ずかしく、缶を受け取った。苦いのを感じづらくするため、あまり舌に触れないように一気に飲み干した。

そのミコの顔を見てカレンが微笑んだ。

その顔を見たらコーヒーの味がしなくなった。飲みかけで渡された缶を見る、気づくと顔がだんだん熱くなっていった。


空き缶を自転車の籠に入れ、二人で歩いてある場所に向かう。それは悪霊の棲み処らしき場所。

ミサキの神社より奥に行き、暗い林道を進んで行く、歩いていると立ち入り禁止の柵が前に現れた。

「この先にある崖は自殺の名所なんやで

 ウチもあの場所を探すためにこの辺で、」

カレンはミコの顔を見て話をすぐに切った。その後は柵に沿って海の方へ歩く、それだけ説明して静かな時が流れた。


カレンはふと話し始めた。

「ミコはウチに死んでほしくないようやけど、ウチは死ぬよ。

 今日を死ななかった日は無かった。

 ウチの能力は死を回避する為のもんやない、

 死ぬ前に悔いを残さんようにする為のもんやないかなと思う。

 んやからミコには受け入れて欲しい、

 そしたらウチも運命の死を受け入れられるような気がする。」

カレンはまたも暗い表情で、口元は小さく微笑む。

ミコは何も言えずにいた。確かカレンが死んだというのは九時頃だったか、そろそろ八時になる。

人はいつか死ぬものであり、カレンがそう言っているのだから受け入れなければならない。それが理性なのか言い訳なのかミコには分からない。ただ重く感情に蓋をする。今はとても答えを言える気がしない。

また静かな時が流れた。


暗くなってきたところでカレンは持ってきたライトをつけ、そしてミコに手袋を渡す。

「ここは危ないからこれ使い」

そうして下の海岸を照らした。その海岸は大人二人分もないくらい下にある。

「ここを降りるの?」

「そうやで」

海岸までは崖を降りなくてはいけない。

海岸へ慣れたようにカレンは降りていく。下から照らしミコにアドバイスをした。

「まずはそこに足を置いて…

 次はこっちの出っ張りに…」

カレンの言う通りに少しずつ降りる、不安定な上に暗いとあっては降りられたものではないと思っていたが、意外と難なく降りられたのでカレンには感心した。

「すごいすごい、降りられたやん」

「カレンのおかげだよ」

「んなことない、ミコが運動神経ええだけよ。

 ここの足場、つまずきやすいから気を付けてな。」

カレンの言う通り、ごつごつとした足場をこの暗い中で進むのは気を付けていなければならない。


足は疲れ、足の裏に痛みを感じ始めた頃、カレンはライトを消しその場所を指さした。

自殺の名所と言われる崖の下に洞窟の入り口がある。入り口の高さはミコの背より少し高いくらいか、潮の満ち引きで昼間は洞窟の入り口が半分ほど沈んでいる。暗くなってからでないと入る事は出来ない。

船などあれば違うだろうが、勿論そんなものを持ってくる事なんか二人には不可能。


「あそこを見てみ」

カレンは崖の側面を見るように言ってくる。

そんな場所に何があるのかと見てみると鹿の霊が一頭、崖の側面を歩いている。

「んまアイツが洞窟の門番、アイツのせいで洞窟の中の事はほとんど分からん」

カレンは自分にはどうしようもないという様に言う。

ミコは先に洞窟へ向かう。

「まずアイツを倒せばいいのね」

洞窟に近づくと鹿は崖を駆け降りミコに突進してくる。

クイーンラバー

頭を戦鎚で殴り飛ばした。鹿は崩壊して塵となった。

「ほんまに強いな」

カレンも洞窟の方へ駆け寄る。

「まだだよ」

鹿であった塵が洞窟の中へと吸い込まれるように消えていく、悪霊ならば霧散しているはずだ。あの鹿がコード。戻る先にはおそらく神社で見た鐘の女がいるはず。

二人は一緒に洞窟の中へ入った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ