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みこラブ  作者: 九条九重
一章 尊

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3/11

相棒

ミコは暗いミサキの家路を辿り、ミサキの家のそばで境内を覗く人影らしきものを見つけた。

影の後ろに姿を現したクイーンラバーは戦鎚を振り下ろす、白い綿が散った。

蒸し暑い月夜に虫の声が響いている中に一人の足音が混じる。


曇りがかる目を一度深く閉じ、一息ついて冷静に考えてみる。

自分の運命が誰かに操られている気分がする、間違いなくコードによるものだろう。

揺れるような足音にミコは尋ねた。

「貴方の仕業?」

「んやまさかミコにこんな力があったなんてな、ウチ驚いたよ」

後ろから来る変わった流れの喋りは振り返らずとも予想できる、冷静な表情は崩さぬまま振り返った、曇りはより濃く差していた。

「カレンは知っていたんだね」

カレンは紅い蝶を頭の飾りに、あまり警戒しない様子でいた。

「それミサキの話だよね、逆にどうしてミコがその事を知っとるんや?」

変な余裕を感じた、最初から何か諦めて動いているように見えた。

「…」

「そうやな、最初は一つずつ説明しないとダメよな...えっ?、ヴッッ…」

クイーンラバーはカレンを抱きかかえ連れ去る。



ミコは目を開ける、ここは幽世の夜空を走行する列車のなか、通路に立つカレンと対面した。

「こんなチカラ持ってたんやね。」

カレンはここでも余り動じていないように見える。

「カレンもでしょ。」

カレンの左手に持つ物を見て、語気を強めて言う。

「出してなかったはずやのに、目星いなぁ、

 そうや...ここでは冗談言えんのやね。」

カレンの表情に曇りが見えた。

カレンは蝶が刻まれた銀の懐中時計を持っていた。

「んまええわ、なら全部いうたる、そしたら信じてくれるんやろ?

 この能力は帰蝶、殺されれば時間が巻き戻る。

 巻き戻しは一番長く生きた日から最大3日、けど戻るにはあくまでも殺されなきゃいかん。

 戻る時刻は戻った時から、この紅い蝶が頭から吸っている記憶の中で選べる。

 ウチは明日、ミサキと悪霊に殺された、そしてこの力を自覚出来た。

 それからは色々と試してた、やっとミサキを救えるかもしれんと今は思ってる、

 ミコが協力してくれるなら。」

真剣な眼差しで助けを求めている、ミコにとっては是非もないこと。

「いいよ、」

心配になりそうなくらい早計なようで冷淡な返しだった。

「ほんまか。」

それでもカレンの方は満足気である。

「んじゃあ聞きたいんやけど、ミコはミサキを助けたい気持ちは持っていると思うんやけどさ。」

「もちろん、でもカレンはそのことを全く疑わないね」

ミコは何故カレンがそれを疑わないのか、最初から引っかかるところではある。

「そりゃウチ、ミコに殺されてダミーのぬいぐるみ仕掛けておいたんやもん。

 んまミコの気持ちは伝わったで。」

「ん、私は殺したりしない、病院送りにするだけよ。

 下手に動かなければ。」

カレンは何とも言えない顔をしている。

「殺してもらった方がいいからええんやけどな...

 正直ミコにはそれも頼みたいんや、なんかあったときはウチを殺してほしい、

 今までは悪霊に殺されに行くしかなかったから。」

「わかった、カレンにはさっきも言ったけど協力する。

 その代わり絶対に諦めないでほしい。」

ミコは覚悟をし、最初から何か諦めて動いているようだったのが気に掛かったので、カレンに釘を刺すつもりで言った。

「ええよウチもそのつもりやし、何回でも何百回でも絶対に諦めんよ。」

カレンの言葉に覚悟が込められていると感じた。

「んと脱線したけどこの能力について聞いてええか、ミサキの事もここで聞いたん?」

ミコは能力の事やミサキとの会話を話した。

「すごいなぁミコは」

「そんなことない、カレンと比べれば。」

カレンは明日ミサキと悪霊に殺された時の事をもう少し詳しく話し、それから試した事や調べた事を話した、そのお陰で悪霊の住処らしき場所やミサキの家に現れる時間などが分かった。

悪霊は時間になるとミサキの神社に来て何かを待つようにずっとそこにいる、そして時間が来ると住処に帰って行くらしい。

死んでもなお諦めずに進み続けるカレンにはどのような苦悩があるのか、どんなに考えてもきっと足りないだろう、ミコは自然とカレンを尊敬していた。

ミコはカレンの傍の扉を開いた。

「いいやすごいよ、でも一人で抱えてちゃダメやで、

 なんかあったときはウチに言い、ウチもミコに協力したる。」

カレンはそう言うと、扉から出ようとする。

ミコはその言葉に救われた気がした。

ミコが今までコードを持った人間に会った事は無い、自分の能力を初めて人に話し、共感され心配された。

「私はカレンも助けたい、カレンがもう死ぬなんて考えなくていいように…」

カレンはミコの言葉を最後まで待たずに降りて行った。

カレンに共感し心配をできる人になりたいと思った、その為に尽くそう、その為になら頑張れる。

すぐ尊敬が好意に変わっていくだろう、その最初の温かみをミコは静かに噛み締めた。

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