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みこラブ  作者: 九条九重
一章 尊

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6/11

役目

列車の中で呼れた。

少女の声がなんとなく聞こえている。

「もし、お聞きしたいのですが」

目を開けると悪霊から抜き取った者は少女の姿で、聞きたい事があるようにしている。

目を擦りながらぼんやりと少女の質問を聞いた。

「この列車の行き先は何処なのでしょう」

この列車の行き先なんてミコ自身も定かではない。

「私にも分かりません。」

曇り掛かった表情で答えた、ただ思うところはあったのです。

「そうですか。」

あの悪霊からは想像出来ない物静かな様子の少女だである、年齢は少し上のように感じた。

少女はうじうじと考え事をしている様に見える。

ミコは悪霊になっていたのはあの女の仕業であり、少女に何か悪意がある訳ではないと思もい始めていた。

「降りる事は出来ますよ。」

親切でそう言い扉を開こうとするが、開かない事に気が付いた。

「私も何度か試したのですが開きませんでした。」

ミコが扉を開けないのは帰せる身体がないからだろう。

「何か心残りはありませんか?

 よければ聞かせてください。」

本人が開けられず留まってしまうのは本人の中に理由があるのだろう、ミコは自分の能力をそう解釈していた。

誰しもが死を直前にして話しておけば良かったと思う事はあるだろう、それを果たすことこそミコが意思を繋ぐ者としての本来の役目だと思っている。

「私はミコト、あなたの名前は?」

少女はずっと悩んでいるようだったのでミコはまず名前から聞いた。

ミコの問いに少し間をおいて答えた。

「すみません、私は自分が分かりません、忘れているのだと思います。

 名前はリンと言います、そう呼んでください。」

それを聞いたミコは静かに息をついた、そこには同情があった。

「リンはどこまで覚えてるの?」

まずはそこから知っていく必要があるだろう。

「定かではありません、気付いた時から人形でした。

 それからずっと曖昧で記憶も途切れ途切れで、怒られてばかりだったと思います。

 そんなときミコト様にここへ連れて来られました」

人を人形のようにし道具として扱う、そんな侮辱をミコは自分事のように感じていた。

「ミコト様私はどうしたら良いのでしょう。」

ミコはそんな純粋に聞かれても困るんだがどうにも見捨てようとは思えない。

「リンの人生はリンが決めるんだよ。」

リンの選択の中に留まってしまう原因があればと思いこう言った。

「私は...戻って...今は役目を果たします。」

それならばどうすればいいのか分からないと言って欲しかった、リンが誰かのために身を削ろうとするのを見ると自分まで削られていくように感じる、リンにはそういう思いをしてほしくない。

だがそれを聞いて言う事にした。

「私が扉を開いてあげられないのは帰る身体がないからだよ。

 リンの役目は終わたんだ。」

リンの表情は変わらなかったがその後の間は絶望を物語っていた。


「そうですか」


「ミコト様何故あの方は列車に乗っておられるのしょう」

この列車に乗っているのはあと彼女しかいない。

「あの子はイコマ、コマは私の親友だった」

「だったとは」

「コマはずっと一緒にいて、よく私がこの列車でくだらないこと聞いて励ましたりしてたよ

 私にとってもそれが支えだった」

いい思い出の様にここまでの事を語った、それから目に曇りが見えはじめた。

「中学の頃、クラスが離れてからここに来なくなった。

 理由はなんとなく分かってた、コマは裏でイジメられる様になってた。

 私はコマのことなんにも分かってなかった、このチカラに頼ってばっかで向き合うともしなかったんだ。

 なんとなく分かってた、止めることが出来たかもしれない瞬間だってあったのに、自分からは何も出来なくて、またここに来てくれるんじゃないっかて。

 無駄にどうやって励まそうかとかって、どう受け入れてあげればいいんだろうなんて、バカなことばっか考えてたんだ。


 今でもよく思い出す、大雨の夜だった。

 いつもリビングから聞こえる親の怒鳴りが、雨音で薄れる眠りやすい夜だった。

 ふとこの列車の中で目が覚めた、扉が開いて、コマが入ってきた、でも私の知っているコマじゃないように感じた。

 雨の中を歩いてきたみたいに濡れてた、ただ私の事恨んでんのかなとか考えてたけど何も言わなかった、コマはずっと座ったまま。

 自らこの世を断ったのを知ったのは次の日だった。

 コマはあの時からずっとあそこに座ったまま、なんでなのかは分からないまま、恨んでいるのか、ただ私が死に逝くのを見守っているのか…」

少しのあいだミコの寂莫が場を包み森閑とした。

「私をここへ連れてきたチカラは使われなっかたのですか?」

慎重にリンは聞いてきた、暗に人前で勇気を出さなくても救えたのではないかと。

「あのチカラはコマの事があって、私がただ待ってってもダメなんだってその時になって気付いて、それから使えるようになった。

 でも全然上手くいかなくて、やっぱりね、腰抜けのチカラじゃ何も救えない。

 家族もなんとかしたかったけど、結局全部ダメになっちゃた。

 私はそれでこの町に来たんだ、ただ逃げたんだよ」

懺悔するように言った、実際に心は軽くなってた。

「私はミコト様のこと凄いと思います」


「そんなことないよ」


「ミコト様はもしご友人様が人形でもそうしますか?」


「私ならそんなこと考える人形なんて造らないよ。

 人が好きで奉仕する事が幸せで、勝手に考えて勝手に解決してくれる。

 そんな人形がみんな欲しいんだから」


「そんなの無理ですね」

リンの表情は相変わらずだが悲しいように見え、人間のように感じた。

「うん、そうだね。

 でも私はそうなりたいんだ」

ミコはそんな事を言えば多少なりとも批判されるだろうと思っていた、寧ろそう望んでいたのかもしれない、ただリンの反応は想像と違っていた。

「私はミコト様が幸せになれますように、ここで見守っています」

そのときリンは初めて微笑んで見せた。

ミコは静かにリンに対し懸隔を感じた。

「ミコト様はなんとなく分かってらっしゃるんじゃないですか?この列車が何処に向かっているのか。

 私の役目が終わっているとなればもうこの世に居場所はありません、行く場所は決まっています。

 そこに着くまでミコト様を見守っていますね」

話し始めた頃のリンへの心配は自分へのものになっていた、焦りと劣等感が徐々に沸きつつあるのが分かる、なぜ懺悔などしてしまったのだろうか、そんな考えが頭をよぎった。

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