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みこラブ  作者: 九条九重
一章 尊

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悪霊

霊、それは生きた者の残滓でありそこいらに存在している。だが霊が存在するのは幽世。

何も無いも同然の者達だが、残された意志が強ければ強いほどに幽世から現世に影響を与えるようになる。コードの繋がりもその一種だろう。

常人には現世に影響を与えようとも視認出来ない、それらがどんな意思でも人の害となれば悪霊なのだ。


起きたまま列車へ連れ去られたカレンは列車での記憶を失わず、話はすぐにまとまりミサキの神社へと二人で向かっていた。

「んま戦う悪霊は一見普通の女子大学生みたいやけど、

 動けば趣味の悪い人形みたいや、力も強いから気を付けてるんよ。

 ウチでは幽世への攻撃いうて、蝶を舞わせるしかないからなぁ」

ミコのクイーンラバーなら幽世でも現世でも繋がり、問題なく叩き潰す事ができた。

「カレンは悪霊に何回殺されたの?」

「さぁなんかいやろな、ウチも何回も殺されたしミサキも…」

ミコの目には力が籠る、カレンはその奥にある熱は前からずっとあったもののように感じた。

「あそこにいるヤツ?」

ミサキの神社の境内に若い女の後ろ姿が見える。

いかにも幽霊といった白い装束に短い黒髪、軸のない立ち姿と異様な雰囲気を放つ悪霊、なのに違和感があるのは似つかわしくない清潔感があるからだろう。

ミコの胸が張り詰めていく。

カレンから聞いてはいたがこれほどまでに禍々しく渦巻く悪霊がいるとは想像以上だった。

「そうや、ミコのチカラであの列車に連れ去る事は出来ないん?」

カレンはこの雰囲気に平気な様子で聞いてくる。

「触れられるなら、困っている者や助けを求める残滓は連れていける。

 少し時間がかかると思うけど」

カレンはどれだけの死を繰り返してきたのだろうか?その思いを聞かずにしまいこんで、二人は気づかれないように神社の境内に足を踏み入れる。

「クイーンラバーとの接続範囲は4~5メートル、それ以上では列車に引き込めないよ」

「んならどうせこれ以上行けば気配で気付かれる」

「わかった」

ミコは飛び出し、クイーンラバーは悪霊の腕をしっかりと掴んだ。

「重っ…」

クイーンラバーは数十、いや百を超えるほどの残滓に触れた。

次々と感じるのは絡まり解け混じり合う意思が、渦巻く闇となり残滓を繋ぎ留めている。

ミコはそれを引き込めないと思い、苦い顔でクイーンラバーを戻そうとする、だがそれどころかクイーンラバーのほうが渦巻く残滓に引き込まれ、掴んだ手が沼に沈んでいく様に飲まれる。

悪霊はもうクイーンラバーの喉元に手をかけようと動いていた。

「ミコ大丈夫か」

クイーンラバーのもう片方の手で戦鎚を下す。

悪霊の頭は大きく欠損し綺麗な女子大学生のような顔は崩れ霧散し、それと同時にクイーンラバーを引き抜く。

「アイツはただの悪霊じゃない、残滓の集合体だった。」

「ん...コードか。」

カレンはなんとなくただの悪霊でない事をこれまでの経験で察していた。

だがカレンには今までの経験を遡ってもまだ解決の糸口を見つけようが無かった、戦うミコを見ていると何も出来ない事が悔しく思う、経験から一回目では上手くいかないだろう事を勝手に想像している自分に嫌気がさす、ただ結果がどうであれ最後までしっかりと見届けるしかない。

悪霊は整合性のない動きでクイーンラバーを抑えようとしていた。

掴み掛かってくる両腕。

「本当に趣味の悪い」

クイーンラバーの戦鎚が叩き込まれ崩れ落ちていく。

悪霊は頭を再生させた。

再生した頭はもう短い黒髪の似つかわしくない清潔感があったあの頭ではなく、骨に所々に肉片が付いた全く別の顔であった。

その顔で噛みつこうとし止められる、だがクイーンラバーの足にさっき崩れ落ちた手が掴み掛かっている。

足を掴んだ悪霊を振り払う。

立ち上がる悪霊の両腕は再生していた。

そしてまたも再生部位は別人のものを繋ぎ合わせた様になっている。

「コイツ自分の中の残滓で欠損部位を補填してきているみたい」

「うん、けどまだミコ余裕そうやね。」

「カレンほどじゃないよ。

 まあ強くはないけど消耗戦とはね。」

「時間の問題やな、んま次の為に糸口を見つけられたらいいんやけど...」

クイーンラバーの妙に力の籠った戦鎚が立ち上がった悪霊の両足を一振りで叩き崩す。

「さすがはミコちゃんやな」

「もう一度ヤツに触れる。」

「んなことをしてなんの意味が...」

コードとは魂と繋がる意思。

魂もろとも引き抜かれる事あれば、身体は時期に機能停止となり腐り征くのみ。

「クイーンラバー」

悪霊の両腕も叩き崩し。

「そしてダメ押し」

胴体を砕いた、上半身と下半身に分かれて落ちていく。

ミコは砕かれた上半身に手を置き、渦巻く残滓の中を潜水する。

ミコは混沌とした渦の中心に核なるものを見出していた。

それは細く儚い意志、混じり合い理解に堪えない残滓の中で唯一助けを求めている。

「早く腕を引き抜くんや!」

クイーンラバーは肘以上に沈んでいる。

それでもなお集中し、渦に淀む薄煙の意志を辿り降る、そうして出逢った一人の魂。

「掴んだ…」

「ミコしゃがめ」

悪霊の砕かれた下半身の方は既に足を再生させ蹴ろうとしている。

だが次の瞬間にはクイーンラバーの戦鎚は振り上げられ、向かってきていたはずの足は跳ね飛ばされていた。

肩まで浸かりそうな腕を引き抜き離れた。

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